おやじのつぶやき

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国民投票法を廃案に②

2005-09-26 20:30:02 | 平和
 自民・公明与党は、民主の賛成も考慮しつつ、憲法「改正」に向けて、委員会の設置と国民投票についての法案を国会に提出しようとしている。国会での議論がどのように展開されるか。とりわけ、民主党の動向がいかなるものか、予断を許さない。解散のない、4年間。巨大与党体制のもと、二分の一政党しか存在しない中で、さまざまな法案や体制が実現する。「共謀罪」「教育基本法」「防衛省設置」
「大型増税」「消費税アップ」・・・。こうした戦後総決算・改革路線の総仕上げを実現するための4年間。国民の参政権は、ただ何回かの投票行動だけではない。国会審議を監視し、数の横暴に対しては、NO!と叫ばなければならない。今回、二つの弁護士会から国民投票法に反対する声明が発表された。紹介します。

憲法改正国民投票法案に対する声明
2005(平成17)年9月20日
東京弁護士会 会長 柳瀬 康治

 与党は、2001年11月に発表された憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えたものを基に、憲法改正国民投票法の法案化の作業をすすめるとしている。また、自民党、民主党、公明党の3党は、憲法改正の手続きを定める国民投票法案を審議するため、衆議院に「憲法調査委員会」(仮称)を新たに設置することで合意したとのことである。
 しかし、近時、有事関連七法の成立、イラクへの自衛隊の派遣、首相の靖国神社参拝、日の丸・君が代の強制、新しい歴史教科書づくり、準憲法ともいわれる教育基本法の改正問題など、憲法の基本原則から議論となっている問題も多く生じており、これらの動きに対するアジア諸国の警戒感も強まっている。
また、各界から、憲法改正に向けた意見や改正案が公表され、これらの多くは、国民主権主義、基本的人権の尊重、平和主義の憲法の基本原則は維持すると述べつつも、その具体的提言の中には、憲法の基本原則を後退させかねない議論、近代憲法は人権を保障するために権力を制限する制限規範であるという憲法の本来の意義を失わせかねない議論も存する。このような状況において、これまで憲法改正の要否や改正の方向について国民的な議論が広範に行われてきたとは言えず、改正に向けた合意が形成されていると思えないこの段階で、憲法改正手続法を性急に制定することには慎重であるべきである。また、与党が準備しているとされる国民投票法案は、(1)国会の発議から僅か30日以後90日以内に国民投票を実施する、(2)刑罰をもって、公務員、教員の投票運動を制限したり、外国人の投票運動を全面的に禁止し、マスコミ等の報道の自由を過度に規制している、(3)改正が複数の条項にわたる場合について、個別に国民の意思を反映しうる投票方法としうるかも規定されていない、(4)憲法改正に賛成する投票数についても有効投票総数の過半数で足りるとする、(5)最低投票率の定めもないなど、看過できない問題点が多く存する。これでは国民の知る権利を確保するために保障されている表現の自由が侵害されるとともに、憲法改正権者である国民は、議論をするのに十分な情報も時間を与えられず、その意思を正しく反映することも出来ないと言わざるをえない。
 当会は、憲法改正について主権者国民の間にいまだ合意が形成されていないこの段階で、憲法改正の可否についての運動や議論を大幅に制限・規制する憲法改正国民投票法案を国会に上程することに強く反対するものである。


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憲法改正国民投票法案に関する会長声明

 仙台弁護士会は、日本国憲法の平和主義、国民主権、基本的人権保障などの原則を尊重する立場から、これらの諸原則に反する疑いのある法案や政府の行為に対し、批判や反対の意見を表明してきた。
 近時、政府与党は、国会での憲法改正国民投票法案成立を目指している。法案の内容は、2004年12月3日、国民投票法等に関する与党協議会の実務者会議において、2001年11月に発表された憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えて日本国憲法国民投票法案骨子(案)(以下「法案骨子」という。)を策定し、この「法案骨子」を基に法案化するとのことである。
 しかしながら、この「法案骨子」には、国民主権、基本的人権の保障という憲法の基本原則からして、以下の重大な問題がある。

