三島をモチーフにした作品は、ふげん社のおかげでやり尽くすことができそうである。三島に関しては最初からこれ以外に、やりたいことは何一つとしてない。 実は一つイメージしていた作品がなくはなかった。サーカスという小品で、サーカスの少年と少女。団長の企みで少年は落馬して死ぬ。三島の好物の王子の死である。何年か前から、相手の綱渡り芸人の少女役を探していたが、乱歩の目羅博士の不思議な殺人で、友人を月光の下、首を吊らせてビルにぶら下げたことがあるので、綱渡りの少女を下から撮ることも可能であろう。その人選も難航したし、サーカスは撮影禁止だったりして、どうデッ上げるか、考えてはいた。しかしここまで来ると、どうも弱い気がして二の足を踏んでいた。やり残した、と後悔しやしないか、という気分があったが、ここへ来て、愛の処刑の新たな構想が湧いて、だったらこちらの方が収まりが良い。しかも細かなことは描かず象徴的な絵にしよう、と。この作品は、自身を想定したであろう、毛深く逞しい体育教師と少年しか登場人物はいない。今になれば、切腹をそそのかし、その苦悶の表情に、先生のその顔か見たかったんだ、としがみつく少年こそ三島自身であったろう。以前も書いたが、一人身近に美少年がいたものだから、考えたことは、あったが、作中では美少年風ではあるが、三島が好きなのは、全く違って、文学とは無縁で、逞しい、ヤクザや兵隊や、汚穢屋や、神輿を担ぐ若者である。 ところがつい最近のことなのだが、イメージが浮かび、愛の処刑がラインナップに加わり、後は割腹中の三島を配すれば完成である。サーカスは好きな作品ではあったけれど、愛の処刑が加わるのであれば、話が違ってくる。愛の処刑では教師が割腹するので、割腹する三島がそのまま使えてメデタシでもある。
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