偶然知り合って意気投合し、お酒を酌み交わすということが人生にはあるものです。
もう10年近くなりますが鈴木 裕さんという人のすがすがしい生き方に感動して一夕、お酒を酌み交わしました。静かに話を聞きながら飲みました。
彼は日産自動車の技師でしたがその頃、早めに退職し自立した人生を切り開こうとしていました。そして車のラリーを普及させるためにいろいろなイベントを企画していました。
神戸にある実家に帰り、母と妹さんと3人で静かな生活をしています。その後ある大学の先生になったようです。
それ以来、毎年、お正月過ぎの早春に香り高い須磨の海苔を送ってくれます。
そして3月になり、イカナゴ漁が解禁になると風味絶佳の「釘煮」を送ってくれるのです。母上と妹さんが丁寧に仕上げたいかなごの釘煮です。
下に今年お送り頂いたイカナゴの釘煮の写真を示します。
山椒を入れたものと生姜を使ったものの2種類です。山椒は、その生産量日本一和歌山県有田川町で採れる「ぶどう山椒」と言う品種だそうです。
イカナゴは解禁直後のもっとも小さいシンコと呼ぶ稚魚を使います。下にその写真を示します。
イカナゴは不思議な小魚で、暑さに弱く、梅雨時から秋まで砂の中に潜って夏眠する魚です。全国に分布していてコウナゴと呼ぶ人もいて、呼び名は地方によっていろいろあるようです。
釘煮を作る時は小さなイカナゴを沢山鍋に入れ、醤油、みりん、砂糖、生姜あるいは山椒を入れて煮込みます。此の時、絶対に掻き回さないそうです。繊細な魚なので動かすと壊れてしまって団子状になるそうです。
とにかく焦さないように根気よく煮詰めて、汁が完全に蒸発して無くなるまで煮詰めます。弱火、というかトロ火で炊くのです。
その煮詰めた時の味加減が非常に重要なのです。
鈴木さんの母上の味は上品です。その上、生姜や山椒の香りが程良くてなんとも言えない風味があるのです。料理は作っている人の性格を表わすと言いますが優雅で、その上根気の良い母上のお人柄が偲ばれるのです。
何時も家内のことを持ち出して恐縮ですが、須磨の海苔とイカナゴの釘煮が届いた時には本当に幸せそうにしています。2種類の釘煮の仕切りを葉蘭でしてあるのですがその細かな切り方が本当に丁寧な事に毎年感嘆しています。
文字通り風物詩の少し高尚な小さな幸せです。こんな事が人生にはあるものなのです。
下に関連の写真を下に示します。出来たら是非イカナゴの釘煮をネットで購入し味わってみて下さい。いわゆるコウナゴの佃煮とは風味が違います。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
===以下に須磨の海苔とイカナゴ漁の写真を示します===
左が須磨の海苔で、右の写真は須磨の海で養殖した海苔を船で収穫している様子です。
写真の出典はhttp://www.city.kobe.lg.jp/information/public/online/photo/number27/special_features/index2.htmlです。
左は今年の2月28日の解禁日に須磨沖でオカナゴ漁を始めた漁船の様子です。右の写真は今年の初水揚げされたイカナゴです。この二つの写真は2月28日の神戸新聞(http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201402/0006742352.shtml)から転載致しました。