山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

笠富士に昇る細月 長者ヶ岳  平成28年8月31日

2016年09月01日 | 星空
 1ヶ月ほど前からこの日の月を狙っていた。夏場は撮れないだろうと思っていた翌日に新月を迎える月齢28の細月だが、どうやら撮影は可能なようだ。長者ヶ岳からだと日の出の30分前に富士山の山頂少し左側から昇って来るはずだ。地球照になる時間は5分から長くて10分くらいだが、それでも狙うには十分な価値がある。田貫湖の外れのほうからでも撮れるであろうが、月が見えた頃にはもう地球照の月は終わっており、下手をすると月すら撮影は困難かもしれない。だからこの月を撮るには長者ヶ岳山頂まで行くしか無い。

 前日は夕方8時半ごろに田貫湖湖畔に到着した。山頂テント泊を考えていたのだが、テントやらシュラフやら担いで登ると山頂到着までの時間がおそらく3時間を超えてしまい、結局は寝る時間が少なくなってしまう。なのでここは車中泊にして未明1時に起床して山頂を目指すことにした。月が出てくるのは夜明けの4時半ごろだが、出来れば3時半ごろに山頂到着して薄明の空に昇っているオリオン座と冬の大三角形を撮影したい。9時半に就眠、目覚まし時計の音で予定通り1時に起床したがかなり眠い。軽食をとって登り始めたのは1時半近くになってしまった。


    1時間ほど歩いて富士見台のベンチで休憩。オリオン座が昇って来ており、富士山には笠雲がかかっているようだ。

 夜道をひたすら歩いたつもりだが、山頂に到着したのは未明4時、2時間半少々かかったことになるが、このくらいで到着できれば、私の足にしては上出来である。オリオン座と冬の大三角形はだいぶ高く昇って来ている。間もなく薄明が始まり、空が白々とし始め、真っ青に写るようになってきた。そして4時38分、富士山頂にかかる笠雲の左脇に細月が姿を現した。


    山頂に4時到着。オリオン座と冬の大三角形。富士山には笠雲が発生している。


    あっという間に薄明の青い空となり、星の輝きは消えて行く。


    日の出の約30分前。昇ってきました、月齢28の地球照の月。


    200㎜ズームだと富士山だか何だかわからない。

 富士山頂とこの月齢28の地球照の月を撮影するためにCanon200㎜、Borg300㎜の他に広角系レンズ2本の計4本とカメラ2台を持って行ったが、笠雲に山頂が覆われてしまったため残念ながらズームレンズの活躍機会はほとんど無くなってしまった。これもまた仕方なしだが、その代わりに笠富士の上に現われた細月を撮影出来たわけで、これはこれでなかなか見られない風景を目にすることが出来て良かったと思う。


    雲間に輝く月齢28の地球照の月


    200㎜ズーム


    地球照の輝きはあっという間に消えて行く。


    笠富士に昇る細月


    格好良い笠雲になったが、月の明かりは次第に夜明けの明かりに消えて行く。


    もうすぐ消えそうな月の輝き


    日の出の時間を過ぎ、笠雲の下面が赤く染まる。


    朝焼けの笠雲。次第に雲が増えてきた。


    笠富士の後ろ側に何やらドーム型の大きな影のようなものが??    


    正体は影笠富士。中腹に雲がかかってしまったのは残念。


    やがて笠富士の上に朝日が昇る。ダイヤモンド富士からは若干右に日の出の位置がずれている。


    雲が増えて富士山の形はわからなくなってしまった。


    本日はこれまで。撤収して下山。

 翌日が新月か、前日が新月だった細い月を撮影するには、出来るだけ高いところに登って見下ろすような場所でないと地球照の月として捉えるのは難しい。今回は日の出30分前という条件だったが、おそらくこの時間が撮影可能な時間帯の限界なのだと思う。天候になかなか恵まれないこの夏の季節に笠富士の上に昇る細月が撮影できたのはラッキーだったと思う。2月に雨ヶ岳で狙った月が絶好の条件だったにもかかわらず、新調したBorg300㎜レンズをうまく使いこなせず満足な画像が得られなかったことが未だに悔やまれてならないが、今回は300㎜レンズの出番が無かっただけにまだリベンジ出来たとは思っていない。機会があればまたこの細い月を山上から狙ってみたい。
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夏の茅ヶ岳に咲く花たち  平成28年8月28日

