heはもちろん「彼」であるが、状況によっては自分(I)のことを指して使われることがある。
今日のGetUpEnglishはこの問題を考えてみよう。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』(Thor: Ragnarok, 2017)にこの表現があった。
惑星サカールに流れ着いたソーは、そこで行われる兵士たちのバトルロイヤルに参加させられることになるが、チャンピオンとしてソーの前に現れたのは、行方不明になっていたハルクだった。
HULK: Huuullllkkkk!
THOR: Hey! We know each other! He’s a friend from work.
—THOR: RAGNAROK
ハルク ハーーーールクーーー!
ソー おい、聞け! おれたち仲間だ。一緒に仕事してたんだ。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』
ジム・マッキャン (著), エリック・ピアソン (著), タイカ・ワイティティ (著), 上杉 隼人 (翻訳)好評発売中。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190775
●Extra Point
上は普通のheの使い方がだが、世界の名作Mark TwainのAdventures of Huckleberry Finn(1884)のChapter IIにこの表現があった。
◎Extra Example
“Here’s Huck Finn, he hain’t got no family; what you going to do ’bout him?”
“Well, hain’t he got a father?” says Tom Sawyer.
“Yes, he’s got a father, but you can’t never find him these days. He used to lay drunk with the hogs in the tanyard, but he hain’t been seen in these parts for a year or more.”
これはトム・ソーヤ―盗賊団に入る者は、団を裏切った者は自分だけでなく、家族も殺害されるという掟があるが、ハック・フィンは家族がいない。でも、ハックは仲間にいれてほしくて、自分のことをYes, he’s got a father,...というのだ。
訳は柴田元幸『ハックルベリー・フィンの冒けん』を参考にしてほしい。
http://books.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-49201-4.html
英語はどれだけ勉強しても毎回新しい発見があるし、だからこそ長くつづけられるのかもしれない。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』
ジム・マッキャン (著), エリック・ピアソン (著), タイカ・ワイティティ (著), 上杉 隼人 (翻訳)好評発売中。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190775
本文より
「ほら、言いなさい。おまえはいったい何の神だった?」
ソーの意識はふたたびアスガルドに戻っていた。右目が見えない彼の喉元をつかんで、ヘラが尋ねる。
ビリビリビリビリ……。剣におさえられていたその右腕がバチバチと青い光を発する。ヘラは驚いてそちらに目を向ける。ソーの左目も同じ青い光を発する。ヘラは今度は空を見上げた。そして「うわあ!」と大声を上げる。
ビリビリビリビリ……ダーーーーン! 強力な雷が二人のいるアスガルドの宮殿に落下した! 虹の橋の上にいた誰もがその強力な光を見上がる。
バキバキ! ドーン! ヘラの体は吹き飛ばされ、はるか下に落ちていった。
ビリビリビリビリ……。雷の光に包まれたソーが虹の橋に降りてくる。ヘラの兵士たちは寄り固まって迎えうつ。
ダーーーン! バリバリ……! 雷神(ゴッド・オブ・サンダー)が舞い降りた。その目も、体も、強力な青白い光を発している。襲いかかる兵士たちを、光を放つ体を回転させて一気に蹴散らす。まさしく光のボルトと化したソーをもはや止めることができない。強力なパンチとキックを繰り出し、敵を次々になぎ倒していく。ある兵士の体ははるか遠くに投げ飛ばす。