安倍晋三の中国の人権抑圧政策に一言も抗議せずに対中“平和的台頭”圧力を日米同盟に期待するお門違い

2014-04-18 07:51:39 | Weblog

 


      《生活の党PR》

      《4月17日(木) 生活の党・民主党・みんなの党・結の党4党共同衆議院提出「東日本大震災復興特別区域法改正案」全会一致衆議院通過》

      《4月14日 小沢一郎生活の党代表定例記者会見要旨》

      『野党、一つずつの政党で戦っていては国民の選択肢がなくなってしまう』

      【質疑要旨】
      ・野党各党の動きによる野党再編の影響について
      ・熊本鳥インフルエンザ発生時の総理の対応について

 安倍晋三が昨4月17日、東京都内で講演している。その発言を、《首相「中国の平和的台頭に日米同盟強化を」》NHK NEWS WEB/2014年4月17日 13時28分)から見てみる。

 安倍晋三「中国が責任ある国家として平和的に台頭していくよう、日本だけでなく多くの国々で促していくためにも、アメリカがアジアを重視する『リバランス政策』を進め日米同盟を強化していくことが重要だ。

 来週のオバマ大統領との首脳会談で、アジア・太平洋地域の平和と繁栄、安定に貢献する日米同盟を強調したい。

 (新しい国立追悼施設設置に関して)靖国神社が戦没者の追悼の中心的な施設になっていることは事実で、国が別の場所に作って、それで済むというものではないし、簡単なことではない」――

 この最後の新国立追悼施設設置に関しての発言は、他の記事を見ると、中国が靖国神社参拝に反発していることを受けたものとなっている。

 「リバランス政策」の意味は、「コトバンク」の解説を借りると、「再均衡の意で、米国がこれ までの世界戦略を見直して、その重心をアジア・太平洋地域に移そうとする軍事・外交上の政策のこと」となっている。

 「中国が責任ある国家として平和的に台頭していくよう」圧力をかけるためには「日米同盟を強化していくことが重要だ」としている。

 対中“平和的台頭”圧力発動に日米同盟強化の力を借りるのは結構だが、安倍晋三自身は一国のリーダーとしてこれまでに中国の“平和的台頭”促進に向けてどのような圧力を心がけてきたのだろうか。

 確かに何十回となく外国を訪問し、何十回となく首脳会談を行い、その回数を言い立て、誇る程にも諸外国を回って、自由、民主主義、基本的人権、法の支配等を普遍的価値として共有する国家との関係強化を図る価値観外交を展開してきたが、このことに焦って中国の方から日本に接近してきたという事実もないし、元々それらの価値観を共有していて価値観に関わる意思疎通の障害が存在しないがゆえに容易に可能とした中国を除いた対諸外国外交であり、中国の“平和的台頭”促進という点でも、対中“平和的台頭”圧力という点でも、何ら役に立っていない無力な安倍外交でしかなかった。

 また、中国の“平和的台頭”促進、あるいは対中“平和的台頭”圧力を有効たらしめるためには価値観外交の一角を占める中国の人権政策に特に物申して、その変更を促していくことが重要になるはずだが、安倍晋三は直接的には抗議の声や批判の声を上げたことはないのだから、自分ではしていないことをアメリカや他の国に期待すること自体が無責任なお門違いと言わざるを得ない。

 一度ブログに取り上げたが、2013年2月1日参議院本会議での代表質問で、ノーベル平和賞の中国人権活動家劉暁波氏の中国当局による拘束に関してみんなの党水野賢一議員から、劉暁波氏の釈放を求めるのかと問われて、次のようの答弁している。

 安倍晋三「中国の民主化活動家を巡る人権状況や国際社会に於ける普遍的価値である人権及び基本的自由が中国に於いても保障されることが重要であります。

 劉暁波氏についても、そうした人権及び基本的自由は認められるべきであり、釈放されることは望ましいと、考えられます。

 このような観点から、これまでも政府間の対話などの機会を捉えて、民主化活動家についての我が国の懸念を中国側に伝えてきております」――

 しかし自身は国内向けに釈放の希望を述べただけで、中国に対しては一度たりとも直接的に声を上げて釈放を求めなかったし、このことは他の人権活動家に対する中国当局の言論の自由や思想・信条の自由を認めない弾圧、あるいは不法な暴力的取り扱いに一度も異議申立ての声を上げていない。

