後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

福島第一原子力発電所で次々とどんな現象が起きたか?

2011年03月19日 | 日記・エッセイ・コラム

(1)最初の大地震で緊急スクラム装置が正常に作動し原子炉を停止した。

緊急停止の後も多数の制御棒が燃料棒の間に存在し、中性子を遮蔽して、それ以上の核分裂反応を停めています。制御棒そのものは発熱しない上、燃料棒から離れているためにその後も損傷していない様子です。

(2)地震発生後しばらくして襲って来た大津波が冷却系統と緊急発電装置を壊滅した。

女川原発は津波対策を充分にしていたお陰で損害は軽微でした。一方福島原発は津波対策がして居なかったのです。三陸は津波があるが仙台平野以南には津波が無いという常識が支配的だったようです。

(3)冷却系統の壊滅がその後の危機的現象へ繋がるとはすぐには理解されなかった。

核連鎖反応が止まっているので、後は余熱の自然冷却で全ては終わると多くの人々が想像していました。しかし核燃料棒の中の放射性元素の自然崩壊熱が巨大なので、冷却を続けなければ炉心溶融へと進むのです。炉心溶融の前に燃料棒のジルカロイという合金と水蒸気が反応して水素が多量に発生して炉心から漏れ出して来たのです。反応式を書けば誰でも納得します:

2H2O (水蒸気)+Zr (金属ジルコニューム) =  ZrO2(固形酸化物) +2H2(水素ガス)

この化学反応で出来た水素ガスが原子炉の建屋内に充満して何かの原因で引火して大爆発をしたのです。これによって1号炉と3号炉の建屋が無くなってしまいました。

(4)2号炉の原子炉格納容器の底部にあるサプレッションプールの配管部分付近が爆発し小さな割れも生じました。

これは具体的な実例ですが、原子炉格納容器は完璧な気密性があるのでは無く、炉心で出来た水素ガスをその外側の建屋へ放出し続けていたのです。それが原因で水素爆発が続けて起きてしまいました。

(5)水素爆発とともにかなりの放射性物質が空中へ放出されたのです。

爆発は水素ガスによるものですが、その水素ガスは炉心で発生したものです。従ってかなりの量のセイシュームやヨウソなどの放射性物質を随伴していたのです。

ですから炉心を冷却するための方策を模索していました。ところが、違う性質の水素爆発が起きたのです。

(6)4号炉で核燃料プールに沈めていた核燃料棒が原因でいきなり水素爆発をしたのです。

これには原子炉の専門家以外の人は吃驚してしまいました。

その結果、停止中の4号炉、5号炉、6号炉の貯蔵プールの冷却も真剣に考えられるようになりました。

(7)稼働中だった3号炉の貯蔵プールからも水蒸気の白煙があがります

この現象で原発工場の全ての貯蔵プールの水温の上昇へ注意が向けられるようになりました。

現在、自衛隊と消防庁の特殊放水車が注水に成功しているので福島原発の冷却は成功すると信じています。その上、送電線の復旧も進んでいるので冷却系統の復旧も数日中には成功しすると思います。

そうすれな福島原発の危機もやがては収束すると思います。昨日、今日の特殊消防車の活躍が明るい見通しを示してくれたので、以上のような整理をして見ました。間違いをご指摘下さいますれば感謝申し上げます。(終り)


福島第一原子力発電所は最悪の危機を回避したと信じています

2011年03月19日 | 日記・エッセイ・コラム

私は一介の老人で、事故現場も見ていない素人です。しかし昔の職業は化学の一分野の「実験物理化学」でした。科学者として当然今回の事故の原因と今後数カ月にわたって起きる現象を毎日、毎日考えて続けています。新聞やテレビの断片的な技術的情報を繋ぎ合わせて科学的に考えています。

今日の読売新聞の32ページ目に事故発生以来初めて制御棒の図面が出てきました。このGE社設計の原発は制御棒を水圧で下から燃料棒の間に差し込む方式のようです。緊急スクラムが正常に作動し、制御棒は現在燃料棒の間にとどまり、中性子を遮断し、これ以上の核連鎖反応を止めているようです。私の知っていた制御棒は黒鉛の丸い棒で、特殊金属の保護管に入っていました。

緊急停止後、7日経ちましたが、その間、重大な損傷を受けていないようです。理由は2つあります。制御棒そのものは発熱しません。そして制御棒は核燃料棒と離れている上、黒鉛の揮発温度はウラン酸化物の融点より格段に高いのです。さらに水が少し残っているのです。

炉心高圧容器の融解と爆発は起きないと信じられるようになりました。

その上、昨日と昨夜、自衛隊の特殊消防車と消防庁の特殊消防車が建屋の中へ放水出来たのです。 特に消防庁の特殊消防消防車は高いハシゴのてっぺんから強力な放水が出来ます。「屈折放水搭車」という名前です。これで建屋の爆発で開いた穴から、水を屋内へ直接放水出来たのです。これで今回の事故の第二の危機を回避する道が開けたのです。

第一の危機は炉心容器の熔解・爆発でしたが、第二の危機は貯蔵プール内の核燃料が水素爆発で空中に飛散することです。すでに4号炉でその現象が起きたと考えられています。これが数ケ月に渡って毎日のように断続的に起きる可能性があったのです。

それが自衛隊と消防庁の特殊消防車で防げるようになりました。昨日以来、100トン以上も注水出来たのです。たとえその10%以下の少量の水が貯蔵プールに到達したとしてもその効果は絶大なものと想像できます。今後も継続して注水すれば貯蔵プールからの放射能の飛散は防止出来ます。

必死の事故回復活動の結果、2つの安心材料が上に書いたように見えてきました。それ故に私は最悪の危機は脱しつつあると信じています。信じられるような情報が出てきたのです。

尚、送電線の復旧も並行して進んでいます。しかし電気がつながったからとて急に給水ポンプが動くとはかぎりません。この際は特殊消防車の活躍に期待しています。

今日は放射能の危険もかえりみず特殊消防車で働いている人、そして送電回復の作業をしている全ての人々に放射線被害が起きないように、心からお祈り申しあげます。藤山杜人

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