橋下市長の府立高体育科定員増要請は順序が違う

2013-01-25 12:16:03 | Weblog

 大阪市立桜宮高体育科系2科の入試中止問題は普通科定員160人に2科定員120人を加えて280人の定員として普通科試験を行う、120人の試験科目は普通科5科目に対して従来どおりの3科目と体育実技、そして体罰実態調査と教育方針見直し終了後に120人は体育科へと編入の迂回献金並みの迂回経路到達のゴマ化しで片付いたと思っていた。

 ところが、橋下知事が何のためなのか、府立高体育科の定員増を松井一郎知事と府教育委員会に要請したという。《橋下市長が定員増要請=府立高体育科、桜宮高入試中止で-体罰問題》時事ドットコム/2013/01/24-13:47)

 1月24日(2013年)、府側との会議での発言。

 橋下市長「体育科にどうしても行きたい生徒の進路先を確保してもらいたい」

 松井府知事「オール大阪でやらないといけない」

 府教委「前向きに検討したい」

 記事は長谷川恵一市教育委員会委員長の発言も伝えているが、会議に出席していたことになる。〈会議後、記者団に〉と書いてあるが、その発言を伝えている。

 長谷川委員長「普通科を体育コースに近い形にした」

 記事解説。〈市教委としては府側に定員増を求めない考えを示した。〉――

 会議に出席していたなら、なぜ会議中に必要ないと発言しなかったのだろう。

 別の記事を見てみた。《【桜宮高2自殺】橋下市長、松井知事と府立高体育科の定員増を協議》MSN産経/2013.1.24 14:15)

 記事冒頭。〈大阪市立桜宮高校の体育系2科の入試募集中止問題で、橋下徹市長と市教委の長谷川恵一委員長らは24日午前、市役所で松井一郎大阪府知事と府教委の陰山英男委員長らと会談を始めた。受験生の受け皿確保に向けた府立高2校の体育科の定員増について協議している。〉

 長谷川市教委委員長が出席していたなら、府立高体育科定員増要請は市教委委員長の容認のもと行われたことになる。

 府立高2校の体育科とは、〈大塚高(松原市)と摂津高(摂津市)。〉で、〈橋下市長が定員増を要望しているのに対して、松井知事は前向きな考えを示している。大阪市関係者によると、教室などのキャパシティーに余裕がある大塚高体育科で少なくとも40人以上を増員する方向で調整を進めている。〉と解説している。

 但し誰の発言も伝えていない。最後に、〈府教委が同日夕にも府教育委員を集めて会議を開き、対応を協議する予定。〉とのみ伝えている。

 どうも合点がいかないが、色々と矛盾がある。

 先ず第一に、橋下市長の1月17日記者会見発言との矛盾である。

 橋下市長「生きてたら、チャンスはありますよ、いくらでも。そんなのは。生命があれば。

 一度高校の受験の、ここで、あのー、うまく行かなかったからと言って、人生終わりなのですか」――

 受験生が受けることになる入試中止の困難に対して人生に果敢に挑戦する姿勢を求めた。 

 尤も人生に果敢に挑戦する姿勢を求めながら、合併前の状態をそのまま維持する形で普通科に吸収合併させて問題解決とする遣り方もゴマ化しそのものだが、府立高の体育科にまで定員増を要請して受験生を吸収しようとする方法も、人生に果敢に挑戦する姿勢を求めた自身の発言の否定となって、ゴマ化しそのものとなる。

 桜宮高体育科系入試中止は勝利至上主義とそのための体罰指導が生徒のみならず保護者も容認してきた風潮となっていて、その蔓延を一旦断ち切ることを理由としていた。

 1月15日記者会見。

 橋下市長「学校全体がクラブで勝つことを第一にして、多くの保護者も容認してきた。クラブ活動の在り方を変えるなら保護者や生徒の意識も変わってもらわないといけない。このまま入試をすれば、同じ意識で生徒が入ってくる」(毎日jp

 では、府立高体育科に定員増を求めて、桜宮高体育科受験生の進路先とするなら、府立高体育科に於いても勝利至上主義と保護者や生徒までが容認している体罰指導が存在しないことを絶対条件としなければならない。

 大阪府教委は桜宮高の体罰死を受けて、府立高校187校の体罰調査を緊急に行う方針を公表した。《大阪府教委 府立高校で体罰調査へ》NHK NEWS WEB/2013年1月16日 15時12分)

 調査項目――
 
 「生徒に体罰をしたことがある」と自ら申し出た教員数の報告。
 体罰の相談窓口に生徒や保護者から寄せられた相談数の報告。
 各学校配布の体罰防止マニュアルに従って研修を実施した日時の報告。

 報告期限――

 2月5日迄。

 記事。〈いずれも来月5日までに回答するよう各学校側に通知するということです。〉

 生徒全員に体罰有無のアンケート調査をしないのは気になる。果たして正確な調査となるのだろうか。

 陰山英男府教委教育委員長「府立学校ではこれまでも体罰防止の指導を徹底してきたが、今後はさらに児童や生徒の自殺を防ぐ対策を考えていきたい」――

 「府立学校ではこれまでも体罰防止の指導を徹底してきた」からと言って、体罰が皆無とは言い切れない。

 「Wikipedia」によると、陰山氏は2008年10月1日に大阪府教育委員に就任、2012年から委員長に就任している。

 大阪府のHP――《府民の声と府の考え方 公表(詳細)》に体罰を疑う投書が掲載されている。
  
 受付日が2012年5月28日だから、陰山氏が大阪府教育委員に就任してからで、昇進は年度初めの4月からと考えた場合、もしかしたら委員長に昇進してからの投書かも知れない。