2016年09月01日 | 山梨百名山
 平成17年7月に初登頂し、平成19年9月に山頂の山梨百名山標柱を立てて以来、標柱の再建や管理、植物観察、写真撮影など、ほぼ毎年のように訪れているホームグラウンドの茅ヶ岳であるが、今回もまた植物の観察と標柱整備のために訪れてみた。そして今までにこの季節に訪れた時に撮影した写真を見直してみると、ここ10年で起こっている茅ヶ岳の植生の変化が見て取れる。以前の写真と照らし合わせながら、その植生の変化とこれからの茅ヶ岳がどうなって行くかについて考えてみたいと思う。


    平成19年9月に山梨病院の職場のメンバーが中心となって立てられた標柱。その後引き抜かれたり切られたりと災難に遭い、現在の2本の標柱が立つに至っている。


    現在の標柱。横の痛んでいるものは以前に立てて引き抜かれて斜面に捨てられていたものを発見し、並べて立て直したもの。

 いつもながらに大明神林道の中腹の駐車場に車を止めて短絡して登る。今回は女岩側ルートを使って登る。平成17年7月に初めてこの山に来た時は、登山道はなんとなくカブトムシのような昆虫の臭いがしていて、ゼフィルスやアサギマダラやヒョウモンチョウなどたくさんの蝶が飛んでいた記憶があるが、最近はめっきり見かけなくなってしまった。アイノミドリシジミというエメラルド色の羽根の光を放つ美しい蝶を撮影するため、下の草に止まってくれるのをじっと待って撮影した記憶があるが、今では見かけることが無くなってしまった。


    エメラルド色に輝くアイノミドリシジミ。平成17年7月撮影。


    登山道脇にはミズヒキがたくさん咲くが、これは以前から変わらない。


    こちらは年々数を減らしているツリフネソウ。鹿の食害か?それとも登山者が増えたことによる環境の変化か?


    かつてはこんな群落が見られたのだが、この場所は草が刈られて絶えてしまった。平成24年9月撮影。


    女岩を過ぎた尾根に登る斜面に咲いていたレイジンソウ。背景の草地に注目していただきたい。


    平成20年9月に撮影した同じ斜面の草地。サラシナショウマやセキヤノアキチョウジがたくさん咲く草地が広がっていたが現在はほぼ消滅。鹿の食害と思われる。


    平成22年9月に撮影した同じ斜面のレンゲショウマ。もう何年も咲いているところを見ていない。


    消滅したのかと思っていたが葉は残っていた。鹿の食害と斜面の乾燥化で花を咲かせるだけの元気が無いらしい。


    マルバタケブキはちらほらと咲いている程度だが、鹿が食べないのでこれから増えてくることが予想される。


    こちらはかつて登山道脇に咲いていたメタカラコウだが、豪雨で斜面が崩落し消滅してしまった。平成22年8月撮影。

 女岩から尾根に至る斜面は10年前はサラシナショウマやタチフウロ、シモツケソウなどがたくさん咲く草地が広がっていたはずなのだが、年々草地が減少し今ではまばらにフタリシズカやシソ科の植物が生えるやや乾燥した斜面に変わってしまっている。これは鹿の食害によるものと思われ、保護するには保護柵が必要であろうが、絶滅危惧種をはじめとする希少種が咲くわけでは無いのでおそらく行政で保護柵設置に乗り出すことは予算的にも無いであろう。せめて残っているレンゲショウマくらいは咲かせてやりたいものだと思う。

