19世紀のカール・マルクスによって考えだされた共産主義は神を否定し、キリスト教へ反逆しました。1900年以上の欧米のキリストと教の歴史の中でこのような全面的な反逆は皆無でした。宗教改革や宗派同士の戦争はいくつもありましたが、キリスト教を完全に否定し、革命を起こし、教会を破壊すべしいう思想は皆無だったのです。
そして1917年にはロシア革命が起き、共産党独裁のもとでソビエト連邦が1991年まで74年間続いたのです。ロシアでは聖職者の処刑と、教会の爆破が起きたのです。ロシア正教はカトリックなどと同じような旧教の一派で、政治的権力へ大きな影響を与えていたのです。
左の写真はカール・マルクスです。生家はドイツのモーゼル川の上流のトリアー市にあり、昔、私も見に行ったことがあります。その地方は良質のブドウ酒で有名な地方です。夜はモーゼルワインを飲みながら一緒に行ったドイツ人とマルクスのことを少しだけ話しました。マルクスの話を始めると、彼は明らかに嫌そうな顔をします。その経験以来、欧米人とマルクスの話はしないほうが良いと悟りました。
矛盾と偽善にいろどられた欧米人と上手に付き合うためには共産主義の話題は避けたほうが良いのです。
カール・マルクスの話はしないのが鉄則です。
しかし20世紀の人類の文化へ対して共産主義は甚大な影響を与えたのも事実です。
19世紀に起きた産業革命と資本主義の拡大はヨーロッパに従来なかった貧困層を生んだのです。その貧困層を救うにはキリスト教では無力だと考える人々が居たのです。
貧困層を救うためには革命を起こして、貧困な労働者や農民が政権を取り、財産の共有と富の平等な分配をすべきという共産主義が主張されたのです。貧困層を生んだ最大の原因は資本家や政治権力に癒着したキリスト教を完全に破壊するべしという思想でした。
20世紀は大戦争の時代だったのです。理由は、共産主義へ対する恐怖心がその一つとも考えられます。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカは共産党独裁のソ連を常に恐れていました。
我々日本人は共産主義をどの様に理解すべきでしょうか?私にとって頭の痛い問題です。
それがキリスト教に入り、聖書を読み、ローマ法王傘下の教会組織に入って見ると共産主義が別の角度から見えてきました。
共産主義はキリスト教の鬼っ子だと言われる理由が分かったのです。キリスト教の教えを一々裏返しにして、悪魔的に言いかえれば共産主義の文章になるのです。「人を殺してはいけない」という教えは、「革命は銃口から始まる(有産階級はみな殺せ)」となるのです。
共産主義は中国や、ベトナムや、北朝鮮にまだ存続しています。21世紀になっても生き残っているのです。日本人にとっても、まだまだ複雑な問題が横たわっています。
さて話題を変えて、1989年のベルリンの壁の崩壊と1991年のソビエト連邦の解散は欧米人はどのような感情で迎えたのでしょうか?
アメリカとソ連との間の冷戦にアメリカが勝利をおさめたと喜んだアメリカ人もいました。しかし全世界にいる何億人のキリスト教信者はホッと胸をなで下ろしたのです。イエス様が悪魔に対して勝利をおさめたという深い安堵感です。
イエス様は当時ローマ軍に占領されていたイスラエルの独立のための革命を起こそうとはしませんでした。革命は起こしてはいけない。この世のことより神の国のことを考えなさいと人々を諭したのです。
共産主義革命が世界のあちこちで起きた20世紀は人類にとって悲劇の世紀でした。単に大戦争が起き、何千万人の人が死んだことだけではなかったのです。キリスト教文化の崩壊が起きたのです。欧米人の深い悲しみです。
そのことを理解すれば、欧米人へ少し同情を感じます。同情を感じたら、そっとしてあげましょう。話題にして議論すべき問題ではないのです。傷口に塩を塗ってはいけません。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)
下はロシア赤軍によって爆破されたロシア正教の教会の写真です。