冒頭がアニメから始まり、もしかして劇場を間違えた??と焦った。良かった、間違えたと思って座席を立たなくて(笑)
ここで見る劇中アニメを語る主人公が日常の楽しさを表現しているので、物語の最後までお忘れなきよう。
コロナ禍で公開が一年ほど延期となった。
田島列島のコミックを『南極料理人』『横道世之介』の沖田修一監督が映像化。
水泳部の朔田美波は練習中に偶然見かけたあるものがきっかけで、書道部のもじくんと意気投合する。
もじくんの実家は代々続く書道家で彼は跡継ぎだった。美波が彼の家を訪れると、そこであるものを発見する。それは、自分が幼いころに行方不明となった実の父・藁谷友充の手がかりだった。
父を探したい…そう話す美波にもじくんは、探偵をしていたことがあるという兄の明大に引き合わせる。女性のような見た目とふるまいをする明大に驚きつつも、受け入れ、美波は協力を仰ぐ。
そして、明大はあっさり藁谷を見つけだし、美波は家族に内緒で会いにいくことに…。
美波を演じるのは上白石萌歌。人気ドラマ「義母と娘のブルース」でも天真爛漫な役が合っていたし、今作もうまく演じていた。高校生の役に対して、変に肩に力が入っていない感じがいいと思う。水泳選手の役は大河ドラマ「いだてん」(平泳ぎ)、「3年A組ー今から皆さんは、人質ですー」(クロール)に続いて今作は背泳ぎとなっている。何気に役作りは大変だったと思うが・・縁ですな。
物語の途中から、順撮りになっているので、上白石が徐々に日焼けしていっているというのがリアル。ひと夏の思い出としてありそうだ。
もじくんを演じるのは、『町田くんの世界』で映画デビューし、今年はドラマ「ドラゴン桜」で注目を浴びた細田佳央太。この作品では誠実な雰囲気がハマっている。
もじくんの兄・明大を演じるのは千葉雄大。千葉の持つ柔らかと繊細なイメージがぴったりでおかしいくらいだった。
美波の母は上白石と同じ事務所の大先輩・斉藤由貴がつとめた。現在の父を古舘寛治。実の父を豊川悦司が演じている。
現家族の場面は幸せが溢れていて、本当の父娘がエピソードを積み重ねていくのがほほえましくて、同級生男子との高校生シーンはみずみずしくて。
どこを切り取っても楽しめる。もじくんが美波に会いに行こうと走り出す場面は、流れる曲があの月曜日にやっていた有名恋愛ドラマに似ていて、〝やりおった〟と心で突っ込み。
何より豊川悦司が実に楽しそうだったのが印象的だ。
さらに違う視点では、水泳部の親友との別れの挨拶が独特。わかる人には〝おー、なるほど〟となるであろう。上白石萌歌は、歌手としても活動中である。その時の名前は?