主演は佐藤健と長澤まさみ。そしてタイトルを聞くと一つのストーリー
が想像できてしまう。あれがこうなって、こうなるよね。で、立ち上がっ
て前向きに進んでいく選択をするであろう、と。が、そこはひとひねり。
原作を知らないでいくと、物語の回収方法に驚く。
四月。精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人・伊与田春
(森七菜)から手紙が届く。
「あのときわたしには、自分よりも大切な人がいた。それが、永遠に続く
ものだと信じていた」
“天空の鏡”と呼ばれるウユニ塩湖やプラハ、アイスランドから届く手紙。
そこには、10年前の恋の記憶が書かれていた。
また、藤代は時を同じくして婚約者の坂本弥生(長澤まさみ)との結婚
準備を進めていた。だが、『愛を終わらせない方法、それは何でしょう』
との言葉を残し、姿を消してしまう。
春はなぜ手紙を書いて送ってきたのか、弥生はどこへ行ったのか、その
二つの謎はやがて一つに繋がる。
精神科医を演じる佐藤健。「今日はどうされました?」と白衣姿で言わ
れると、あの恋愛ドラマが頭をかすめてしまう。恋人の春の父親・衛(竹
野内豊)と対峙する時には、あの心和む親子のドラマを思う。が、もっと
恐ろしいのは「高校教師」まで遡って思い出してしまうこと。そこに怪し
い父娘関係を感じ取ってしまう。←ちなみにすべてTBS系ドラマ
愛し方はさまざま。その場所から動くことができないこともある。長澤
まさみ演じる弥生もまた心に傷を抱えて、深い底にいる。それぞれが自分
と向き合い、結論を出していく。見つめ直したその先にあるものとは?
見事な大団円で物語は収まるのだが、壮大で超絶なモラトリアム人間の
物語だ!と心で叫んでいた。森七菜がキャストの中では若すぎる気もした
が、間違いなく物語のキーパーソン。海外のシーンが美しく、魅力的だ。
藤代と春の出会いは、春が大学で写真部に入部したことから。フィルムカ
メラと撮影、そして現像。デジタルカメラが主流になってしまった今日、
このフィルムカメラと現像にワクワクする。うまく撮れているのか、そう
ではないのかハラハラドキドキ。いいなあ、ここ。暗室で現像液を使うこ
の作業はフィルムカメラ好きの憧れ。プリント(紙焼きという言葉もいに
しえ)はこれでなくては!と思うのはもう古いかもだが。
出演は他に、仲野太賀、中島歩、ともさかりえ。そして、今「不適切に
もほどがある」での役柄が大注目の河合優実が長澤まさみの妹を務める。
監督は、米津玄師「LEMON」や宇多田ヒカル「Gold~また逢う日まで~」
のミュージックビデオを演出してきた山田智和。