キリスト教を大変大雑把に分けるとカトリックとプロテスタント諸宗派になります。その他にギリシャ正教、ロシア正教、日本正教のような東方キリスト教が大きな勢力です。
カトリックはローマ法王を頂点とする位階制が厳密に出来ていて、世界中のカトリック教会は全てバチカンの傘下になっています。その教義も世界中統一されていて、礼拝の式次第もみな同じです。
その対極にあるのがバプテスト派で、アメリカで一番信者数の多い宗派です。マルチン・ルターの福音主義よりさらに急進的で聖書だけを信仰のよりどころとしています。
牧師も一般信者も身分の差が無く平等な立場で教会運営に当たります。教会名簿には牧師も一般信者の中に混じって記載されています。
信仰告白を行い、全身を水に沈めて洗礼を行います。そして各教会は全て自主独立しているのです。
バプテスト派では17世紀に政教分離の原理をうち建て、宗教の国家権力による干渉を排除しました。と同時に宗派がいかなる政治活動にも参加しないのです。
これらの特徴は、現代の先進国にも受け継がれ、人間の平等、信仰の自由、良心の自由を保証するいろいろな法律が出来上っているのです。
宗教と政治の厳密な分離をするというのも先進国としての必須の条件と考えられています。
したがってアメリカ合衆国の憲法や緒法律はバプテスト派の理念と密接な関係があります。
日本人の我々はアメリカの社会や文化を理解するとき、その背景にはキリスト教のバプテスト派の教義や理念が厳然と存在していることをつい忘れがちです。
バプテスト派の信仰のあり方を知るとアメリカが分かるのです。
カトリックとルター的なプロテスタント諸派が支配的なヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国の大きな相違はこの宗派の違いに起因していると言っても過言ではないと思います。
仏教にも中国や日本に伝わった大乗仏教と東南アジアに伝わった小乗仏教が違うようにキリスト教にも宗派によって大きな違いがあります。
勿論、宗教だけがその国の社会制度や文化を作っているのではありません。しかしその影響を見落とさないと国々の文化の違いが簡単に理解できる場合があるのです。
先日、北杜市の真原の桜並木のそばの陽賜里工房を訪問しました。その時お会いした高齢の女性の方とそのお孫さんがバプテスト派の牧師の奥さんと信者だったので帰宅後いろいろ調べて考えたことを書いてみました。
今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。藤山杜人