「それからもう1つは,こういう知性化が活発な人というのは,自分の知的能力に対して過剰な期待があります。そうすると,自分はこれぐらいの知的活動ができるべきだ,これぐらいの知的な能力があるべきだという,要求水準が高くなります。自分の知的な能力に対して期待が強いのです。実際の能力がそこまでは行かないとなると,今度は自己不全感が非常に強くなります。というのは,自分の誇れる知的能力が,自分の期待どおりではないということは,自分が非常に劣った,無能な人間であるように感じられるのです。
知的な仕事をしている人の「うつ」というのがあるでしょう。弁護士とか学者とか医者とか,そういう知的職業の人がうつになる場合というのは,だいたいこれなのです。」(p73)
最近、修習同期の検察官が30代で亡くなった。
死因はスキルス性胃がんということだったが、大柄で丈夫そうな男性だったので、非常に意外に感じた。
スキルス性胃がんの発生機序はよく分かっていないらしいが、ストレスが大きな要因とされているようだ。
検察官の職務が激務でありストレスフルであることは法曹関係者ならみんな知っているが、実は、激務以外の原因でうつになってしまう人が、この業界には多い。
弁護士の職業病の一つに糖尿病が挙げられるが、糖尿病を患う人の約4割がうつを発症しているそうで、このことと、上に引用した過度の「知性化」(intelllectualization)が相俟って、こういう現象を生み出しているのではないだろうか?
糖尿病だけでなく、「知性化」にも要注意ということなのだ。