2023年、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドール賞を受賞した
作品。長編4作目となるフランスのジャスティーヌ・トリエが監督を務めた。
人里離れた雪山の山荘で、視覚障害のある11歳の少年が血を流して倒れている父親・ヴィン
セント(スワン・アルロー)を発見する。悲鳴を聞いた母親のサンドラ(サンドラ・ヒューラ
ー)が救助を要請するが父親はすでに息絶えていた。当初は転落事故として扱われていたが、
不審な点も多く、殺人事件としての捜査となり、ついに妻の人気小説家であるサンドラが容疑
者となり裁判が始まる。
息子に無実の罪を伝えるサンドラだが、事件の真相が暴かれる中で、本当の夫婦仲や隠され
た秘密、嘘が明らかになっていく。登場人物の数だけ視点が変わり、真実は何なのかを観る者
に考えさせていく。
冒頭のシーンのみが事件性を表すほかは、ほぼ法廷劇となるヒューマンサスペンス。この法廷
劇が二転三転。事件には関係ないことをネチネチ突かれたり、劇場型で裁判が進むなど、やっぱ
り当事者になるのは嫌だとの気持ちが湧く。物語としては、最後にあとひとひねりがあるかも?
と思いつつ鑑賞してしまうであろう。
☆鑑賞当日の3月11日は第96回アカデミー賞の発表がされていた。最優秀脚本賞を受賞してか
らの鑑賞となったが、当方が座席指定をしたときより、座席が埋まっていた。長い上映時間で、
法廷シーンがメインでありながらも飽きさせないその会話劇は、まさに最優秀脚本にピッタリだ。