(上の絵は「アメリカ独立宣言」の項目のWikipediaの挿絵です)
第二次世界大戦の終わった1945年に私は国民学校の3年生でした。進駐軍の命令であちこちを墨で黒々と消した教科書を使いました。当然、アメリカ合衆国については、全ての人々は皆平等で自由な理想国家と教えられました。中学や高校で習うアメリカの歴史については、1776年の独立宣言以来外国を侵略したことのない国家であると教わりました。植民地も作らない崇高な国家であるとも教わりました。そして第5代大統領のモンローがヨーロッパ大陸の諸国間の醜い戦争へ一切干渉しないという宣言を1823年にしたとも教えれました。
すなわち1776年の独立宣言以来、アメリカは戦争という残虐なことを一切したことが無い。植民地を作り、搾取しなかった。倫理的に崇高な国であった。そのような教育を受けたのです。アメリカの占領時代に、文部省が歴史教育をアメリカが気に入るようにしたのです。19世紀のアメリカの戦争の歴史は省略してしまったのです。大学受験で西洋史を選択すると、ヨーロッパ諸国の歴史を詳しく学習します。しかしアメリカの歴史は実に簡略化されていて大学の入試問題にもあまり出題されなかったのです。
ところが普天間基地問題以来、すこし自分でアメリカの独立戦争から第一次世界大戦の間の歴史を調べて見ました。愚かな私は知らなすぎた事に愕然としました。
1823年のモンロー主義宣言は、「これからアメリカがガタガタ立て続けに戦争をするが南北両アメリカ大陸内に限定するからヨーロッパ諸国は一切干渉しないでくれ!その代りアメリカはヨーロッパ大陸には干渉しない」という意味もあったのです。前半分の解釈は、勿論、私の独断です。しかしその後、アメリカは米英戦争でアメリカとフランスの権益を完全にアメリカの領土から追い払ったのです。1848年の米墨戦争ではカリフォルニア、テキサス、ニューメキシコ、ネバダなどの広大な領地をメキシコから武力によって奪ったのです。更に1898年には米西戦争によってスペインからフィリッピン、グアム諸島、カリブ海のプエリトリコなどを奪取したのです。
その間、アメリカ陸軍の騎兵隊はフランスや英国の一部勢力と手を組んだインディアンも果敢に攻撃して19世紀末にはインディアンの全ての部族の掃討戦争を終わったのです。
戦後教育を受けた私はアメリカこそ豊かで、つねに正義を守る自由な平和国家と信じて来ました。しかしベトナム戦争のころからその理解がいささかぐらついて来たのです。しかしアメリカに留学し、アメリカでいろいろな楽しいことを経験した私にとってアメリカを理想の国と信じたいのです。今回、基地移転問題に端を発して、アメリカの19世紀の歴史を調べてみました。
アメリカが植民地を持たなかったのは産業革命に遅れ、植民地争奪戦にヨーロッパ諸国に遅れを取ったに過ぎなかったのです。
20世紀になり、アメリカが強大で豊かな国になった理由は、気候が赤道直下の南米ほど過酷でなかったという幸運に恵まれていただけです。そして第一次大戦と第二次大戦ではアメリカは想像を絶っするほど大きな漁夫の利を手にしたのです。その事は続編で書きます。兎に角アメリカ合衆国ほど巨大な国家は存在していません。それはローマ帝国やジンギスカン大陸国家に比較してもいろいろな意味で巨大です。ことの善悪は別にして日本の将来を考える場合、アメリカの影響を考慮に入れないとしたら大変な間違いを犯します。その事をもう少し詳しく掘り下げて行きたいとも思っています。皆様からのご意見やコメントを頂ければ嬉しく思います。(続く)