オバマ大統領の明治神宮参拝にも関わらず、安倍晋三が「靖国参拝の理解得る努力」を言う非合理性

2014-04-27 08:10:01 | Weblog

  

 2013年8月6日当ブログに、《安倍晋三の自己の靖国参拝正当化のためにはオバマ大統領の訪日時の靖国参拝を実現しなければならない - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》と題する記事を書いた。

 安倍晋三は靖国神社参拝の自己正当化理由として、「国のために命をささげた戦死者を参拝するのは国のリーダーの当然の行為であり、各国のリーダーが行っていることだ」とした趣旨のもと、アメリカに於いては大統領が奴隷制度維持を目論んだ南軍兵士を祀ってあっても、兵士の戦争の目的に関係なくアーリントン墓地を訪れて全ての戦死者の死を悼んでいると、靖国神社とアーリントン墓地を日米それぞれの国の代表的な戦死者墓地だと同格に置き、それぞれに於いて行う死を悼む行為は同じだとする相互性を根拠として、自身も訪米すると、アーリントン墓地に参拝して献花するといったことをしている。

 安倍晋三のこの論理が合理的正当性を持つためにはアメリカ大統領が訪日した際、靖国神社を参拝し、献花して戦死者を悼まなければならないし、悼んで初めて、靖国神社とアーリントン墓地を同格に置いた、それぞれの参拝は同じだとする相互性は根拠を得て、「各国のリーダーが行っていることだ」とすることができる。

 だが、オバマ大統領は靖国神社を参拝しなかった。訪れたのは明治神宮であった。このことが何を意味するにしても、少なくともオバマ大統領はアーリントン墓地を訪れて献花し、戦死者を弔う行為を日本に於いては靖国神社であると同格視してはいなかったことを意味する。両者の参拝に相互性を持たせて、「各国のリーダーが行っていることだ」とする安倍晋三の正当性は根拠を失うことになる。

 要するに安倍晋三の靖国参拝はオバマ大統領の理解を得ることができなかった。

 にも関わらず、安倍晋三はオバマ大統領との共同記者会見の終了間際に記者に問われて、自身の靖国参拝を相も変わらない同じ論理で正当化している。

 NHKの共同記者会見中継から、文字に起こした。

 外国人女性記者「安倍総理、アジアには歴史的な対立があり、これがアジアの不安定につながってきました。あなたや他のアジアの指導者は靖国神社の参拝など、さらにこのような緊張が高まるのを防ぐためにどのようなことをすべきだとお考えでしょうか」(日本人女性通訳)

 安倍晋三「先ず私の歴史に対する基本的な考え方は、えー、政治家は歴史に対して常に謙虚でなければいけないということであります。日本は70年前のときの大戦、終戦した、あー、ときに、我々は多くの、人々、特にアジアの、人々に多大な損害と苦痛を与えたことを反省し、そして戦後の歩みを始めたわけであります。70年間ひたすら平和国家としての歩みを進んできたのが日本であり、日本人でもあります。そして、その考え方の下で、日本はまだ貧しい時代からアジアの国々の発展に貢献すべく、最大限の努力を積み重ねてきたところでございます。多くのアジアの国々からは日本のその歩みを評価されていると、えー、思います。

 そして安倍政権に於きましても、歴代の日本の政権と全く考え方に変わりがあるわけではありません。

 昨年末の私の、お-、靖国神社への訪問については、国のために戦い、傷つき、倒れた方々に対して、手を合わせ、そして、えー、冥福を、ご冥福をお祈りするため、でもあります。そしてそれは世界の多くのリーダーに共通する姿勢ではない、かと考えます。

 そして同時に、靖国神社の中にある鎮霊社、という社にお参りを致しました。ま、このことは あまり報道されていないのでありますが、この鎮霊社には、えー、世界中の、おー、戦没者、の霊が祭られているところでございまして、その鎮霊社にお参りいたしまして、えー、二度と人々が戦禍で苦しむことのない、世界を作っていくとの決意の下に、ま、不戦の誓いをしたところでございます。 

 こうした考え方を私は参拝をした際、総理の談話として発出したところでございますが、この私の基本的な考え方について、えー、これからも説明し、理解を得る努力を積み重ねていきたいと。このように思います。

 日本は戦後、自由で、民主的な国を作るために努力をし、汗を流してきたわけであります。人権を尊重し、そして法の支配を尊ぶ国をつくってきたわけでございまして、さらに、えー、日本だけではなく、世界に於いても、えー、そういう地域を、おー、少しでも増やしていくべく努力を重ねていきたいと、えー、思うわけで、えー、ございます。平和で繁栄した世界をつくっていくために貢献していくことによってですね、多くのえー、国々の人々の理解を得ていきたいと、このように思っております」(記者会見終了)――
 
 確かに日本という国は戦後、安倍晋三が言うような歩みをしてきた。但しアメリカという大国に守られてという条件付きである。

 だが、安倍晋三が「私の歴史に対する基本的な考え方は歴代の日本の政権と全く考え方に変わりがあるわけではない」と言っていることは100%マヤカシに満ちている。2013年5月の産経新聞のインタビューで、「政権復帰したら、もう村山談話や河野談話に縛られることはない」と発言しているし、2012年9月16日の自民党総裁選討論会では、「河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込 み女性を人さらいのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を日本は背負っている。安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない、河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある。孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない」と発言して、歴代政権と違う姿勢を示していることが何よりの証明となる。

 第2次安倍政権発足1年を機会に2013年12月26日に靖国参拝したとき、「私の参拝の意味について理解をして頂くための努力を重ねていきたいと思います」と言い、今回の共同記者会見でも、この時の参拝を取り上げて、「私の基本的な考え方について、これからも説明し、理解を得る努力を積み重ねていきたい」と同じことを言っている。

 この経緯は理解を得ていない同じ地点にとどまっていることを意味しているが、安倍晋三の靖国参拝自己正当化理由からしたら、同じ地点にとどまる停滞を破り、中国や韓国、あるいは国内の反対意見の口を封じることにも役立つ最大の理解を得るチャンスがオバマ大統領の靖国参拝であるはずであるにも関わらず、オバマ大統領到着前に大統領が靖国神社ではなく、明治神宮参拝の予定であることが既に分かった時点で、いわば共同記者会見前にその予定を把握した時点で安倍晋三の靖国神社参拝の自己正当化理由が既に破綻していることを認識しなければならないはずだが、共同記者会見で「理解を得る努力」を尚も言い立てる非合理性は如何ともし難い。

 安倍晋三は今後とも破綻している靖国参拝自己正当化の理論を持ち出し、理解の努力を言い続けることになるだろう。靖国参拝が大日本帝国国家を体現して命を捧げた戦死者を通した参拝者自身の大日本帝国国家体現儀式であるにも関わらずである。

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