日本経済回復の我が希望の星、安倍晋三が1月4日、自民党の額賀元財務相を韓国に首相特使として派遣、パク・クネ次期大統領と会談、安倍親書を手渡し、キム・ソンファン外交通商相とも会談、イ・ミョンバク大統領の2012年8月10日の竹島上陸とその上陸を歴史認識に絡めた姿勢が原因となってこじれた日韓関係の改善のスタートとするらしい。
《安倍首相 日韓関係の改善に意欲》(NHK NEWS WEB/2013年1月1日 15時12分)
出発に先立って安倍首相は額賀氏を1月1日午後、東京都内の安倍渋谷区私邸に招き、会談。
安倍首相「韓国は民主主義や市場主義などの価値観を日本と共有する、最も重要な隣国だ。両国とも新しい政権がスタートすることになり、お互いにいい船出にしたい。しっかりと私の思いを伝えてきてほしい」
額賀氏「これまでの若干ぎくしゃくした日韓関係を立て直していくために、議員外交の立場から環境を整えていきたい。安倍総理大臣の思いをしっかりと伝えたい」
安倍晋三の「韓国は民主主義や市場主義などの価値観を日本と共有する、最も重要な隣国だ」とする認識は誰が見ても間違っていない、正しいと大絶賛できる。
但し日韓関係がここに来て悪化した原因はあくまでも李明博韓国大統領が竹島上陸の足跡によって、日本が竹島を日本固有の領土だとしていることに対して竹島を改めて韓国領だと宣言したことと、天皇訪韓の場合は独立運動で犠牲となった韓国人に心からの謝罪を要求した歴史認識だったはずだ。
と言うことは、「韓国は民主主義や市場主義などの価値観を日本と共有」ということだけでは関係改善の基準とすることはできないことを物語っている。
もしこのことのみを関係改善の基準とするなら、「民主主義や市場主義などの価値観」が韓国と日本の前々からの共有であったことと矛盾することになる。
いわば真の恒久的な関係改善の頼るべき基準は価値感を従来から共有している「民主主義や市場主義など」ではなく、あくまでも価値感を非共有としている竹島の領有権の帰趨と歴史認識の帰趨ということになる。
もし安倍晋三が日本側から韓国に対して「民主主義や市場主義などの価値観」の日韓共有のみで関係改善を図った場合、竹島を韓国領のままで棚上げすることになり、歴史認識に関しても触れない形としなければならなくなる。
このことを言い替えるなら、竹島は韓国固有の領土だとする韓国側の主張と韓国側が主張する歴史認識に触れないことによって「民主主義や市場主義などの価値観」の共有を関係改善の基準とし得ることになる。
この方法による関係改善は結果的にはある意味、竹島の韓国領有と韓国側の歴史認識を認めることになる。少なくとも当座は認めることになる。
だとすると、2012年衆院選政策集で2月22日を「竹島の日」として政府主催の祝典開催を公約としていながら、先送りしたのは日本側からしたら竹島領有権問題と歴史認識問題を猶予状態に置いた関係改善優先の前提として用意し、自ら破ることとなった公約違反だと見做すことができる。
だが、このような韓国側の主張に添わせる形の竹島問題と歴史認識を棚上げした関係改善はその手の棚上げを続ける限りは持続性を持ち得るが、安倍首相のホンネは棚上げを続ける気持はなく、その場凌ぎの関係改善となる危険性を抱えることになる。
安倍晋三が言うように「お互いにいい船出」となる保証とは決してならない。
このことは12月30日の安倍晋三に対する産経新聞との単独インタビューが証明してくれる。《【安倍首相インタビュー】詳報 TPP、集団的自衛権、村山談話、憲法改正…》(MSN産経/2012.12.31 02:07)
村山談話
安倍晋三「終戦50年を記念して当時の自社さ政権で村山富市元首相が出した談話だが、あれからときを経て21世紀を迎えた。私は21世紀にふさわしい未来志向の安倍内閣としての談話を発出したいと考えている。どういう内容にしていくか、どういう時期を選んで出すべきかも含め、有識者に集まってもらい議論してもらいたい」
河野談話
安倍晋三「平成5年の河野洋平官房長官談話は官房長官談話であり、閣議決定していない談話だ。19年3月には前回の安倍政権が慰安婦問題について『政府が発見した資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった』との答弁書を閣議決定している。この内容も加味して内閣の方針は官房長官が外に対して示していくことになる」――
1995年8月の、日本の植民地支配と侵略戦争を認めた「村山談話」と1993年8月の、慰安所の設置に対する旧日本軍の関与と従軍慰安婦の強制連行旧日本軍関与を認めた「河野談話」の見直し、あるいは否定は中国に対してもそうなるが、韓国にとっては認め難い、関係悪化の発火点となる韓国側の歴史認識の否定となって跳ね返ってくるのは誰の目から見ても当然の帰結であろう。
韓国に対する「民主主義や市場主義などの価値観」の共有は、当然、良好な関係維持の基準とすることに関して無意味化することになる。
安倍晋三が竹島領有権問題と歴史認識を棚上げにして「民主主義や市場主義などの価値観」の共有を名目にその場凌ぎの関係改善を図り、その棚上げも一時凌ぎで、竹島領有権問題と歴史認識で日韓の関係が悪化した場合、悪化した状況のままその場凌ぎで遣り過ごして、ほとぼりが覚めたら、再び「民主主義や市場主義などの価値観」の共有を口実に竹島領有権問題と歴史認識を棚上げにした関係改善を図るといった、その場その場の対処療法主導の日韓関係維持を策するなら、構わない。
だが、「民主主義や市場主義などの価値観」共有を真に確固不動とする日韓関係の維持は竹島領有権問題と歴史認識の解決を措いて他にはないはずである。
安倍首相はどちらの道を選択するのか、韓国と日本国民に対して示す責任を有するはずである。
恒久的な関係改善ではなく、その場凌ぎの関係改善しか図ることができないというなら、安倍首相の政治的先見性はたいしたことはないということになる。無謬であるはずもない日本という国家、その歴史を絶対と見る国家主義を捨て去れば済むことである。