日本の伝統的な文化の底には「清貧の思想」が静かに流れています。わびとかさびの世界ともつながっていて、私の心のなかにも自然に棲みついている思想です。
しかし1989年に日本で初めての「豪華客船」といはれる「ふじ丸」が就航しはじめてから、多くの日本人が贅沢な船旅を楽しむようになりました。
そしてその後も豪華客船が3隻加わり、現在は4隻の船が多くの日本人を楽しませているのです。
「清貧の思想」とどのように折り合いをつけているのでしょうか?
躊躇しながら私も「ふじ丸」の最後の航海に乗って来ました。
そうしたら船の中は、1989年の就航以来の24年間に何度も乗った人々の同窓会のような雰囲気です。そしてこの「日本で初めての豪華客船」との別れを惜しんでいるのです。それは私にとって不思議な光景です。
それはさて置き今回の一泊二日の船旅の様子を以下にご報告します。
まず出港セレモニーの様子です。場所は東京、晴海客船センターです。
豪華客船の出港には管楽器を主にした音楽隊の派手な演奏があります。今回は国学院大学の吹奏楽部の出演でした。
「ふじ丸」最後の航海なので都庁の偉い人の挨拶があり、そして三等航海士として入社し、24年間働いてきた一等航海士の思い出話がありました。この思い出話はしみじみとしていてなかなか良かったです。
出港のときには色とりどりの紙テープが投げられます。そうして甲板上では乗客たちがシャンパンを飲みながら歓声を上げています。
船の中はきらびやかな内装になっています。吹き抜けになったエントランスホールが客を迎えてくれます。
ディナーは前菜、スープ、魚料理、口直しのグラニテ、主菜の肉料理とサラダ、デザート、コーヒーという正餐です。客は正装してきます。
料理は美しく見えますが、あまり美味しくはなかったです。はっきり言えば主菜のフォグラ添えのビーフ以外は不味いのです。しかし食器やナイフやフォークなどが上品で、良い品物なので食べていて楽しいのです。
そして何時も感動することは料理を運ぶ給仕人の挙動が緩急自在で素晴らしいのです。フィリッピンやインドネシアの若い男女ですが、お客の気持ちを読み取って、素早くサービスしてくれるのです。給仕人にはウクライナやブルガリヤなどの東欧の女性もいるときもあります。
しかしその給仕の仕方は全員がよく訓練されていて毎回必ず感動します。豪華客船の神髄は「サービスの良さ」にあるのです。
ディナーのあとはショータイムです。手品あり、落語あり、室内楽あり、オペラのアリアもあります。下に3人組のラ ショコラという室内楽の様子です。
演奏が終了すると出口にでて、下の写真のようにお客を見送ってくれます。
次の日の午前中は初島散策でした。昼食は船に戻って、骨付きの羊肉をカツレツ風にしたものを主菜にしたコース料理でした。
午後はビンゴゲームがあり、オークション会があり、3時にはケーキと紅茶のサービスがあります。そして劇場では昨夜と同じ室内楽とソプラノがあります。
そして最後の航海を記念して、船長以下全乗組員とお客の集合写真を広いデッキの上で撮影しました。
何度も乗って顔見知りの人々が握手をして別れを惜しんでいる光景は学校の卒業パーティのような雰囲気です。
夕食は和食の膳でした。そして午後8時に下船しました。
以上一泊二日の初島への船旅は一人6万円です。船内での全ての食べ物とシャンパンやワイン、ビール、日本酒、全て無料です。乗船から下船までお金は一切要りません。お土産を買えばそれだけがお金が要ります。
豪華客船の料金は一日あたり大体5万円から7万円です。3泊なら15万円から21万円になる勘定です。贅沢といえば贅沢な旅です。
このような豪華客船と清貧の思想との関係については続編として明日書くことにします。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)