明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



三島の顔は左右非対称である。記憶違いであったら申し訳ないが、本人が便所のスリッパだか下駄のようといっていた。しかし多少曲がった顔、特に顎のせいで、常に歯を食いしばっているような、意を決しているようなニュアンスが醸し出されている。そんなことを考えながら縄で縛られている三島を制作している。作りながら、縛る縄はリアルな麻縄ではなく、ちょっと芝居がかった、太めの真っ白な縄が良いかな、と思う。現場には白縫姫と数人の腰元しかいない訳だが、それでもただグルグル巻きではなく、やはり芝居がかった、お白洲の罪人のような縛り方で、主君を売った裏切り者感を出したい気もする。何しろ私の眉間にレンズを当てる念写なのであるから、あくまで私がルールブックである。 上手い嘘を付くにはホントを混ぜるのがコツである。幼稚園児の私が、台風の日に佃の渡し船の絵を描いていて、母が止めるのも聞かず、マンホールの蓋の東京都のマークを確認しに行ったのも、煙突の東京都のマークはリアルにしたかったからだろう。そういう意味では、三島ご自慢の腹筋が、その顔同様左右非対象のところはちゃんとしたい。そしてある誰かがそれに気付き、こいついい加減なことばっかりやっているようで、妙なところは見ていやがる。なんて感心しているところを想像し、一人ニヤける訳である。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )