明治維新以来、日本人は本気で欧米人と付き合い、日本の近代化に努力して来ました。西洋の政治体制や教育制度を輸入して来ました。西洋の藝術も学問も急いて輸入して来ました。
日本の歴史の上でこんなに外国と深く、広範囲に交流し、本気でその文化を吸収したことはありません。
欧米人とどのように付き合うか?それはあなた個人、個人にとっても生涯の大きな問題なのです。
「私は欧米人とは付き合って居ないから関係ない」と思わないで下さい。あなたが毎日食べる食品もブランドものの装身具も多くは欧米から輸入されています。
無意識のうちにあなたは欧米文化の中に取り囲まれ、ドップリと漬かって生きているのです。
私も「もの心」のついた頃から欧米人をどのように理解し、どのように付き合うべきか頭を悩ませて来ました。アメリカへもドイツへも留学しました。キリスト教の洗礼も受けました。しかし私の悩みは解決するどころか、ますます深くなりました。
ところが、70歳を過ぎて、全ての仕事を止めてから、急に霧が晴れるように悩みが解消したのです。私の欧米文化の理解に大転換が起きたのです。
大転換のカギは欧米文化のなかにある矛盾と偽善を大切に思い、それを明らかにする事にありました。そしてその矛盾と偽善を許してあげれば良いのです。そうすると欧米文化は明快に見えて来るのです。そうです。許すことが大転換のカギだったのです。
今日から何回かに分けて実例を用いて説明して行きたいとおもいます。
そこで今日はミレーの「落ち穂拾い」とアメリカ軍特殊部隊によるビン・ラーディンの奇襲殺害の矛盾について説明します。
結論を先に書いてしまえば、「落ち穂拾い」はキリストの教えに矛盾していませんが、ビン・ラーディンの奇襲殺害は矛盾しているのです。
矛盾しないことも矛盾することを平気でやってのけるのが欧米人です。
そんな欧米人をあなたは許せますか?
下の絵は「落ち穂拾い」の絵とイラン沖に展開している原子力空母と同型空母の写真です。ビン・ラーディンの死体はこのような空母から水葬にされたのです。
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下はアメリカ海軍とフランス海軍の原子力空母の写真です。1960年完成のエンタープライズ号とその後に出来たシャルル・ドゴール号です。
さて、落ち穂拾いの絵は貧しい小作人が落ち穂を拾ってパンにする生活を描いたものです。富める自作農が貧しい人々を助けるために意図的に麦の落ち穂を、収穫後の麦畑に残しておくという美風を描いた絵なのです。この絵を見る西洋人は「汝の隣人を愛せ」というキリストの言葉を考えながら観賞します。この風習はヨーロッパ文化が自慢しても良い美しい風習なのです。
ところがビン・ラーディンの奇襲殺害はキリストの「敵を愛せよ。仇討はいけない。7の70倍の回数を許せ」という教えに完全に矛盾した行為なのです。
こういうことを誇らしげに実行するのが欧米人なのです。
私がビン・ラーディンの奇襲殺害のニュースを聞いたとき深い、深い悲しみに襲われました。「7の70倍の回数を許せ」という教えを蹂躙したのです。それをオバマ大統領が誇らしげに発表したのです。しかし、しばらくすると私はこれで良かったと思うようになりました。2001年9月11日に貿易センタービルで死んだ6000人余の遺族の心情を思えば、これで良かったと思いました。
これこそが今日、強調したい実例なのです。私自身が矛盾した考えを持っているのです。あなたも持っています。その事に気がつけば欧米人を身近に感じることが出来ます。深い悲しみを持ちながら彼等を眺めることが出来ます。少しだけ同情したくなります。
これが欧米文化の理解のカギなのです。私はそのように信じています。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)