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日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

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In the Woods Beneath the Cherry Blossoms in Full Bloom by Ango Sakaguchi

2020-05-17 02:05:16 | A

  坂口安吾の『桜の森の満開の下』は大好きな小説だ。
 文章が美しく、神秘的な物語はぐいぐい読ませる。
 これはたくさんの英訳があるが、最後の部分は次のように訳せると思う(坂口安吾、ロジャー・パルバース訳『英語で読む 桜の森の満開の下』[ちくま文庫、絶版]を参照した)。

 桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分りません。あるいは「孤独」というものであったかも知れません。なぜなら、男はもはや孤独を怖れる必要がなかったのです。彼自らが孤独自体でありました。
 彼は始めて四方を見廻しました。頭上に花がありました。その下にひっそりと無限の虚空がみちていました。ひそひそと花が降ります。それだけのことです。外には何の秘密もないのでした。
 ほど経て彼はただ一つのなまあたたかな何物かを感じました。そしてそれが彼自身の胸の悲しみであることに気がつきました。花と虚空の冴えた冷めたさにつつまれて、ほのあたたかいふくらみが、すこしずつ分りかけてくるのでした。
 彼は女の顔の上の花びらをとってやろうとしました。彼の手が女の顔にとどこうとした時に、何か変ったことが起ったように思われました。すると、彼の手の下には降りつもった花びらばかりで、女の姿は掻き消えてただ幾つかの花びらになっていました。そして、その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延した時にはもはや消えていました。あとに花びらと、冷めたい虚空がはりつめているばかりでした。

No one living today can fathom the mystery of the space in the woods beneath the cherry blossoms in full bloom.  It might be what we know as solitude behind the mystery.  After all,the man no longer had his solitude to fear. He was solitude personified.
 He looked all around him now. Overhead hung cherry blossoms.  The space below them was nothing but a silent and limitless void...the petals falling in the hush. That was all. There were no other mysteries here.
 After some time he felt just only something lukewarm.  And he realized that it was sadness coming from his own heart.  Little by little he sensed in himself a warm swelling as he was being enveloped by the biting cold of the flowers and the void.
 He tried to brush away the petals on the woman's face. But something very strange seemed to occur when his hand had almost reached her face. All that was below his hand was a sheet of cherry blossoms.  The woman's figure had vanished into a blanket of fallen petals.
His body, as well as the outstretched hand pushing the petals away, had already disappeared. All that was left to fill the space were petals and freezing emptiness.

 桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分りません。あるいは「孤独」というものであったかも知れません。なぜなら、男はもはや孤独を怖れる必要がなかったのです。彼自らが孤独自体でありました。

この「なぜなら」のつながりがはっきりしないが、

 桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分りません。あるいは「孤独」というものであったかも知れません。男はもはや孤独を怖れる必要がありませんでした。彼自らが孤独自体でありました。

くらいに解して、無理にbecauseやforなどの理由を表す接続詞を使う必要もないと思う。

 日本文学の翻訳も少しずつ試みているが、まずは日本人が訳して、信頼できるネイティブ・スピーカーに念入りにチェックしてもらうというのが理想的な日英翻訳かもしれない。坂口安吾であれば、「夜長姫と耳男」(1953)をまずは英語にしてみたい。

 

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『スカイウォーカーの夜明け』

2020-05-17 01:31:37 | Star Wars

『スター・ウォーズ』エピソードI~VI(講談社文庫)につづいて、『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』(ディズニーストーリーブック)、そして最新作『スカイウォーカーの夜明け』まで、スター・ウォーズ作品を全作翻訳させていただけるのは、翻訳者として身に余る光栄なことです。みなさまにひたすら感謝します。
『スカイウォーカーの夜明け』には映画には登場しないキャラクターや場面もふんだんに出てくるうえに、キャラクターの感情が実にドラマチックに描かれています。
 どうかご期待ください!
 https://starwars.fandom.com/wiki/Star_Wars:_The_Rise_of_Skywalker:_A_Junior_Novel
 May the Force be with you always...
 

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