ネット社会はバーチャルだから本気になってはいけません。よく聞く言葉です。
しかしネット上だけの付き合いですが、尊敬している友人が又一人去ります。趣味人倶楽部の英香さんです。彼女が趣味人倶楽部を止める決心をしました。ご主人がイギリスの富豪で子育ても英国で済ませた女性です。ロンドンと東京に自宅があり、軽井沢に別荘があります。あまりにも贅を尽くした生活なので一瞬本当かな?と感じたこともありました。しかしその知的な文章を幾つか読むと全て真実であることが分かります。お許しを頂いたので最後のお別れの言葉を以下ご紹介します。そしてその下に「人種差別」に関する文章の一部を転載しました。イギリスに長年住んでいないと絶対に分からないことが書いてあります。私がこのブログで人種差別の問題を何回も書いていた頃に発表された随筆風の彼女の日記です。
聡明で、勇気があり、ネットの上でも誠実に執筆していた英香さんの末永いご健康を祈りつつ、以下に文章をご紹介いたします。
―――英香さんのお別れの言葉―――
軽井沢の夏の季節は思いの外短く、6月も下旬になると夏は駆け足でやって来ますが、8月の中旬を過ぎる頃には、又駆け足で去って行きます。
森に暮らす人々は、そんな夏の季節を惜しむように・・・短い時間の中で、自然や花や森の動物達と戯れ・・・短い時間の中で、森のコンサートを楽しみ・・・短い時間の中で、名店の美食に舌鼓を打ち・・・短い時間の中で、親交を温め合います。
私の軽井沢も、毎年そんな風にして瞬く間に過ぎて行きます。
軽井沢の夏の終わりは、私にとって日本での生活の終わりでもありますが、今年は英国に戻りますと、今秋竣工式を迎える新クィーンエリザベス号による長期航路の船旅に出る事にもなり、これから当分の間、PCを少し離れて現実社会に重点を置いた生活が続く事になりそうです。
趣味人倶楽部に入会して一年半・・・日記を書き始めてまだ半年と、決して長い在籍期間ではありませんでしたが、私にとりまして初めてのネット社会への参加でした。
バーチャルの世界とは言え、ここ趣味人の世界はまさに現実社会の縮図であり、笑いあり、涙あり、真心あり、そして愛憎もありと・・・とても人間味溢れる世界である事を知った事は、目からうろこの体験でした。
自分の日記を公開するという非日常的な行為は、子供の頃学校で作文でも発表した時のような、懐かしい気分を味あわせて頂きましたし、同時に、皆様方の真摯な生き方を拝見する中で、沢山の事を学ばせて頂きました事は、この趣味人に入会致しました何よりの収穫だったと、感謝致しております。
ですが、そろそろこのマイページを閉じさせて頂く時期が来たと感じております。
突然ではございますが、5月15日(土)を持ちまして皆様方とお別れすることになりました事を、ここにご報告させて頂きます。
又、何処かで別な形でお会いする事もあろうかと存じますが・・・その日まで、皆々様の益々のご健闘を心からお祈り致しまして、お別れの言葉と致します。 英香
―――以下は英香さんの英国における人種差別に関する文章の末尾ですーーー
英国での子育ての過程で、子供が学校側から差別を受けた事は全く無かったし、むしろ理数系に強い日本人の子供達は、英語も出来ない内から英雄扱いされ、先生達は人種にかかわらずその子達の能力を更に伸ばす努力を惜しまなかった。
娘が、その時々で最高峰の教育のチャンスを与えられたのも、そんな教師達の並々ならぬ指導のお陰だったと感謝している。
英国は、今では私にとって世界で一番住みやすい国になった。
ただ、一つ付け加えなければならない重要な事は、英国には差別はともかく『区別は』間違いなくある・・・という点である。
住む地域や学校、街中の酒場に至るまで、見えない糸に区切られて、しっかりと区別されている事である。
「階級社会とは互いに無用な摩擦を避ける為の『差別』ではなく『区別』なんだ・・・」と力説していた英国人の友人の言葉が、深い意味を持っているようで、印象に残った。(終り)本年3月11日掲載日記
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今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。藤山杜人