 尾根道から山頂にかけてもかなりの変化が起きている。


    尾根の登山道脇にはママコナが咲いているがかつてはもっとたくさん咲いていた。


    ほぼ同じ場所のママコナ群落。平成19年8月撮影。ママコナはあまり鹿が食べないので、これは登山者の増加による土の圧縮と登山道幅の拡大によるものと思われる。


    山頂付近に咲いていたタチフウロ。これも激減している花のひとつ。


    平成19年8月に撮影した同じ場所のタチフウロ。かつては圧巻の量があった。中に咲いているシュロソウも数を減らしている。


    かつての茅ヶ岳を代表する花と言えばこのシモツケソウとシモツケだったが、いずれも激減。


    女岩上の斜面に普通に咲いていたシモツケソウだが、今ではほとんど見られなくなった。平成22年8月撮影。


    茅ヶ岳山頂の風景。周辺の木が切られて眺望が良くなったのは良いが、乾燥化を招き植物にとってはあまり良い影響を与えていない。


    平成21年7月に撮影された茅ヶ岳山頂。今よりももう少し緑豊かだったように思う。

 午後2時、3時間近くもかかってようやく山頂に到着して昼食となる。混雑を避けて遅めの出発だったので誰もおらず、さっそく恒例の標柱整備を行っていると、かつての職場の同僚が走って山頂に登って来た。深田公園から1時間少々だそうだ。うらやましい。さらにもう一人トレラン姿の若者が登って来て、山頂は3人になった。午後3時、元同僚と分かれて私は金ヶ岳側の植物を見に行った。目的の花は金ヶ岳側に下るとすぐに群生していたのでそこで写真を撮って山頂に戻ったが、その頃にはもう誰もいなかった。


    見たかったのはこの黄色いママコナ、タカネママコナ。


    苞葉(花の付け根あたりから出る葉)の形に興味があったが、苞葉に棘のあるものと無いものの両方があった。これは棘のあるタイプ。


    尾根道を下山の途中で立ち寄る。暑いザレ地から少し日陰に移動していたビランジ。


    良く見れば、毛が生えていないような? オオビランジか??


    乾燥したこのザレ地から少し日陰に移動しているように見えるビランジ。平成25年8月撮影。

 数を減らしているものばかりでは無くて、今年は例年に無くたくさん花を咲かせたものもある。場所が分散しているが、全部で40株近く出会うことが出来た。


    今回は風で首を振りまくるこの花の撮影で多大な時間を費やしてしまった。


    今年は例年に無くたくさん咲いてくれた。


    ロープを挟んで3本+視野の外に2本、さらに奥に1本。


    水の滴る花。


    ミヤマモジズリ。本日一番の大株。

 5時過ぎに尾根道を下山途中で電話が鳴った。出てみると驚きの韮崎警察署からの電話だった。悪事がバレたか?? しかし韮崎警察署管内ではまだ何もしていないはずだが??? 何かと思えば茅ヶ岳の林道沿いに車が止まっていて、山頂で出会った方が私が下山して来ないので遭難したのではないかということで韮崎警察署に電話してくれたらしい。私が中年太りのレベルの低そうなおっさんだったので心配して電話してくれたのだろうが、勝手知ったる茅ヶ岳、登りも下りも昼でも夜でも関係なく歩けるので心配ご無用と警察署員に伝えた。午後6時下山、その後雨が降り出したので、もう少し下山が遅れたら少し厄介だったかも知れない。

 10年間通ってずいぶんと植生が変わってしまっている茅ヶ岳の姿を改めて見直すことが出来た。多くは鹿の食害によるものであるが、登山者の増加や山頂の木を切ったことで起こっている変化もあるようだ。今年は1輪も花を咲かせられなかったオキナグサの場所にも立ち寄って来たが、葉は例年通りに出ていた。来年は早い段階で保護ネットを設置して守ることが必至な状況にあり、次回登る時からはその準備のための荷揚げを始めようと思う。もし余裕があればレンゲショウマの周辺も囲えればと思うのだが、丈夫な保護柵を個人の力で購入して荷揚げ、設置まで行うのは予算的にも体力的にも時間的にも困難である。せいぜいホームセンターで売っているキュウリネットのようなものを設置するくらいしか出来ないであろうが、それでもやらないよりはやったほうが遥かに良いだろう。

 どんどん草地の花が少なくなっている茅ヶ岳だが、10年後の茅ヶ岳の森がフタリシズカとアカソとマルバタケブキばかりがはびこる森にならないように、少しでも手を打って行きたいと思っている。





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