安倍晋三が4月5日、首相公邸で同日来日したヘーゲル米国防長官と会談した。第2次安倍内閣発足以来、あの手の会談は何回、この手の会談は何回、外国訪問は何カ国と機会あるごとにその回数を誇っているから、すべて記録を取っていて、この会談もカウントしたに違いない。
《首相「強力な日米同盟は不変」 米国防長官と会談》(MSN産経/2014.4.5 22:03)
安倍晋三「日米の強力な同盟関係は不変だというメッセージを出してほしい。
日米同盟が有効に機能し、地域の平和と安定につなげるための法的基盤整備の検討を進めている」――
後段の発言の意味が、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更とそれを可能とする法整備を指していることは理解できるが、「日米の強力な同盟関係は不変だというメッセージを出してほしい」とアメリカ側に要請したことが即座には理解できなかった。
「日米の強力な同盟関係は不変」だという相互性は日米双方が実際行動で築き上げていく必要関係性であって、メッセージで決まることではないはずだ。
果たしてそんな発言をしたのか、他の記事を調べてみた。
《安倍首相 ヘーゲル米国防長官と会談》(NHK NEWS WEB/2014年4月5日 19時48分)
記事冒頭解説。〈安倍総理大臣は、5日来日したアメリカのヘーゲル国防長官と会談し、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認するための検討を進めていることを伝えたのに対し、ヘーゲル国防長官は日本の取り組みを歓迎する考えを 示しました。〉――
安倍晋三「アジア太平洋地域の安全保障環境が大きく変化し、日米同盟の重要性が高まっているなかで、アメリカがアジア太平洋地域を重視する政策を堅持する姿勢を明らかにしていることを歓迎する。
日米同盟が有効に機能し、地域の平和と安定につながるための法的基盤の整備も進めている」
ヘーゲル国防長官「この1年で4回目のアジア歴訪となるが、その理由は、この地域における我々の友好国、同盟国に対し、アメリカのコミットメントを再び保証するためだ」――
そして二人は日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインの見直しを始めとする安全保障や防衛分野での協力を引き続き進め、今月下旬のオバマ大統領の日本訪問の機会も活用して、日米同盟を一層強化していくことで一致し、さらに海洋進出を強める中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮、ウクライナ情勢を巡って意見を交わし、力による現状変更の試みを決して容認しないことを確認、沖縄基地の負担軽減策の着実な実行にも協力を求めたと書き記している。
「メッセージを出してほしい」 との要請には触れていない。
但し次の記事が触れていた。《安倍首相:ヘーゲル米国防長官と会談「同盟関係不変」強調》(毎日jp/2014年04月05日 21時23 分)
安倍晋三 「(中国の海洋進出や北朝鮮の 核・ミサイル開発などを念頭に)アジアの安全保障環境が厳しさを増す中で、日米の強力な同盟関係は不変だというメッセージを出してほしい」――
記事は次のように書いている。〈「・・・・・メッセージを出してほしい」と要請。〉と。
「日米の強力な同盟関係は不変」だというメッセージを出して強力であることを証明しようとする同盟関係とは何を物語るのだろうか。
例え家庭内別居夫婦であっても、外で、「我々はお互いに愛し合っています」といったメッセージを発して、円満な夫婦であることを証明するようなものではないか。
安倍晋三は民主党からの政権交代後、民主党政権が沖縄基地問題やその他で日米関係を損なったと批判して、その対米外交の拙劣さを印象づけ、日米関係は任せておけとばかりに日米関係の再構築を誓った。
だが、靖国神社参拝や河野談話を否定するような発言、戦前の日本の戦争の侵略性を認めないとする発言、その他の歴史認識でアメリカの不信と失望を買うこととなり、野党から逆に日米関係を損なっていると批判を受けた。
このような状況を考えると、国内向けに関しては「アジアの安全保障環境が厳しさを増す中で」と言っていることは口実に過ぎず、「日米の強力な同盟関係は不変だというメッセージ」をアメリカ側に出すことを要請して、安倍晋三が決して日米関係を損なっていないこと、野党の批判は当たらないことを証明しようとしたのではないのか。
国外向けには安倍晋三自身がアジアの安全保障環境を厳しくしている面があることを無視して、日米の同盟関係が強力であることを示す必要上、それを口実に特に中国に対して日米関係を損なっていないことを証明するために「日米の強力な同盟関係は不変だというメッセージ」を求めた。
例えアメリカが日米同盟関係不変メッセージを頻繁に発信したとしても、米国の安全保障上と経済上の必要性からであって、その点でアメリカの対日同盟関係は成立することはあっても、決して安倍晋三という国家主義的政治家を信頼して成立させている日米関係ではないことは誰の目にも明らかである。
安倍晋三は2012年4月28日の自民党主催「主権回復の日」にビデオメッセージを寄せて、「占領時代に占領軍によって行われたこと、日本がどのように改造されたのか、日本人の精神にどのような影響を及ぼしたのか、もう一度検証し、それをきっちりと区切りをつけて、日本は新しスタートを切るべきでした」と、米国が主導した戦後の占領政策まで「日本がどのように改造されたのか」と否定し、国会答弁では「占領下にあって、占領軍の手で作られたというのは紛れもない事実です」と日本国憲法まで否定しているのであって、このような情報をアメリカ側が把握していないはずはなく、こういったことが何よりの証明となる安倍政権下の日米同盟関係の内実であるはずである。
安倍晋三がいくらお願い外交しても、アメリカ側にとって信頼することのできない政治家であることに変わりはないということである。