客船には音楽がつきものです。お客を楽しませるために3つ、4つの楽団を乗せて、船内のいろいろな場所で演奏しています。出港の前には岸壁の上からブラスバンドで送ってくれます。夕食後は華やかなショーがあります。船上の音楽はよくフィリッピンやアメリカのチームが乗り込んでいます。日本人のオペラ歌手が出るときもあります。
感心するのは船上の音楽全体をバランス良くマネージし、全体としてよく調和のとれた「船上の音楽世界」を作っていることです。心地よい波に揺られているように船内では音楽を気楽に楽しめます。くつろげます。
しかし客船で一番感動することは従業員の態度です。
社交的で温かく、いつも笑顔です。従業員はいろいろな国の人です。フィリッピン、インドネシアなどの南アジア、ロシア、ウクライナ、バルチック3国などの東欧圏の人が多いようですが、他にアメリカ、カナダ、スペイン、そして日本などの人々が居ます。
聞くところによると、日本郵船はフィリッピンに従業員の訓練学校を持っていて、世界中から従業員希望者を集め教育しているそうです。
昨日、乗った船は乗客定員872名に対して従業員が470名乗っています。この470名の中には船長や高級船員も含みますが大部分は客室のメイドや給仕人、料理人なのです。廊下で会う従業員はその職種を問わず全員がにこやかに挨拶をします。人間の善意が溢れる笑顔です。
このような従業員が客船の楽しさを下から支えているのです。どんなに音楽演奏が立派でもこのような従業員が居なければ本当に安心して楽しめないものです。
立派な客船は音楽があり、美しい店店があり、カジノがあるので享楽的な遊びと勘違いする人々がいます。実は私も享楽的過ぎると敬遠していました。まあ、我が家の経済的な事情も「敬遠していた理由」でしたが。
しかし従業員の刻苦勉励に支えられた優しさと社交性を見ると、つい「人間とは何だろう?」と考えてしまいます。国籍を越えた人間の素晴らしさが身に迫って来るのです。給仕人と家内が時々話していました。そしてその人間性に感心しています。
下に示す場面だけを見ると客船の遊びの半分しか見えて来ません。従業員の人生に幸多かれと祈らざるを得ません。
彼等の写真を撮るのを忘れたことを深く反省しています。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
出港する時は晴海埠頭の上でブランスバンドが賑やかに送ってくれます。デッキの上ではお客たちがシャンペン方手に紙テープを投げています。踊っている一群の人もいます。
隣に立っていた老人が、「ブラジル移民もこうして故国と別れたのだろう」とつぶやいていました。
出港して、やれやれと船内に戻るとこのような気楽が楽団が迎えてくれます。
夕食まで時間があるので人々が何となくサロンに集まって来ます。ピアノとフルートとコントラバスが軽いクラシック音楽を演奏しています。
上と下は夕食後のショーです。こういうショーは昔ラスベガスで見て以来です。歌もダンスも一流です。出演者はいろいろな国の人の混成生チームでした。
ショーの後はダンスパーティがあり映画会もありました。カジノも開帳します。
私は勘弁してもらい、自分の部屋の窓から白く泡立つ海をいつまでも見ていました。(続く)