政府によって派遣された城内外務省政務官が日本時間の1月17日午後9時前アルジェリアの首都に到着し、首都アルジェにある日本大使館に入った。
軍の許可を得て、アルジェリア国営石油天然会社、ガス公社から提供された航空機で武装勢力に襲撃された天然ガス関連施設のあるイナメナス到着したのは日本時間1月20日午後10時頃。
その後、天然ガス関連施設で邦人安否確認を行い、さらにその後病院を訪問して、存在するかもしれない邦人の安否確認を行なう予定だという。
1月21未明の記者会見――
《【アルジェリア邦人拘束・菅長官会見詳報】「城内氏、安否確認へ病院訪問」》(MSN産経/2013.1.21 01:55)(一部抜粋参考引用)
記者「城内氏は病院を訪問するそうだが、今後の見通しは」
菅官房長官「ちょっとしばらく時間はかかるだろう。だから、これからその軍事施設の中に入った後だから、かなり時間がかかるかもしれない」
記者「現地派遣する人員の構成メンバーは」
菅官房長官「医務官をはじめとするさまざまな政官あげてのメンバーだと理解している」
記者「たとえば外務省、警察庁、厚労省とかなのか」
「ありとあらゆる、その安否を確認できる方だと理解を」
記者「『城内氏の日程はしばらく時間はかかる』というが、現地が夜までの間にできるだけ済ませたいのか。今後、病院などで安否の確認ができた場合、記者会見で逐一、説明するのか」
菅官房長官「まず先ほど、第1陣として城内政務官以下が参り、現地に着いたわけだが、飛行機の関係で第2弾はまだ着いていないので、そうした人たちが到着した後になる。(現地時間20日)夕方以降になる。現場の状況がわからないので、どうなるかはここで明確にお答えすることは控えさせていただきたい」(以上)
「医務官」とは外務省在外公館勤務の医療系職員だそうだ。但し現地での一般人診療行為は、その国の医師法違反になるという。
だが、2010年1月13日発生の死者20万人以上 被災者300万人以上の人的被害を出したM7.0、ハイチ巨大地震の際も、団長1名、医師4名、その他看護師や薬剤師等を2週間程度派遣しているから、アルジェリア政府の特別許可を取りさえすれば、派遣された医務官が邦人の診療を行うのに何の支障もないはずだ。
医務官が外務省在外公館勤務の医療系職員であるなら、アルジェリアの日本大使館にいるから、なぜ城内政務官と同じ航空機で派遣しなかったのだろう。しかも城内政務官の病院訪問は菅官房長官が医務官等を乗せた第2陣の到着後、現地時間の1月20日夕方以降だと言っている。
「以降」がどのくらい伸びるか分からない「以降」であろう。
日本とアルジェリアとの時差は8時間で、日本の方が8時間進んでいるとのことだが、城内政務官がイナメナス入りしたのは現地時間の午後2時頃(日本時間1月20日午後10時頃)、病院訪問の予定時間が「夕方以降」ということなら、4時間から6時間、あるいはそれ以上後ということになる。
“人命優先”を盛んに叫んでいたことから比較すると、これは危機管理に反した後手の対応ではないだろうか。
さらに言うなら、“人命優先”を至上命題とするなら、日本からの日本人医師の派遣に限定すべきである。
先ず第一番に日本国内ではなく、外国の地でイスラム過激武装勢力による邦人人質の情報を受けた時点で、相手が自爆という共倒れを伴った殺害も辞さない過激派であること、アルジェリア政府のように「テロストと交渉せず」の国家危機管理を基本姿勢としていた場合、いくら人命優先を求めたとしても、思い通りに人命優先が常に実現できる保証はなく、人質の生命が危険に曝されることは予見しなければならないだろうということである。
その上で、邦人人質の情報に応じて直ちに行動に移す日本人医師派遣の国家危機管理に於ける利点の先ず第一点は、派遣を相手政府に伝えることによって日本政府が如何に人質の生命の万が一に備えようとしているか、人命優先の意思表示(=人命優先のメッセージ)になるということである。
現地在外公館勤務の医務官派遣よりも日本からの日本人医師派遣の方が人命優先の意思表示により強いインパクトを与えることができる。
例え今回のように襲撃現場入りが直ちにできなかったとしても、現地首都日本大使館に待機させているだけでも、人命優先のメッセージとなり得る。
また、日本からの日本人医師派遣によって、日本政府は自らの“人命優先”の至上命題により合致させることができる。
相手国の首相なり大統領なりとの電話会談で、人命を最優先に対応して欲しいと言葉で申し入れるよりも、具体性を持たせた強いメッセージとなるはずである。
さらに日本からの日本人医師派遣によって、負傷した邦人が存在した場合の治療、あるいは健康状態を診た場合、現地病院のスタッフに日本政府の人命優先のメッセージを直接提示することになり、人命優先のあるべき姿として周囲に対して何らかの影響を与えることも期待できる。
もし内外のマスコミが報道したなら、あるべき姿は世界に広く伝わることになる。如何なる政府もこうあるべきだとする思いを各国国民の多くが持ったなら、いつの日かその思いが多くの政府を動かす力とならないとは断言できまい。
これが医務官の派遣であったなら、単に当然だと見られる恐れがある。
このことは外国の地でこのような事件で負傷した場合の邦人に対しても、例え日本語が通じることで安心したとしても、同じように働く心理であろう。
逆に日本からの日本人医師派遣によって、日本政府の人命優先はより強く伝わり、負傷が重症になればなる程、事件の衝撃を和らげ、安心感を与えて、精神的な治療薬の役目を果たすことも期待可能となる。
こう考えてくると、医務官の派遣ですら、後手に回っている安倍政権の“人命優先”に関わる国家危機管理は口先の域を出ていないように見える。
尤もこの日本からの日本人医師の派遣は個人的な考えでしない。客観的妥当性は多くの人の判断を待つしかない。