明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



書道用品の店から筆が届いた。ヒトダマを描くには墨をタップリ含み、毛足の長い筆が良いと見当をつけていた。快調に描き進める。以前女刺青師彫Sに、自分に入れる狐火の色について相談されたが、圓朝のヒトダマは今の所、墨を反転した白色しか浮んでいない。 ヒトダマにチャレンジするのは実は2度目である。小学3年生の頃の話である。今と同じでお化け、幽霊が人一倍好きなのに自分で見たことも感じたこともないので、与太話をなんでも信じる連中を馬鹿にしていた。何かにヒトダマはバクテリヤだ、という話が書かれていた。それを連中に話すと、普段私にバカにされているものだから、じゃあ作ってみろ、という話になった。「出来なかったら二階から飛び降りろよ」。「飛び降りてやるよ」。 母に生イカを買って来てもらい、羊羹の缶に水を入れて中に浸し、暗い所に置いて光り出すのを待った。何か聞きかじったのだろうが、なんであんな方法を取ったのか記憶にない。今思うと与太話を信じやすいのはどっちだ、という話だが、うんともすんとも光ることはなかった。それからは連中に見つからないようコソコソする私であったが、今の子供と違って追いつめるようなことはしない。見て見ぬふりをし、むしろ連中のほうが、あの約束をなかったことにするにはどうしたらいいか、と上級生を調停役に事なきを得た。

HP

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