海上保安庁調査で昨年9月11日の尖閣諸島国有化後、中国公船が台風通過など天候悪化のケースを除いてほぼ連日、日本の領海のすぐ外側にある接続水域での航行を行なう常態化が続いているという。
《警告を無視 領海侵犯20回 「中国船、攻勢強めている」》(MSN産経/2013年1月5日(土)7時55分)
海保巡視船が日本の領海に近づかないよう、警告を発しても、中国公船は「釣魚島は古来より中国固有の領土だ」などと無視、自国領海だとしているから、我が物顔の振舞いということになる。
あるいは日本側の警告に対して「この海域で巡航任務を行っている。魚釣島を含むその他の島は、中国の領土だ」(沖縄タイムズ)と無視。
日本側の警告が相手に通じない警告となっている、始末に負えない状況を窺うことができる。また、通じない警告は相手の行為を我が物顔の行為にさせることになる。
日本側の警告と、その警告を無視した中国側の我が物顔行為――その繰返しだから、いわばイタチごっこが続いていることになる。
尤も中国側からしたら、中国領土としている以上、冷静且つ正当な行為と見做すに違いない。
接続水域の航行のみならず、中国領土だとしていることの示威行為なのだろう、領海侵犯も繰返されている。
11月初旬と12月中旬頃には3日連続で領海侵犯。計、既に20回に達し、さらに中国海洋監視機による領空侵犯へと不法活動を広げていると記事は伝えている。
要するに中国領土であることの示威行為として海から空へ我が物顔行為を拡大させているということなのだろう。
そして今年に入ってからも連日、中国海洋監視機なのか、中国当局の飛行機が日本の正月を祝うためではないことははっきりしているが、日本の領空周辺に設置した「防空識別圏」に進入を繰返しているという。
こうまでも目出度い年の始を目出度くさせなくしている中国側の我が物顔行為が続くようではということなのだろう、日本の偉大なリーダーである安倍晋三が動いた。《首相 中国の飛行機進入で運用見直し指示》(NHK NEWS WEB/2013年1月6日 4時10分)
1月5日、防衛省や海上保安庁の幹部らを首相官邸に呼び、尖閣諸島周辺の警戒監視態勢などについて報告を受けたという。
昨年12月13日(2012年)、中国当局の飛行機が初めて領空侵犯。同下旬には4回に亘って「防空識別圏」に進入、そのたびに自衛隊の戦闘機がスクランブル=緊急発進で応えたと昨年暮れの様子を記事は伝えている。
いわば中国側は釣魚島(=尖閣諸島)は中国領土であることの証明としての示威行為として領海侵犯・領空侵犯、接続水域航行・防空識別圏侵入の我が物顔行為を波状的に繰り広げている。
対して日本側は領空侵犯や防空識別圏進入には自衛隊がスクランブル発進で応え、経済水域航行や領海侵犯には海上保安庁が巡視船を使って警告を発する、その繰返しを中国側と日本側はそれぞれの自国領土行為としているということである。
まさにイタチごっこの様相を呈しているが、日本が「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土」だとし、中国側が「釣魚島は古来より中国固有の領土だ」としている以上、このイタチごっこは永遠の繰返しを予感させることになる。
このような永遠の繰返しを予感させるイタチごっこを断ち切るためには領土問題に決着をつける以外に方法はないはずだ。
いわば中国側に尖閣諸島は日本固有の領土であることを認めさせる以外にない。至って外交問題だということである。
だが、上記記事が伝える我が日本の安倍首相が採った方法は外交問題として解決する方法ではなかった
防衛省や海上保安庁の幹部から報告を受けた〈安倍総理大臣は領空や領海が侵犯されないよう万全の態勢を整える必要があるとして、航空自衛隊の戦闘機や海上保安庁の巡視船の運用の見直しを指示〉したと記事は書いていて、中国側の自国領土だとする示威行為としての我が物顔行為の防御方法を、多分現在に於ける最善の方法と考えてのことだろう、警戒態勢の運用の見直しの採用で済ませた。
果たして自衛隊機や海上保安庁巡視船による領空や領海が侵犯されないよう万全の態勢を整える必要だけで中国側の我が物顔行為を抑えることができるのか、極めて疑問である。
疑問の理由は、「釣魚島は古来より中国固有の領土だ」とする中国側の主張はそのままに放置することになる警戒態勢の運用の見直しだからだ。
この手の方法は外交問題を自衛隊や海上保安庁の警戒態勢の運用の見直しにすり替えたに過ぎない。
尤も安倍首相は民主党政権が採用した「尖閣に領土問題は存在しない」という姿勢の踏襲を宣言している手前、外交問題としないのは当然の措置とも言うことができる。
2012年12月17日自民党本部記者会見。
安倍首相「国際法上も日本は尖閣諸島を所有し、実効支配している。交渉の余地はない」
日本の領土なのだから、中国側と外交問題として交渉するつもりはないとの発言である。
確かに日本が実効支配している。だが、中国による領空侵犯・領海侵犯、あるいは接続水域航行・防空識別圏進入が「釣魚島は古来より中国固有の領土だ」としていることの証明としての示威行為としている以上、警戒態勢の運用の見直しだけで中国側の日本の領土・領空に対する我が物顔行為を止めることができないのは目に見えている。
当然、安倍首相が外交交渉による問題解決の方法を採らないなら、イタチごっこを覚悟しなければならない。
イタチごっこも覚悟できない、外交交渉による問題解決も厭だでは、一国のリーダーとして果たして賢明と言えるのだろうか。