この所、ブータンの「国民総幸福度」について考えています。定量的に評価が不可能な概念です。実験で証明出来る概念でもありません。
このように数式できちんと表現出来ない概念は人それぞれの考え方でどうにでもなるのです。
しかし幸福度を国家目標にしている国が存在するとは驚きです。経済成長のみを国家目標にしてきた戦後の日本へ何か大きな問題を提起しているようです。
重要な概念と思い、いろいろ調べていましたら、早稲田大学の宮下史明先生が実に明快な研究論文を書いていることを発見しました。それもブータンが流行になる以前の2009年9月に発表された論文なのです。その先駆的な思考に感心します。
早稲田商学420・421合併号の39ページから74ページにわたる本格的な研究論文です。研究論文ですが素人にも分かり易く書いてあります。その内容に感心しました。宮下史明先生へ敬意を表します。
皆様にも必ずやご参考になると思いますので、以下に極く一部の抜粋をお送りします。URLをクリックすると全文が読めます。是非、全文をお読み頂くように祈っています。
=======宮下史明先生の研究論文============
GNH (国民総幸福量)の概念とブータン王国の将来
── GNP からGNH へ ──宮 下 史 明
早稲田商学第420・421 合併号39ページから74ページ2 0 0 9 年9 月
(http://www.waseda.jp/w-com/quotient/publications/pdf/wcom420-421_02.pdf )
以下に抜粋だけを示します・・・ まだ電気やガス,水道も無く,薪で
料理をし,ランプ生活をしている家が大部分である。電気の普及率も30%位と
低いので,家庭電化製品の普及もこれからである。しかし国民の間の貧富の差
は小さい。3世代の大家族で,家族全員で力を合わせて,村人と共に作業をし,
欲望もまだ少なく,仏教を熱心に信じて生活している今日の姿の方が真の幸せ
かもしれない。
GNH には4つの柱がある。日本語訳は人によって若干異なるが,(1)持続
可能で公平な社会経済開発,(2)自然環境の保護,(3)有形,無形文化財の
保護,(4)良い政治の4つだ。この考え方はチベット仏教の考え方に根ざし
ているという。貨幣的な尺度とは全く異なる。この考えに賛同する人も多い反
面,勿論反対意見もある。その最大のものは,どうやってこれを数値化して測
定し,国際比較できるのかという点だ。これは確かに困難な作業だ。ブータン
ではこのGNH を計測する指標として,(1)基礎的な生活,(2)文化多様性,
(3)精神衛生,(4)健康,(5)教育,(6)時間の使い方,(7)自然環境,
(8)コミュニティーの活力,(9)良い政治の9つの事項を考えているという。
これも数値化することが困難な項目が多い。しかしこのようなGNH の考え方
で国際比較すると,ブータンの国際的地位は非常に高くなると言う。それは
ブータン人の大部分は,自分達は現在幸福だと考えていることから分かる。
GNH の考えは後述する国家開発5ヵ年計画の中に様々な表現で登場して来
る。例えば「有形,無形文化財の保護」では,第3次5ヵ年計画(1971~
1976 )の中に「歴史的建造物の保護」が取り上げられている。また第8次5ヵ
年計画では,「文化と伝統的価値観の保護と促進」ともっと明確に述べられて
いる。時代と共に経済的発展を推進する考えは後退する一方,環境保護,伝統
的価値観の保護と促進を全面に押し出している。また人的資源の開発,国内の
地域間格差の解消など国民の幸福度を高める考えが見られる?。
・・・・以下省略・・・・・