福島原子力発電所の半径20km以内は退去、20kmから30kmは自宅待機というのが政府の方針です。放射性物質の現在の放出量なら常識的にこの規制は妥当と思います。
その考え方の基準は福島原発敷地内や20kmや30km離れた場所の放射線の強度の測定値が安全範囲に入っているからです。複数の場所の測定値が何度も発表されていますが、全て1000マイクロ・シーベルト未満です。全然人体には影響がありません。マイクロ・シーベルトの1000倍のミリ・シーベルトの範囲になったら注意すべきと思います。
原発の冷却が継続される限り、周囲の放射線の測定値も次第に低下すると信じています。
放射能の強さは距離の二乗に比例して弱くなります。原発から1kmの距離の放射能が100マイクロ・シーベルトなら10km離れた所ではその100分の一の1マイクロ・シーベルトに下がります。
私は昔、実験物理化学を専門にしていました。高温の個体酸化物中のNaイオンの移動測度を測定するために放射性Na2CO3 を何度も使用した経験があります。
実験着の胸に「フィルム・バッジ」を付けて実験をしていました。「フィルム・バッジ」は被曝量を示してくれます。しかし毎回の実験の後の被曝量は極微量で問題になりませんでした。
しかし本当の危険は鼻から吸い込む酸化ナトリウムの蒸気や粉末なのです。従って実験炉の温度が高い間は、息を止めて実験操作をしたものです。操作が終わったら素早く実験室の外へ逃げるのです。
福島原発の放射能の本当の怖さはそれを鼻から吸い込み、肺に入り、リンパ腺へ移動したり、白血球に異常が出る事です。ですからこそ20kmから30kmの自宅待機では外気を屋内へ取り入れてはいけないのです。洗濯ものを外に干してはいけません。雨に濡れるのもいけません。傘をさしましょう。
しかし、それも被爆総量がマイクロ・シーベルトのレベルなら、吸い込んでも危険ではないなのです。ですから周囲の住民は政府の指示に従って冷静に移動した方が良いのです。総量が200ミリシーベルト以上になるとはじめて人体へ悪い影響が出ると言われています。
と何度申し上げても、より広範囲の人々も逃げたくなるのが人情と思います。特にアメリカを始め諸外国の政府が半径80Km以内には入らないようにと、帰国を薦めています。それは安全度を大きく取って自国民を完璧に守ろうとしているからです。理解できます。
しかし困った事が起きています。福島原発の周囲80km以内には食料や燃料の輸送トラックが怖がって入って行かなくなっているのです。半径50km圏では生活物資が欠乏して、移住しなければ生きて行けないような地域が出来ています。
これは福島原発の2次災害の様なものです。困った現象です。
私は人々が極端に放射能を怖がることを非難出来ません。長崎や広島の原爆の後、いかに多くの人々が長い間、原爆症で苦しんできたかを知って居るからです。
しかし今回の福島原発事故は原子爆弾では無いのです。まき散らされた放射能は非常に弱いのです。もっと、もっと冷静に考えたほうが混乱が少なくて済むと信じています。東京の住民が移住したり、ガソリンや食料を買い占める事は謹んで、少しでも多く被災地へ送るようにすべきでなないでしょうか?
最後に人体の受ける放射能をミリシーベルトの単位で左に示し、右側にどういう意味を持つかを示した一覧表を掲載して置きます。テレビに何度も出ましたのでご覧になった方々も多いと存じます。
7000~10000 |
全身被ばく:100%の人が死亡 |
1000 |
全身被ばく:10%の人が悪心、嘔吐 |
500 |
全身被ばく:末梢血中のリンパ球の減少 |
200 |
全身被ばく:これより低い線量では臨床症状が確認されていない |
10 |
ガラパリ地方(ブラジル)の自然放射線(年間) |
6.9 |
CTスキャン(1回) |
2.4 |
一人当たりの自然放射線の世界平均(年間) |
1 |
一般公衆の線量限度(年間)(医療は除く) |
0.6 |
胃のX線集団検診(1回) |
0.2 |
東京-ニューヨーク航空機旅行による宇宙線の増加(往復) |
0.05 |
胸のX線集団検診(1回) |