この作品を観ると決めていたのは脚本が坂元裕二だから。今や、世界で有名になって
しまった是枝裕和監督作品ではあるのだが、まずは坂元裕二に。
カンヌ映画祭では、脚本賞とLGBTなどを扱った作品に与えられるクィア・パルム賞の
2冠を達成している。
湖のあると街で起きた雑居ビル火災。高台の一軒家からシングルマザー(安藤サクラ)
と11歳の一人息子(黒川想矢)がそれを見下ろしていると「ブタの脳を移植した人間
は、人間?それともブタ?」と聞いてくる。不思議に思う母だが、その後もスニーカ
ーが片方がなくなっていたり、洗おうとした水筒から土が出てきたりと、戸惑うばか
り。そしてある夜、帰宅せずに山中にいる息子を連れて帰ろうとしたら、助手席から
飛び出しけがをしてしまう。「僕の脳はブタの脳と入れ替わっている」という。息子
を問い詰めるとそれは、担任に言われた!とのこと。母は、学校に乗り込む。
だが、孫を車の事故で亡くしてしまったばかりの校長(田中裕子)は、どこか上の空
でつかみどころがなく。
担任(永山瑛太)は火災のあったビルのガールズバーに通っていたとウワサされてい
て、渋々謝罪するも、途中で飴をなめて始め「息子さんイジメてますよ」と衝撃発言。
そのイジメているとされる同級生(柊木陽太)は「先生が怖い」言ってしまったから、
新聞のネタになってしまう…と。
ところが…今度は火災のあった日の夜に話は戻り、担任目線の展開に。その夜、担任
は恋人(高畑充希)と一緒にいたことが明かされていく。そうすると、担任は学校で
は責任感の強い教師であることがわかり、むしろ、学校での様子を知らず文句を言っ
てくる母の方がモンスターに思える。
そして、今度は息子と同級生が軸に。ここから先は、怪物とはなんぞや?を観客に問
いかけながら話が進む。それぞれの視点で見る一つの“事件”。カンヌでLGBT絡みの賞
をなぜ受賞したかは、薄々気づくのだが、終盤になるまでじっくり鑑賞を。
スッキリしない面はある、出演者はみんなが怪物だし、正解もない。うーーーん、と
溜息一つ。そこに流れてくる坂本龍一の音楽。ぜひ最後まで聞いて物語を回想してほ
しい。
出演はほかに、角田晃広、中村獅童など。
忘れないように追い書きしておくが、冒頭に「生まれ変わったら何になりたい?」と
いう息子のセリフがあり、いくつか候補が上がる。これって“ブラックアップライフ”?
人生何回目?と心で突っ込んだのは当方だけではないと思う。