「『吾輩は猫である』の”吾輩”のモデルは夏目漱石が愛した黒猫といわれ、縁の深い東京・神楽坂の地名も作中に出てきます。」(p20)
これは初耳だった。
小説を読み返してみると、「筋向こうの白君」と「隣の三毛君」が出て来るので(岩波文庫版ではp11)、白猫や三毛猫でないことは分かるが、黒猫と特定することまでは出来ない。
もっとも、「アンドレア・デル・サルト」(p13)を知っているような知的な猫は、やはり黒猫がしっくりくるだろう。
漱石に限らず、猫好きの作家は多く、飼育数で言えばやはり谷崎がトップではないかと思う。
何しろ、戦時期を除いて一生猫を飼っていたのである(自我の相互放棄(1))。
谷崎は、和猫が嫌いで、洋猫を偏愛していたらしく、「猫と庄造とふたりの女」に出て来る”リリー”は、洋猫のうちの”鼈甲猫”とされている。
猫好きと言えば、三島も愛猫家として知られており、”チル”という猫を飼っていて(写真を見るとキジ猫のようだが断定はできない)、机の引き出しには煮干しが常備されていた。
海外の作家では、ヘミングウェイが非常に有名で、彼が勝っていた猫やその子孫は「ヘミングウェイキャット」と呼ばれているそうである(【ヘミングウェイキャット】文豪が愛した猫と引き継がれる命のリレー)。