昨年の11月から今年の7月にわたる世界一周の大規模なヨットレースが展開されています。アメリカズカップのような大型ヨットによる過酷なレースで全行程7万3千キロメートルに及びます。1970年代から、すでに8回も開催されていますが日本は参加出来ません。
もっともバブルの頃は日本もアメリカズカップに参加しましたが、不況になるとうたかたのように消えてしまいました。
日本の新聞にのっていないのでヨット愛好家以外の人々は知りません。しかし昨夜7時からBS101で2時間にわたりNHKが詳しく報道してくれました。空中からの撮影も含めて丁寧な紹介です。欧米諸国ではきっと大々的に報道されていると想像出来ます。上下の写真はそのNHKのテレビ番組をカメラで撮って、トリミングしたものです。
この大規模なヨットレースの詳細は末尾の参考資料にあります。
私がこの記事で書きたい事は、何故日本が参加できないかという理由です。
参加には、ものすごくお金がかかります。数十億円とも言われています。まず全長70フィート(23m)位の高性能のヨットを設計し、建造するのに数億円かかります。
10名前後の乗組員と船長を数ヶ月間雇う費用がかかります。途中の10ケ所以上の寄港地へ支援部隊を送り、故障の修理や食料の調達にお金がかかります。
ヘリコプターによる空撮と審判艇の費用も莫大です。
参加艇は6艇で、アメリカ、アラブ首長国連邦、フランス、スペイン、ニュージーランド、 中国(海南島、三亜)の6ケ国です。スポンサーはそれぞれの国の民間会社のようです。
日本が参加出来ない理由はその民間会社にお金の余裕が無いからです。
しかし、アメリカと、アラブ首長国連邦は別にして、フランス、スペイン、ニュージーランドの民間会社よりも日本には大きな利潤を上げている会社がある筈です。
ですから参加できない理由はお金の有る無しだけではないと思います。
「こんな役にも立たない無駄なレースに莫大なお金を使うのはいけない」と思う人々が多いからと思います。趣味にお金を使うのは倫理的にいけないと思う人が多いのかも知れません。「脇目もふらず仕事一筋に打ち込む人生が」が理想の人生と思っているのです。そのように思う人が現在でも結構、多いのではないでしょうか?
それは日本の良い伝統なのです。けっして悪い精神文化ではありません。
この記事で私の主張したい事は、欧米と日本の精神文化が決定的に違うということです。
一流の企業のサラリーマンが世界一周レースに参加するので8ケ月の休暇を下さいと言えますか?たとえ運良く休暇を貰えても、復職後の出世は困難になるでしょう。
日本では仕事は修業の道とよく言われました。一生修業しなさいとも言われます。修業ですから成果よりも努力に価値があります。日本の会社の中での人間の評価には成果だけでなく「努力の大小」がある程度考慮されると聞いています。
そんなことを考えると日本は世界一周ヨットレースに参加できない理由が納得できました。
ついでに書けば中国の海南島のチームです。船長も乗組員も欧米人です。乗組員の一部は中国人が居るかと映像を注意深く見ましたが、中国人らしい人が居ませんでした。国威発揚のために参加したのでしょうか?北京の共産党本部が許可しない限り国際レースには参加できないお国柄なのです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)
・
・
・参考資料:ボルボ・オーシャンレースの経路
約9ヶ月間、39,270海里(約7万3千キロ)を10レグに分割して争います。第1レグは2011年11月5日にスペインのアリカンテをスタート。ケープタウン(南アフリカ)、アブダビ(アブダビ首長国連邦)、三亜(中国)、オークランド(ニュージーランド)、イタジャイ(ブラジル)、マイアミ(アメリカ)、リスボン(ポルトガル)、ロリアン(フランス)を経由し、2012年7月にアイルランドのゴールウエイにゴールする予定です。
参加する6チームのヨットが11月5日、スペイン・アリカンテを出港し、南アフリカ・ケープタウンに向けて第1レグがスタートします。レースは約9ヶ月間、39,270海里(約7万3千キロ)を10レグに分割して争います。
http://www.volvocars.com/jp/top/about/news-events/pages/default.aspx?itemid=83
今回の参戦6チーム
Groupama Sailing Team(フランス)
Abu Dhabi Ocean Racing Team(アラブ首長国連邦)
PUMA Ocean Racing powered by BERG Propulsion(アメリカ)
CAMPER with Emirates Team New Zealand (ニュージーランド)
Team Telefonica(スペイン)
Team Sanya (中国)