Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

信用できない詩人

2011年11月28日 07時49分35秒 | Weblog
絶望の精神史(金子光晴)
 金子光晴の詩には、なんとなくアナーキーな達観があり、好きだった。その延長上で買い求めたのが、当初カッパブックスから出版されたという「絶望の精神史」。
 だが、内容はひどい。
 「そばに比較対象物のない島国日本は・・・自分たちが、ほんとうに幸せなのか、不幸せなのかがわからなくなる」(p18)は、まあ、いいだろう。だが、これとて「イギリスはどうなんだ?」と反論されたらおしまいである。
 大正に入り、著者は、「しみじみと、日本人に生まれたことをくやみ、丸い鼻、黄楊いろの肌に、とりかえしのつかない自己嫌悪をおぼえた」(p101)というが、ここにおいて正体が暴露された。何のことはない、自己嫌悪を日本人・日本社会に投射しているだけの話なのである。
 その証拠に、著者は、関東大震災の際に「社会主義者が蜂起した」などというデマに動かされる人間を「日本人的」として批判するが、ハリケーン・カトリーナの時の暴動を見れば分かるとおり、こうした現象は世界中で見られるものだ。
 著者の論法は、「日本はダメだからダメなんだ」と言うに尽きる。理詰めでものを考える人間には到底ついていけない。
 それよりも、この本を読んでいると、金子光晴という人物に対する信用が揺らぐ。例えば、生まれたばかりの長男を妻の実家に預けて、妻と一緒に7年間の海外旅行に出るところ(p126)や、出島春光という画家が詐欺を実行しようとしたとき、それを止めないばかりか、片棒を担いだあげく、「10フランをよこせ」と取り分を求めるところ(p134)を読むと、この人の人間性が分かってしまう。
 この人の書いた散文はもう読まないことにした。
  
コメント
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