普天間基地移転を受け入れる予定だった名護市の市長選挙があり、基地受け入れ拒絶方針の稲嶺進さんが新しい市長として当選しました。これで普天間基地の移転と返還は暗礁に乗り上げる情勢になったのです。名護市へ移転出来なければ現在普天間基地に居る海兵隊の一部をグアム島米軍基地への移転もとん挫します。
結果的には普天間基地は現状維持で返還されません。米軍は日本全国の基地の移転も返還も出来ないという現実を鮮明に理解せざるを得ないことになります。
日本の役所も政治家も「現状通り」という発想が摩擦を生じないので好きなのです。
何故このような日米間の齟齬が起きたのでしょうか?根本の原因は軍備拡張が世界の平和を保障するというアメリカ側の考えを日本人が理解していなかった事にあります。日本人は軍備を撤廃すれば世界に平和が訪れるという幻想を持っています。家庭の主婦が本気でそのように主張します。それを聞いた子供たちが成長して同じことを叫びます。ごの現象を私は冷笑も軽蔑もしないで穏やかな気持ちで受け入れます。それは日本が平和で幸福な国である証拠です。
ところが一国の進路を決定する総理大臣が同じことをアメリカへ言って、「駐留なき安保体制」を主張するのは大変な誤りです。
冷戦でアメリカがソ連に勝ったから米軍基地は不要になると考えるのは非常に短絡的な間違いと思います。軍備拡大でアメリカが勝ったのですから、アメリカがますます軍備拡大をすれば世界から大きな戦争が無くなります。これが合理的な考え方です。
昨年、アメリカとロシアの間で核弾頭付きのミサイルの保有数を削減する方向で合意に達しました。これは一見軍備縮小に見えるのですが実態は正反対の可能性が大きいのです。分かり易く言えば、数を減らして命中精度を上げれば反対に軍備拡張となります。たとえばロシアが7000発の核弾頭付きのミサイルをアメリカ本土めがけて発射してもその命中精度が悪くて大部分が山林へ着弾したとしたら大きな戦力になりません。これに対抗してアメリカが100発のミサイルをロシアに向けて発射して、ロシアの軍事基地や首都のモスクワを破壊したならアメリカは一気に勝利を得ます。
従ってアメリカは絶えず軍事技術の向上に努力していています。ミサイルの命中精度も画期的に改善出来たので2000発も不要になっただけです。その事実を伏せてロシアと交渉して居るのだろうと想像出来ます。ミサイルの命中精度向上には高度な技術開発が必要です。それを知っているからこそロシアも中国もアメリカへ対して軍事的に対抗出来ないのです。
在日米軍基地の返還を考える場合にはアメリカ側の軍備に対する考え方や世界戦略を充分過ぎるくらいよく理解して、それから交渉に入る必要があります。そうでなければ何も成果を得られず、日米間に悪感情が残るだけです。鳩山総理は軍備と平和維持に関して非現実的な幻想にとらわれていると思います。
皆様のご意見やコメントを頂ければ嬉しく思います。
今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。藤山杜人