明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



墨で描こうと考えているヒトダマは、多分使った筆が良くない。おそらくこういう筆が良いというのはイメージの中にあるので探すことにする。 陶芸をやっていた頃、たとえば面相筆で呉須を線描きする場合、水分を吸ってしまう素焼きの下地に滑らかに描くため、ふのりを混ぜたり、お茶を腐らせた物を混ぜた記憶がある。それを混ぜればヒュードロドロと、滑らかに尾を引くヒトダマが描けるのではないだろうか。 そういえば『貝の穴に河童の居る事』(風濤社)で河童を登場させた時、泉鏡花は病的な潔癖性のくせに、書く分には大丈夫とばかりに、“べとべとと生臭い”と書いている。私は常に作者に喜んでもらおうと心がけて制作しているので、ばい菌恐怖症の鏡花が最も恐れたハエをサービスで河童にとまらせてあげた。そして河童のべとべとを演出するため、何に使用するのか定かではないが、ヌルヌルしたローションを通販で購入した。使用目的が判らないので未だに残っている。あれを墨に混ぜても良いだろう。その方法で描いたとしても、発表の際に質問されたら「墨にふのりを混ぜた」。というけれども。
HP

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