1 「法案骨子」は、憲法の複数の条項について改正案が発議された場合に、全部 につき一括して投票しなければならないのか、あるいは条項ごとに個別に投票で きるのかについて明らかにしていない。
 この点については、国民主権の原理に則り、条項ごと又は問題点ごとに個別に賛否の意思を問う発議方法及び投票方法がとられるべきである。
 
2 「法案骨子」は、国民投票運動について、広範な制限禁止規定を定め、不明確 な構成要件により刑罰を科すものとなっている。その主なものを挙げると、①公 務員の運動の制限、②教育者の運動の制限、③外国人の運動の全面禁止、④国民 投票の予想結果の公表の禁止、⑤新聞・雑誌の虚偽報道の禁止、⑥新聞・雑誌の 不法利用の禁止、⑦放送事業者の虚偽報道の禁止等である。
 しかし、国民投票にあたっては、表現の自由が最大限保障されるべきであり、国民投票運動は基本的に自由でなければならない。上記のような規制が広範かつ不明確な構成要件のまま設けられるならば、憲法改正国民投票という主権者が最も強く関与すべき事項について、主権者に十分な情報が伝わらず、また、国民の間で自由な意見交換がなされないまま国民投票が実施されることになるおそれがある。「法案骨子」の制限禁止規定は、表現の自由、報道の自由及び国民の知る権利を著しく制限するものであるといわなければならない。
 
3 「法案骨子」は、国民投票の期日については、国会の発議から30日以降90 日以内の内閣が定める日としている。
 しかし、国民が的確な判断をするために必要かつ十分な期間が確保されなければならず、この期間はあまりにも短い。
 
4 「法案骨子」は、憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の2分の1を 超えた場合に国民投票の承認があったものとする。また、国民投票が有効に成立 するための投票率に関する規定を設けていない。
 しかし、少なくとも改正に賛成する者が、全投票総数の過半数を超えたときに、改正についての国民の同意があったとされるべきであり、国民投票が有効となる最低投票率に関する規定も設けるべきである。
 
5 「法案骨子」は、国民投票無効訴訟について定めているものの、提訴期間を投 票結果の告示の日から起算して30日以内とし、一審の管轄裁判所を東京高等裁 判所に限定している。
 しかし、この提訴期間は憲法改正という極めて重要な事項に関するものとしては短かすぎるし、管轄の限定も国民の裁判を受ける権利を制限するものであって不当である。 

6 「法案骨子」は、軽微な選挙違反による公民権停止者の投票権を認めず、「衆 議院及び参議院の選挙権を有する者は国民投票の投票権を有するものとする」と している。また、18歳以上の未成年者についても、これを認めないとしてい  る。
 しかし、公民権停止中の者に対して憲法改正の投票権を否定する理由に乏しく、また、18歳以上の未成年者については十分な議論がなされるべきである。
 いうまでもなく、憲法改正国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国民の基本的な権利の行使にかかわる国政上の重大な問題である。よって、国政参加のどの機会にも増して、国民には自由な議論の時間と方法が保障されることが必要であるし、投票結果には国民の意思が正確に十分に反映される手続が保障されるべきである。
 しかるに、「法案骨子」は、上記のとおり、民主的な手続的保障への配慮を欠いているといわざるを得ず、このまま拙速に進めば、国民の基本的人権を侵害したまま、国民の意思が正確に反映されないまま、国の最高法規たる憲法が改正されてしまう危険がある。このような「法案骨子」に基づく憲法改正国民投票法案が国会に提出されることは到底容認することができない。
 よって、仙台弁護士会は、国民主権、基本的人権尊重などの基本原則を尊重する立場から、「法案骨子」に基づく憲法改正国民投票法案が国会に提出されることに強く反対するとともに、広く国民の間で、真に国民主権に根ざした憲法改正国民投票法のあり方について十分な議論がなされることを求めて、活動していくものである。

2005年(平成17年)9月21日
仙台弁護士会 会長 松 坂 英 明

コメント (1)
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