夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『ハーモニー 心をつなぐ歌』(DVD)

2011年09月07日 17時22分08秒 | Weblog
 『シュリ』で、観客に強烈な存在感を印象づけたキム・ユンジン。アメリカに拠点を置く彼女が、韓国らしい強い母を演じる。この映画で描かれてるのは、母から子への無償の愛と、人間の尊厳とは何か、死刑とは何かということ。深いテーマについて考えさせられることになるだろう。韓国映画史上初めて、チュンジュ女子刑務所から許可を得て撮影を行った。2010年韓国で公開され、300万人が涙したと言われている。なんだかんだ言っても、キム・ユンジンの演技が素晴らしい。特筆ものなのである。
 冒頭は女囚の出産シーン。これが最後まで重い意味を持つことになる。韓国の女子刑務所では、女囚が出産した場合、18ヶ月はともに過ごすことができる。そのあとは親戚に預けるか養子縁組みをするかしかない。それがわかった上での刑務所での生活となる。
 お腹の子を守るため、DVの夫を殺してしまったジョンへ。懲役10年の刑を言い渡される。ジョンへも、同室の女囚たちも重罪犯。女性が犯す罪のほとんどには意味があると言われるが、ここにいる女囚たちもそうだ。浮気夫とその相手を車でひき殺したムノク、夫と子ども二人の生活を守るため詐欺を働いたファジャなど。重罪ではあるが、凶悪ではない罪…。
 ある日、ジョンへはコーラス隊を作りたいと所長に持ちかける。だが、そういうジョンへは音痴。ジョンへの子どもミヌも、ジョンへの子守歌を聞くと泣いてしまうほどだ。
 だが、ジョンへは根気強くメンバーを集め、かつて音楽の先生をしていたムノクに指導を頼むこととなった。何かあるとけんかを始めてしまうメンバーと音痴のジョンへのせいで、なかなかうまく練習が進まない中、仲間意識も生まれてくる。ジョンへは、合唱団を成功させて、ミヌとの特別外泊の権利を得るという目標を立てていた。
 そして、刑務所内での合唱団の御披露目で、合唱団は大成功を治める。成功のご褒美に特別外泊の許可がジョンへに与えられる。つまり、それはミヌとの別れの時でもあった。
 4年後、ソウルで行われる市民コーラス大会に特別参加することになったジョンへたち。ここで、彼女たちは社会の光と影を知ることになる。だが、ジョンへたちの合唱団は観客を魅了するまでになっていた。
 そこに13年ぶりの死刑執行の命令が下る。最近の凶悪犯罪への見せしめのためだ。そして、刑務官がジョンヘたちの部屋へやってきて…。
 罪とは何だろう、ラストになるほど、自然と涙が溢れてくる。泣いて下さい。出演はキム・ユンジンの他に、死刑囚のムノクには大ベテランのナ・ムニ。義父の性的虐待から逃れようとして義父を殺してしまったユミに『TSUNAMI-ツナミ-』のカン・イェウォン。合唱団ではピアノを引く担当になる刑務官に、「太王四神記」のイ・ダヒ。詐欺罪を働いた女囚・ファジャには「シティーホール」のチョン・スヨン。監督は『デュエリスト』や『TSUNAMI-ツナミ-』で助監督をつとめ、今作が長編デビューとなるカン・テギュ。

『神様のカルテ』

2011年09月07日 10時35分48秒 | Weblog
 「神様のカルテ」は、全国の書店員が選ぶ“本屋大賞”に史上初のシリーズ作品2年連続でノミネートされた。現役医者でもある夏川草介のデビュー小説である。
 松本の民間病院で35時間勤務という激務の中、働き続ける内科医・栗原一止。ある日、上司の薦めで大学病院の研修に参加する。そこで診察にもあたった一止は、ガン患者の安曇と出会う。
 研修後、また日々の暮らしに忙殺される中で、ある末期ガンの患者が一止の下にやってくる。命を救うこととは?人を救うこととは?一止は、自分と向き合うこととなる。
 『神様のカルテ』というのは医者目線での神様のカルテではなく、患者の心で受け取る神様のカルテ。すなわち、患者が、自分を担当している医師への評価なのだ。じんわりと心を打つ、いい映画である。全体的な流れも良く、泣きポイントもある。それぞれの人たちの気づきと旅立ちがテーマでもあるだろう。
 ただ、おそれずに言うならば、実に惜しい。主人公・一止の役を櫻井翔ありき、でキャスティングしたのかもしれないが、一本調子な台詞回しが映画の出来映えを一枚下げている。映画は総合評価されるものであるならば、実に惜しいとしかいいようがない。脇を実力派が固めていて実力どおりの、演技力を発揮している分、一人の演技が目立ってしまう。
 一方で、加賀まりこの演技には胸が締め付けられる。人としてどう生きて、死んでいくのか、難題を提示されているようだ。一止へ宛てた手紙を読み上げる場面はクライマックスである。
 配役は、殺人的スケジュールで診察に当たる医者・栗原一止に櫻井翔。一止に寄り添い、暖かく見守る妻・榛名に宮崎あおい。脇を固めるのは、末期ガン患者に加賀まりこ。一止の上司に柄本明、一止の同期で同僚の看護師に池脇千鶴。
 監督は、『白夜行』『洋菓子店コアンドル』などで注目を集める若手監督、深川栄洋。映像美にこだわる監督の姿勢が今作にも表れている。