キャビンを持ったクルーザー型のヨットに20年以上乗っていると西欧人の遊びへのこだわりが徹底していることに感動します。とにかく遊びを楽しくするという目的でヨットの構造に工夫に工夫を重ねて作り上げて行くのです。その知恵と努力には感心します。ヨットの多様な面白さを追求して、構造を考えて改良して行きます。
風を受けてセイリングする楽しさ、ジーゼルエンジンで霧の海をゆっくり走る低音のエンジン音の楽しさ、流線形の船体を美しく塗りあげる楽しさ、室内の木製の床や壁にニスを塗る楽しさ、キャビンの中で炊事をしてパーティをする楽しさ、ゆっくり流すように巡航し海鳥や冬鳥を観察する楽しさ。とにかく色々な楽しさがあります。
下の写真はヨットの後から撮った写真です。船尾が低く、湾曲した台になっています。台の上面が水面すれすれに出来ていて、夏に水中へ飛び込んで泳いだ人が水中から船の上に簡単に上がれるような構造になっています。遊びの為の台ですので、プレイ・デッキといいます。冬は泳ぎませんがこのプレイデッキの上に坐して水面を見て楽しみます。水面すれすれで風景を見るとまた別な美しさが楽しめます。
プレイデッキは遊びの為だけでなく、船の有効長さを大にするので縦波に強い性能になります。ヨットの性能向上の目的もあるです。
さて次はヨットのキャビンの中での楽しみ方について説明いたします。ヨットは上の写真に見える船体の中は全て空洞にして3ケ位の部屋にしてあります。前甲板の下は寝室、中心は炊事場と食堂、後甲板の下は細長い2人が寝れるカプセルホテルのような構造になっています。
ヨットの楽しさの一つは、料理を作り、皆揃って食事をすることです。下の2枚の写真にはプロパンコンロ2口(左写真)と、流しと料理台(右写真)を示します。
燃料のプロパンのボンベは舵を取るとき座るベンチの中に収納してあります。
流しの排水は船底に付けてある排水パイプから水中へ排出します。
コンロと流しと料理台さえあればどんな肉料理も魚料理もできます。料理台に面してガラス戸のついた戸棚があり食器が入れてあります。鍋やフライパンは別の戸棚です。包丁や切り板や料理道具、そしてナイフやフォークや箸などはガスコンロの下の引き出しに分類してしまってあります。
パーティなどをするときはビーフシチューやオデンの煮込みを作ります。それにオードブルの盛り合わせをつけて乾杯します。シャンペンがあれば上々です。ですから炊事道具がヨットの中についていると楽しみが倍加します。
キャビンの中での生活を快適にするために欠かせないのが水洗トイレです。左の写真の真ん中に縦に光っているステンレスの棒はマストの下部構造です。その右に見える入口が水洗トイレのある小部屋です。マストの左奥は前甲板の下に広がっている寝室で、大人2人が寝ることが出来ます。右の写真は夜のパーティの様子です。キャビンの中心にテーブルを置き、周りに7人が座れます。
このようにヨットの構造は寝泊まり出来るための最小の設備を完全に揃えています。そして夜のパーティも楽しめるような構造になっています。
時々、漁船とすれ違います。構造を比較すると随分と違います。漁船で重要な場所は操業作業をする甲板です。広くとってあり、網やロープを巻き上げる大きなウインチがデンと据え付けられています。そして取った魚を大量に冷凍貯蔵す船倉が大きく甲板の下についています。寝泊まりする部屋が狭いのも仕方の無い構造です。漁船は仕事をする船。ヨットは遊ぶ船。目的が違えば構造も違います。仕事をしている人と遊んでいる人がすれ違ったら。遊び人が道をあけます。心にゆとりを持って遊ぶとまた一段と楽しくなりませ。自分の遊びを長々しく書き過ぎてしまい申し合わけありませんでした。今日は全国は雪、雨で、東京もみぞれ混じりの雨です。明日は晴れますように。(終り)