夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「ソラニン」

2010年04月17日 22時30分21秒 | Weblog
 『ソラニン』とは、ジャガイモの芽にある毒のことだ。『ジャガイモの芽は有毒物です。調理をするときは取りましょう』と、家庭科で学んだ。映画の冒頭は、宮崎あおい演じる芽衣子が、自室のテーブルにジャガイモを積み重ねるところから始まる。ところが、徹夜明けのカレ・種田が帰宅し、集中力が切れてしまった芽衣子は、積み重ねたジャガイモを崩してしまう。
 “恋がしたくなる”とか“バンドがしたくなる”とかと、この映画の主人公たちの年齢に近い世代の人は思うかもしれないけれど、この映画は、一つの夢が破れてもやり直せる。一つの芽は取られてもまたやり直せばいい、ということだ。それを暗示するのが、この冒頭シーンということになるだろう。誰もが日常に起こりうる悩みを繊細に描いた青春群像劇。  
 芽衣子は、小さな会社の社員。しかし 、雑用ばかりの仕事に価値が見い出せず、会社をやめてしまう。大学時代に軽音のサークルで知り合った種田と同棲はしているが、種田はフリーターで、今は趣味で大学のサークル仲間だった者たちと音楽を楽しむにとどまっている。
 だが、芽衣子にはっぱをかけられたこともあり、種田はあきらめかけた音楽への思いを紡ぐ。新曲の『ソラニン』をレコード会社へ送るメンバーたちだが、反応はないまま時が過ぎる。そして、種田が交通事故に遭う。呆然とし、意欲がなくなった芽衣子だが…。
 夢を追う若者たちも、いつかその夢をあきらめないといけないことがある。絶望感にさいなまれ、現実に直面することがある。だが、明日へ向かわないといけないものなのである。
 芽衣子を演じるのは宮崎あおい。彼女自身は、実生活では既に結婚しているけれど、年齢的には青春群像劇を演じてもおかしくない世代だ。今や老若男女が知る“国民的女優”となったが、テレビ女優ではなく、映画女優だと感じる。ラストのライブシーンの歌は、上手くて素晴らしいとは言えないけれど、下手で不器用だけど気持ちで歌うという役柄と重なり合い、引き込まれ感動を呼ぶ。
 芽衣子の恋人には今注目株の高良健吾。共演はほかに、桐谷健太、近藤洋一(サンボマスター)、伊藤歩など。浅野いにおの人気コミックの映画化である。