高野山で修業をし、お寺に属さないで托鉢しながら被災地を支援している修業僧がいます。高野山真言宗僧侶の望月崇英さんです。
4月上旬にはじめて行った被災地の東松島市での事です。身元不明の遺体を30体土葬にする場面に申して出て、読経をしたのです。そして一人一人を埋葬するとき丁寧にお経を唱え、引導を渡したそうです。もちろん身元不明ですから誰もお布施を出しません。
土葬には東松島市の環境課の相沢俊明さんが立ちあいました。相沢さんが言っています。「あの混乱の中でお一人ずつ丁寧に見送っていただき、ありがたかった。私たちも救われる気がしました」と。
修業僧の望月崇英さんは銀座で托鉢しながら、アルバイトをして、週末には被災地へ行くのです。
被災地へ行くと、瓦礫で埋もれた民家の前や海岸に独り立って、お経を唱えます。心を込めて犠牲者の冥福を祈ります。誰も近づきません。遠くから家族を失った人々がソッと一緒に手を合わすだけです。
いろいろな支援の仕方があるという話です。それだけの話です。昨日の読売新聞35ページに載っていた話です。
思い出します。昔、清朝の時代に北京では毎晩、赤子が街路に捨てられていたそうです。寒い冬には、朝まで凍った小さな遺体が幾つかあったそうです。当時、北京にいたイエズス会の神父たちが遺体を教会へ集め、お葬式をしてから埋葬していたそうです。不幸にして幼いまま死んだ子供達へ神様のいつくしみが豊かにあるように祈ったのです。神様が子供達を天にやさしく迎えてくれるように祈ったのです。清朝に仕えていたイエズス会のマッテオ・リッチ神父がローマ法王に送った書簡に書いてある話です。これも、それだけの話です。
しかし、上に書いた2つの話は何か似通っているような気がいたします。
つまらない話かも知れません。でも何か考えさせる話ではありませんか?
福島県各地の空中放射線量は連続的にモニタリング・ポストによって測定され、毎日、新聞やネット上で発表されています。このモニタリング・ポストはソ連やアメリカの原爆実験で日本へ飛んでくる放射能を測定するため作ったので、測定器のある所は地上よりかなり高い所にあります。ですからこの測定は役に立たないという説を信じている人が多いようです。
しかし福島原発の水素爆発以来の継続的な測定値は大変重要な事実を示唆しています。
(1)福島各地の空中放射線量はゆっくりながら平常値へ向かって減少しています。この事は、福島原発の炉心から毎日空中へ上がっている蒸気に含まれるセシウムやヨウ素は極く少量で、遠方へな飛んで行かない。
(2)原発が水素爆発した3月12日から15日にかけて多量の放射性粉末が風で北西方向へ飛ばされ浪江町や飯舘村などに集中的に降下しました。そして福島市や郡山市のような大都会にも降り注ぎ、その空中放射線量は相変わらず平常値よりもかなり高いことが分かりります。
以上のような現象が起きました。これが「水素爆発以来の継続的な測定値」の変化から合理的に推定されるのです。
そうしますとセシウムやヨウ素の粉末が地上に積もっている状況が明快に想像出来ます。地上に積もった放射性粉末は風の日に空中に舞い上がり、雨の日にまた地表へ降ってきます。この繰り返しなので福島県各地の空中放射線量がなかなか平常値へ戻りません。
すなはち、水素爆発した3月12日から15日にかけて多量の放射性粉末が地面に降り積もり、それが空中と地面の間をウロウロして滞留しているのです。
しかしこのウロウロしている間に放射性粉末は雨の時、下水や河川へ流れて、少しずつ減少しています。この雨の作用や風の作用を考えると、「放射性粉末が集まる危険スポット」が想像できます。以下のような所は放射性粉末がますます集まる危険スポット所の例です。
(1)公園の舗装されていない広場や植え込みの中。
放射性粉末が雨でおりて来て、水だけが土中へ沁み込み、粉末は地表に蓄積して行きます。学校の校庭も土がむき出しなので同様です。
(2)田畑のうち、畑が危険スポット。
雨水を吸い込んで、放射性粉末が地表に蓄積するからです。特にビニール・ハウスの側の畑が危険です。
田圃は水が流れている限り、粉末も下流へと洗われているので、比較的安全です。
(3)本当に危険なスポットは自宅の庭。
公園が危険だからといって庭で子供を遊ばせる方が危険な場合があります。屋根の雨水が樋を通って庭土に吸い込まれているような庭が一番危険なスポットです。雨に降り注いだ放射性粉末が庭の表面に蓄積するから危険です。
屋根の雨水と庭の表面の雨水を、120%完全に下水管へ流す工事が出来ていれば安全です。しかし幾ら屋根の樋が壊れていなくても雨水は屋根から跳ね返されて庭にも落ちてくるのです。庭に放射性粉末が蓄積します。
特に庭土は風の日に家の中に吹き込んできます。そこは生活の場として一番長い時間を過ごすところです。公園や校庭が危険だから子供を遊ばせないことより先に、対策を施す事が緊急と私は信じています。
(4)水道用水の浄水場と下水処理場から出る濾過材の砂を取り扱う職場。
こういうところは子供は遊びませんが、職場の人が危険です。
危険スポット以外は安全スポットになります。しかしそんなに単純ではありません。上の論理に従って自分で創意工夫を重ねて、放射線の被害を最小にする努力が重要と信じています。
どうぞ皆さまのご意見をお聞かせ下さい。
それはそれとして、
今日も皆さまのご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人