猪瀬都知事の「東京が日本を支えないといけない」の中央集権体制思想下での東京オリンピック反対

2013-01-07 08:46:57 | Weblog

 1月4日(2013年)東京都仕事始めの猪瀬都知事の記者会見。《猪瀬都知事“五輪招致に全力を”》NHK NEWS WEB/2013年1月4日 13時20分)

 猪瀬都知事(今年が2020年夏季オリンピック開催都市決定の年であることを強調した上で)「初めて都知事として新年を迎えたが、東京が日本を支えないといけないという重責をひしひしと感じている。東京が日本の心臓であり、東京が頑張らないと日本が沈没してしまう。皆さんと一緒に運命を背負ってやり抜きたい。

 新しい知恵をどれだけ持ち合わせているかが大事で、一歩先を行くものを探して、ニューヨークやロンドン、パリや上海とは違う新しいものを身につける必要があるし、発想力とはそういうものだ。この東京をきのうと違う東京にしていくためのすべを一緒に考えていきたい」――

 後段は極当たり前の主張である。

 前段の「東京が日本の心臓」というのは些か首を傾げざるを得ない。首都として国の中心に位置するが、日本の心臓はあくまでも時の政権が担う行政を含めた政治であろう。その政治次第で国は動悸・息切れから狭心症にもかかれば、心筋梗塞にもなる。

 勿論、時にはまあまあ健康な状態を維持することもある。

 もし「東京が日本の心臓」であるなら、東京の肥大化した財政・経済・政治は末端の手足に位置する地方にも肥大化の栄養が行き届いて東京都同様の元気を発揮しているはずだが、東京を特別として多くの都市が衰退、目に余るものがあり、ある意味既に沈没した状態にある。

 いわば現実には大多数の地方を置き去りにして東京だけが頑張っている状態にある。心臓が手足の末端にまで血液を送って全身の健康を維持するように、諸々の地方を含めた国全体の健康を維持する首都東京と地方の関係にあるわけではない。

 東京は逆に地方から吸収、あるいは搾取する形でカネ・モノ・ヒトの一極集中によって世界に冠たる巨大都市化を果たした。その反動としての地方の衰退であり、ヒトに関しての少子高齢化・過疎化であろう。

 要するに女性の血を吸って、その血を自らの生命エネルギーとしたドラキュラのように地方の血を吸い、衰退させる日本のドラキュラの役目が猪瀬都知事の言う「日本の心臓」の実体といったところだろう。

 このような現実としてある巨大都市東京の成り立ち無視して、「東京が頑張らないと」と、東京だけが頑張っても、益々地方衰退の加速化を招くだけの結果に終わることになる。

 大体が「東京が日本を支えないといけない」という状況は狂っている。東京がカネ・モノ・ヒトを含めて日本のすべてを賄うということを意味する。まさしく東京をピラミッドの頂点に置いて地方を下に置く一極集中の中央集権体制思想そのものの発想となっている。

 地方それぞれが日本を支える対等な状況とならなければならないはずだ。そのような独立独歩の対等な状況を獲得して初めて地方は生きてくる。地方の衰退は抹消され、少子高齢化・過疎化は解消へ向けた過程を辿ることになる。

 日本の政治がなすべきことは東京一極集中ではなく、逆に東京のカネ・モノ・ヒトの地方分散であるはずだ。地方分散を可能にするためには衰退とは逆の地方の経済の活性化を前提としなければならない。

 だが、自民党は各派閥のボスを中心とした地元利益誘導政治を自らの政治文化として長年行なってきながら、地方活性化に役立てるどころか、地方を疲弊させ、大都市と地方の格差をつくった。地元利益誘導政治の多くがムダな公共事業に彩られていたからだ。

 各地方に於いても県庁所在地とそれ以外の市町村との格差をつくり出している。

 現在の自民党政治家も、安倍晋三を筆頭としてその血を受け継いでいると見なければならない。

 東京は2020年夏季オリンピック開催都市に立候補している。もし招致に成功したなら、東京のカネ・モノ・ヒトの一極集中はなお加速化して巨大都市として膨れ上がるだろうが、高度成長初期時代に東京を代表として都市が地方のヒトを吸収し、ヒトの吸収に伴ってカネ・モノをも吸収していったように地方のカネ・モノ・ヒトを逆に吸収、もしくは搾取することになり、そのよな東京の一極集中と併行して地方の疲弊が進行することになるだろう。

 ヒトが移動すれば、移動したヒトが稼ぐカネも移動することになり、そのヒトが消費するモノもヒトの移動に伴って移動することになる。

 ヒトの地方から都市への移動が地方のカネ・モノ・ヒトを損なっていく、最悪搾取されるという構造を取ることになる。

 以上の意味で、2020年東京オリンピック開催には反対である。地方を置き去りとした現在以上の東京の肥大化は必要ではない。

 2016年夏季オリンピック招致に於ける各立候補都市支持率でIOC調査、マドリード90%、リオデジャネイロ77%、シカゴ74%、東京59%の最下位、そして2020年夏季オリンピック1次選考(2012年5月23日)前のIOC世論調査で、残ったトルコ・イスタンブール「賛成」73%・「反対」3%、スペイン・マドリード「賛成」78%・「反対」16%、東京「賛成」47%・「反対」23%となって、以前最下位となっている。

 JOC2012年10月調査支持率が、「賛成」全国64%・東京65、「反対」全国9%・東京13%の理由はカネに困らない豊かな東京という点から考えると、中央集権強化の要因となる東京一極集中加速化に反対の意見も多いのではないだろうか。

 上の全国64%「賛成」は2012年1月調査よりマイナス2ポイントだと「NHK NEWS WEB」が伝えている。上がるべき賛成が下がっている。

 余談になるが、次の記事――《東京五輪へ 本格招致スタート》NHK NEWS WEB/2013年1月1日 4時46分)が面白いことを教えてくれる。

 国内招致支持率と共に〈東京は、失敗に終わった2016年のオリンピック招致の際、IOC委員の支持を集めるための外交力の弱さが課題にあげられました。このため今回は、いち早く今月10日に海外メディアが集まるイギリスのロンドンで記者会見を開いて東京開催の魅力をアピールすることにしており、先月、新たに招致委員会の会長に就任した東京都の猪瀬直樹知事も出席する予定です。〉――

 「IOC委員の支持を集めるための外交力」とは、論理的思考能力と情報伝達能力の二つ能力を併せ持たせた言語力を駆使した駆引きのことを言うはずだ。

 その外交力が弱い。以前からの対日本評価――「経済一流、外交三流」が頷くことのできる記事の表現となっている。

 「国際会議を成功させるコツは、インド人を黙らせて、日本人を喋らせること」という冗談があるそうだが、基調演説などの用意した文章は見事な体裁を取っていても、いざ議論となると、ダンマリとなる情景が浮かんでくる。

 政治力を高めることが外交力を高めることになり、外交力を高めることが政治力を高める相互関係にあるはずだ。相対的に地方の衰退に手を貸して東京一極集中を加速化させかねない東京オリンピック開催よりも政治力・外交力を高めることにエネルギーを注ぐべきだと思うが、どうだろうか。

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