和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『 逝きし世の面影 』

2023-01-28 | 本棚並べ
平凡社ライブラリーの渡辺京二著「逝きし世の面影」。
その最後の解説を、平川祐弘氏が書いておりました。
はじまりを引用。

「 『逝きし世の面影』という情緒豊かな標題の本書は、
   我が国が西洋化し近代化することによって失った
   明治末年以前の文明の姿を追い求めたものである。

   著者はおびただしい幕末・明治年間の来日外国人の
   記録を博捜・精査することによって、それをこの分厚い一冊にまとめた。

   ・・・著者の、イデオロギーや先入主にとらわれない、率直な反応が、
   美しい日本語に表現されていて、本書を価値あるものとした。

   共感は批評におとらず理解の良き方法であることを本書は実証している。」


はい。これが解説のはじまり、4頁なので私にもすぐ読めます。
うん。ここには、平川解説の最後の3行も引用しておくことに。

「 明治日本の生活様式は多面的である。それでいて
  多くの外国人の目がおのずと集中する点がある。

  そこに旧文明の面影は宿る。その過去は
  私たちの心性の中で死に絶えてはいない。

  かすかに囁き続けるものがあるからこそ、
  逝きし日の面影は懐かしいのである。    」( p591~594 )


ちなみに、葦書房より刊行されたのが1998年。
平凡社ライブラリーで刊行されたのが2005年。
この文庫を、古本で安く手にした版は2010年( 初版第21刷 )。

それはそうと、月刊Hanada2023年3月号に、
三浦小太郎氏の「追悼・渡辺京二」があり題は、
「伝え続けた小さきものの声」( p310~319 )。
こちらも、さらりと引用しておきます。

「昨年12月25日、思想史家渡辺京二が92歳の生涯を終えた。
 私は訃報を知ると、すぐに『小さきものの死』(1975年)を読み返した。」

こうはじまっておりました。私では
手には負えない重要なテーマなので、
最後にここだけ引用しておわります。

「渡辺京二の名が一般的に知られるようになったのは、
 1998年に出版された『逝きし世の面影』(葦書房)であろう。

 幕末・明治初頭の日本を訪れた外国人の記録を通じて、
 江戸時代を近代によって滅ぼされた美しい文明社会と
 して総合的に分析した本作は、現在でも多くの読者を
 引き付けている。
 
 この著名な作品については、私はあえてあまり触れずにおく。
 本書を手に取っていただければ、そこから立ち上ってくる
 前近代の日本の姿に、読者は目を見張る思いがすることだろう。」(p318)


あとは読むだけなんだけれど、
読まずにこうして書いている。
はい。これがふだんの私です。



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6 コメント

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こんにちは。 (和田浦海岸)
2023-01-29 13:49:01
こんにちは。keiさん。
コメントありがとうございます。

ちょうど、ブログ更新したところで、
このコメントを読みました。
再コメントありがとうございます。
返信する
「女子学生、渡辺京二に会いに行く」 (kei)
2023-01-29 12:58:11
こんにちは。

ご紹介くださった「女子学生、渡辺京二に会いに行く」、読んでみます。

「ほかの一日よりも今日の一日は中身が詰まっておったようだな、と感じればそれがいいんです。 
そういう日にちを一日でも増やすといいんです。
大きなことは目指さなくてもいいんです。
小さなことを実現するといいんです。」

テレビでのお話も聞き入るほどに引き付けられるものがありました。
「思想的営みの根本を語る、二人といない師」
親鸞聖人の思想へとも発展する言葉にも関心を持ちました。
渡辺京二さんを知るというところから少しでも近づいてみます。
ありがとうございます。
返信する
tkgmzt2902さんへ。 (和田浦海岸)
2023-01-28 22:55:04
こんばんは、tkgmzt2902さん。
コメントありがとうございます。

何だか、これをきっかけにして、
なにげに『逝きし世の面影』が、
身近に、読めそうな気がします。

はい。コメントのはずみは貴重で、
お互いよい読書になりますように。
コメントありがとうございました。
返信する
こんばんは。Keiさん。 (和田浦海岸)
2023-01-28 22:40:32
こんばんは。Keiさん。
コメントありがとうございます。

肩がこらなくて、楽しめたのは、
文春文庫にはいっている
「女子学生、渡辺京二に会いに行く」。
女学生とのやりとりが楽しい。
ちょっと一箇所引用。

「ちょっと脱線しましたけど、
 こういう今日のような集まりがあって、
 仮にあなたたちが楽しかったなとか、

 渡辺って爺さんの話を聞いたけど、
 まあ、おもしろいところもあったけど、
 なんかわからんところもあったなあ、

 とか、ほかの一日よりも今日の一日は
 中身が詰まっておったようだな、
 と感じればそれがいいんです。

 そういう日にちを一日でも増やすといいんです。
 大きなことは目指さなくてもいいんです。
 小さなことを実現するといいんです。 」(p107)

砂原さんという方が語っております。

「私は国際関係、国際協力のことをやりたいと
 思って津田塾大学に入りました。・・・
 最初にまず現場を知らなきゃいけないと、
 大学二年の終わりに一週間ほどベトナムの
 スタディツアーに参加しました。
 教育支援のスタディツアーで現地の村に
 ホームステイしたり、山岳民族の住んでいる
 村を訪問したりしました。・・・・

 日本に帰ってきて、ベトナムでの体験を
 三砂先生のゼミで発表しました。
 
 そのときに先生に紹介されたのが、
 『逝きし世の面影』と、宮本常一さんの本でした。
 『逝きし世の面影』を読んだときに、
 私がベトナムで見たり感じたりしたことと、
 欧米人が幕末の日本を見て感じたことが
 とても似ていたので、びっくりしました。 」(p165)

はい。作者と読者のチグハグなやりとりも楽しめる。
返信する
Unknown (tkgmzt2902)
2023-01-28 20:50:46
「逝きし世の面影」。読みかけてなかなか進みません。でも諦めたわけではない・・・。痩せ我慢ですが。いつか完了させたいものです。
このブログを拝見して、いい励みになりました。
返信する
美しい文明社会 (kei)
2023-01-28 17:44:01
こんばんは。

石牟礼さんつながりでお名前を知る機会があった渡辺京二さんでしたが、
著書は読んでおらず、『逝きし…』も知るは書名だけ。
それなのに「教えて」とは、何を教えていただこうとしているのかもわからない話でした。
失礼いたしました。

原武史氏の追悼文を読み返し、
松岡正剛さんが書かれていたのを読んでみましたが、
結局未知のお方に触れるには著書を読んでみないとわからないという思いです。

「幕末・明治初頭の日本を訪れた外国人の記録を通じて、江戸時代を近代によって滅ぼされた美しい文明社会として総合的に分析した本作」
「そこから立ち上ってくる…」
こうした感覚も、わかるわからないは別として、読んでみなくては。
それでも、おそらく読まないかなと思ってしまいます。
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