長野の山荘で暮らす作家のツトム(沢田研二)。彼は子どものころにお寺で小僧をしていたが、
13歳のときに修行から抜け出した経験がある。
今は、山の実やきのこを採り、畑で野菜も育て、自ら料理をしている。
季節の移ろいを感じながら、原稿に向き合う生活。そこに、食いしん坊の恋人で編集者の真
知子(松たか子)が東京から時折訪ねてくる。真知子と旬のものを食べる時間はツトムの特別
に楽しい時間だ。
そんな、悠々自適に暮らすツトムだが、13年前に亡くした妻の遺骨を墓に収められずにいた。
1978年に水上勉が記した料理エッセイを、中江裕司監督が映像化した。
出演は、ツトムの亡き妻の母に奈良岡朋子、義兄弟夫婦に尾美としのりと西田尚美。他に、
火野正平、檀ふみなど。
土の中にある野菜ばかりの料理が出てくるのに、ものすごいごちそう。
季節にできる野菜をそのときに、“旬”を食べる。これほどの贅沢はない!
野菜の種類も知ることができるし、できている場所も興味深い。年を重ねてきたのに、知
らないといけないことを知らずにきてしまったという思いが沸いてくる。
丁寧に洗い、心をこめて料理する。その料理たちに見入る。作りたい、でも苦手。
そんな思いで反省しつつ、せめて大切に端から端まで大事に食したい。
劇中の料理の多くは土井善晴が料理監修し、沢田研二が自ら作っている。
松たか子の豪快な食べっぷりもいい。真知子のお皿に料理を取り分けるツトムの沢田研二
が素敵だ。
また、二人が主に団らんする居間の窓。これが額縁のようで、その額縁の写真にはめられ
たような景色が、四季の変化とともに圧巻の美しさである。
ぜひ、旬の料理と旬の景色を堪能してほしい。
本当は不便できついのだろうけれど、都会に住むと、この生活に憧れてしまう。
※全くの余談だが、最近まで若いころの沢田研二主演ドラマ「悪魔のようなあいつ」
のDVDを見ていた。眉目秀麗な沢田研二がそこにはいたのだが、食事を節制するだけして
徹底してその役を演じていったと思う。そのころを知っていると、昔のジュリーはどこに
いった?
と思うかもしれないが、年相応の体型になってはいてもそれはそれでいいのでは?