私の古い友人に馬場駿という小説家がいます。伊東市で岩漿文学会を主宰し、同人誌を出してきました。処女出版は馬場駿の筆名で「小説大田道灌」です。 しかし今までは販売ルートが無くて一般の人には入手困難でした。 私は、素人の小説家がプロに育つには作品を全国の人が簡単に購入出来るようにしなければいけないと思っていました。この考え方には反対の方々もいると思いますが、私は昔からそのように思っていたのです。 今回、馬場駿がはじめてAmazon Bookから「孤往記」-愛おしき蒼さのなかでーという小説を全国へ向けて発売したので。その本の写真を下に示します。 Amazon Bookを検索し、その検索欄に「孤往記」を記入すると価格や購入手順が出て来ます。 今までの馬場駿の努力を応援するために、このブログで彼の作品をご紹介してきました。その作品の一覧は末尾につけてあります。 これまでは販売ルートに問題があり全国の人々が気軽に購入出来なかったのです。 しかし3月7日よりAmazon Bookから発売されるようになって、私は小さな幸せを感じています。彼の長年の努力が少し報われたようで嬉しいのです。私も幸福感に包まれています。 馬場駿と一緒に飲んだのは40年くらい前でした。 深い森の奥の、彼の兄の木内正夫さんの山荘の中、燃えさかる暖炉の前で、愉快な一夕を過ごしたのです。 彼らが自分たちで作った石の暖炉の前で楽しい話し合いをしながら飲んだのです。 あの夜以来一度も会っていません。しかし私は忘れないのです。 彼と一緒に過ごした山荘の最近の写真を示します。下の写真はその山荘に登って行く入口の風景です。雪に覆われた雑木林が美しく連らなっています。 雪道を2Kmくらい登ると馬場駿の実兄の木内正夫さんの山荘に着きます。下の写真の左端にその山荘が写っています。 馬場駿の処女出版、「小説大田道灌」の書評はこのブログで2007年11月に、馬場駿著「小説大田道灌」の読後感 と題して掲載しました。 その後、彼の岩漿文学会の「岩漿」については第19号まで、その内容をこのブログで紹介してきました。 そのようないきさつもあるので、今回の「孤往記」の全国向けの発売は本当に嬉しく思うのです。ほのぼのとした満足感と幸せを感じています。小さな幸せですが、それを紡いで行くと大きな幸福になると思います。 それはそれとして、 今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人) ====参考資料=================== (1)小説家、馬場 駿のドラマチックな生の軌跡 =======「筆名は心の師」、木内光夫============ 二十年以上も前、仔細あって所謂都落ちし、伊豆の地で志とはかけ離れた生活を悶々として送っていたときのことだ。生涯の師と仰ぐ馬場駿氏が単身、私の勤務先の観光ホテルを訪れた。このとき師は、かつて私が在籍していた会社を資本金数十億円にまで大きくし、社長付常務取締役として八面六臂の活躍をしていた。秘書も不知のお忍び旅行だという。師は私と妻を夕餉に誘い、その場で泣かんばかりにして私の現状を嘆き憂えた。こんなところで何をしているのだと。 この師との出会いは劇的だった。この会社の横濱支社へ応募した際、私は身内の身元保証を得られなかった。三十五六まで夢を追い、赤貧洗うが如しのアルバイト生活を送っていた私の、言ってみれば身から出た錆。私は不採用という結果に甘んじるしかなかった。ところが後日、会社が突然再面接を申し入れてきた。当時会社顧問だった師が支社長へ指示をしたのだ。高校任意退学、文部省大検一回全科目合格、通信教育四年で大学の法科卒、以後法曹を目指して職業的には浪々。師は弾かれた履歴書群の中から私の一枚を拾い上げたのだ。一転私は採用、本来経済力が必要な保証人も、母が「私が産んだ」という証明をもってこれに代えて可、となった。調査はしたよと破顔一笑の師。M銀行支店長だったという師はある日、「僕は東大卒、京大卒いろいろ部下をもったが、君のようなタイプは初めてだ」と肩を叩いてくれた。その言葉の含意は今も不明だが、私は心でその言葉を受け止めた。 心の師が翌朝ホテルを去る際に至言をくれる。「大都会で金や地位欲しさに暗闘しているよりも、疲れ果てた人を癒す仕事の方が数段上かもしれないな。ゆうべは言い過ぎた。悪かった」。文通はその後も続いたが、師は難病に罹り終に帰らぬ人となった。私はホテルサービスという仕事から卑屈な想いを取り去った。師に認められた自分を思い出し、その事を支えにあらゆる屈辱に耐えた。処女出版「小説大田道灌」の筆名は馬場駿。自伝ではないが師に肯定された私の過去が入る連載小説「孤往記」も。あと一冊は筆名馬場駿でと、今は小説「疎石と虫」と向かい合う。(終り) (2)小説家、馬場駿に関してこのブログに掲載した記事の一覧 連載小説、馬場 駿著、「雪積む樒」(ゆきつむしきみ)、その4、亡き母を始めて受け入れ、懐かしく思う |
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連載小説、馬場 駿著、「雪積む樒」(ゆきつむしきみ)、その3、亡父は、酒好き、女好き、怠け癖 | ||||||||||||||
連載小説、馬場 駿著、「雪積む樒」(ゆきつむしきみ)、その2、母の危うい姿 | ||||||||||||||
連載小説、馬場 駿著、「雪積む樒」(ゆきつむしきみ)、その1、母の遺稿集を編集する | ||||||||||||||
総合文芸誌、「岩漿」第21号のご紹介です | ||||||||||||||
馬場 駿 著、「夢の海」の紹介・・・旧友の小説 | ||||||||||||||
ブログに掲載したあなたの文章を「岩漿」という文芸誌で活字にしてみませんか? | ||||||||||||||
小説家、馬場 駿のドラマチックな生の軌跡
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