 〈詳細情報 件名 府立高校での職員対応について

 府民の声


 府立〇〇高校での出来事です。女性の体育教師は生徒に対し脅しながら授業をします。『3年生にいうたろか!あんたら◇◇部やろ?』と脅しをかけて生徒を押さえつけて授業をするそうです。

 体育の授業は体罰にも思えるほどの内容で、できなければ連帯責任とかこつけ、走らせる、腕立て伏せ等罰をあたえます。

 大阪府の教育はこのような体罰・脅迫をし子育てを支援するのですか?親類の子は通学しなくなりました。

 これが前知事・橋元(ママ)さんの掲げた大阪府の教育ですか?大阪府の教育の現場をもっと調査し公表してください。いくら無償になっても教師がこんな教育態度では意味がありません。

 府の考え方(公表日 2012年7月13日)

 集団行動を通じて生徒は様々なことを学びます。○○高校では社会で求められる規律を学ばせようと全校を挙げて力を注いでいます。今回の件は、授業に遅刻してきた生徒に対して、遅刻は個人だけの問題ではなく、集団全体、今回はクラブ全体に影響することがあると注意喚起するために、ご指摘の内容に類似した発言を行ったものです。

 また、体育授業においてランニングや腕立て伏せ等を行っておりますが、集団行動は全員で行動し、一つのものを完成させるトレーニングとして行っているものであり、指導内容そのものには問題はないと考えております。

 結果的に、会話やことばの表現により誤解を招いたことにつきましては、以後このようなことがないよう、所属長より指導をしております。〉(以上)

 回答にはゴマ化しがある。
 
 投書は「できなければ連帯責任とかこつけ、走らせる、腕立て伏せ等罰をあたえます」と訴えている。対して回答は、「体育授業においてランニングや腕立て伏せ等を行っておりますが、集団行動は全員で行動し、一つのものを完成させるトレーニングとして行っているものであり、指導内容そのものには問題はないと考えております」――

 懲罰を連帯責任で全員に負わす集団行動を一般的な体育授業での集団行動と同じだと見せかけるゴマ化しである。両者は全然別物である。前者はできない生徒に対する懲罰を全員の生徒に等しく負わせる集団行動であって、江戸時代の五人組の制度と何ら変わらない。

 後者は体力向上や技術習得を目的とした体育授業を生徒全員で行なう集団行動であって、懲罰の類とは一切関係ない。前者を後者と同じだとする狡猾な言抜けに過ぎない。

 このような連帯責任形式の懲罰はできる生徒にも懲罰を負担させる不公平が生じせしめる彼らの肉体的苦痛に感じる理不尽によってできない生徒に対する不満、あるいは恨みをプレッシャーとさせる懲罰をも含んでいて、このような肉体的と心理的の二重の懲罰によってできない生徒に言うことを聞かせようとするもので、決して正当な指導とは言えず、過度なものとなれば、できない生徒ばかりか、できる生徒に対しても体罰に相当することになる。

 だが、どの程度走らせたのか、何回腕立て伏せを強制したのか、過度か正常かを判断する調査材料の提示がない。不公平そのものの回答となっている。

 また、投書は「『3年生にいうたろか!あんたら◇◇部やろ?』と脅しをかけて生徒を押さえつけて授業をするそうです」と訴えていることも、3年生という上級生が下級生に対して持っている威圧性を借りて、間接的に下級生である生徒を支配しようと意志した発言であって、3年生と下級生の間に威圧性そのものが存在すること自体が正常な教育空間と言えないし、それを学校教師が利用すること自体も、正常な教育指導とは言えない。

 このことを一切問題とせずに、「授業に遅刻してきた生徒に対して、遅刻は個人だけの問題ではなく、集団全体、今回はクラブ全体に影響することがあると注意喚起するために、ご指摘の内容に類似した発言を行ったものです」とのみ受け止めることのできる感覚は異常としか言いようがない。

 要するに、「集団全体、今回はクラブ全体に影響することがあると注意喚起するために」は3年生の威圧性を借りて、「3年生にいうたろか!あんたら◇◇部やろ?」と威す、あるいは類似した発言を口から発しすことも教育的指導として許されることとして認めたことになる。 

 問題はこの調査が生徒や部活部員全体に対する聞き取り調査を含むかである。報告の書きぶりをみると、体育女性教師の視点からの回答のみで成り立っていて、生徒の視点からの回答がどこにもない。

 これでは桜宮高体罰死問題で、2011年9月に市役所に「体罰を行っている」という情報が寄せられていながら、生徒や部活部員に対する聞き取りは行わず、行なっていると指摘された体育部部活顧問のみの聞き取りで済ませて、本人の否定のみを以ってして体罰はないと判断、結果的に体罰指導を許すことになって高2男子の自殺を招いた調査と同じ構造と言える。

 当然、陰山氏が言っている、「府立学校ではこれまでも体罰防止の指導を徹底してきた」からと言って体罰が存在しない根拠とはならない。

 ということなら、府立高校体罰調査の2月5日の回答を待ち、その報告内容を検証して、体罰指導も勝利至上主義も蔓延していないこと、生徒も保護者も容認する風潮にないことを確かめないうちに橋下市長が府立高体育科の定員増員を要請するのは市長の今までの言動から言って、順序が違うはずだし、言動不一致と言わざるを得ない。

 尤もその時々で発言を変える政治家である。順序が違ったとしても、言動不一致であってもどうって言うことはないのかもしれない。

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