 対して対中“平和的台頭”圧力発動の協力関係を求めているアメリカに関してはオバマ大統領が中国の人権政策に直接抗議の声を上げているし、今年2月には中国の宗教政策に関しても抗議の演説をワシントン市内で行っている。

 オバマ大統領「世界には、宗教の自由が脅威にさらされているところがある。この中には政府が、宗教を理由にした差別や暴力に関わっているところもある。

 中国の指導者との会談では、国の発展は、キリスト教徒やチベットの仏教徒、それに、ウイグルのイスラム教徒の普遍的な権利が擁護されるかどうかにかかっていると力説している」(NHK NEWS WEB)――

 同じ2月にアメリカ国務省は各国の人権状況を纏めた「2013年版米国務省人権報告書」を発表、中国政府のインターネット監視強化や対汚職抗議弾圧の動きや憲法に基づき人権擁護などを訴える「新公民運動」の活動家29人の逮捕、その他の人権弾圧の拡大を批判している。

 勿論中国はこのような反応に反発しているが、一度も日中首脳会談を実現させることのできない日本と違って、中国批判後もオバマ大統領は習近平主席と3月24日にオランダのハーグで首脳会談を行っている。

 人権・人道問題に国境はない。如何なる国の国民であろうと、人権・人道問題で平等でなければならない。だからこそ、普遍的価値と位置づけているはずだ。

 しかも3月10日から北京を訪れていたオバマ大統領のミシェル夫人は3月22日に北京大学で講演を行い、中国の人権政策に物申している。
 
 ミシェル夫人「国家は、市民が自由に声を上げ意見を述べることができるとき、より強力になり繁栄する。表現の自由と信仰の自由、そして情報への自由なアクセスは、すべての人類の権利だ」(NHK NEWS WEB)――

 中国に於ける民主主義をゆくゆくは社会の指導層を占めることになる次の世代に期待したのだろう。

 だが、民主主義への歩みはわずかに見えるものの、次世代の多くがいざ指導層に所属すると、従来の価値観に馴れ合い、従属していく。

 安倍晋三は自らは中国の人権政策に対して対中“平和的台頭”の圧力を意図した、あるいは中国の“平和的台頭”促進を狙った抗議の声を一度も上げずに、それらの働きを他の国々や日米同盟に期待した。お門違いはお門違いであっても、お門違いの丸投げとしか言いようがない。

 最後に靖国神社に代わる新国立追悼施設設置に関わる否定的発言について一言。小泉内閣の2005年、2006年当時の主だった政治家の発言を見てみる。当時小泉首相の靖国参拝に中国は抗議、激しい反日デモが巻き起こった。

 安倍官房長官「政府が検討している新たな戦没者追悼施設については、国民世論の動向を見つつ、諸般の状況を見ながら、検討していきたい。靖国神社を代替する概念で検討しているわけではない」

 靖国神社は靖国神社として残しておくと言っている。いわば、その価値を変えるつもりもないし、変わるわけでもないと。

 以下、同じ趣旨の発言となっている。

 小泉首相「靖国神社に代わる施設と誤解されている面もある。どのような施設が仮に建設されるにしても、靖国神社は存在しているし、靖国神社がなくなるもんじゃない」
 
 片山自民党参院幹事長「(小泉首相の「靖国に代わる施設ではない」発言に対して)国のために亡くなった方を祀るのは靖国神社だけという一種のコンセンサスがある。(新たな追悼施設は)国民が受け入れるとは思えない」

 麻生総務相「(戦没者は)靖国で会おうという前提で命を亡くしている。追悼施設をつくることは、靖国をなくすこととは一緒ではないのではないか」

 では、戦没者遺族を代表させて一言。

 遺族「靖国の英霊の殆どは、万一不幸にも戦死を遂げた場合、靖国で永久に祀られるとの言わば国家との約束を信じて戦地に赴いたのである。この英霊との約束を守るのか国家の義務である」

 天皇陛下のため・お国のために戦って花と散って靖国に英霊として祀られることを対天皇・対日本国家との約束事として戦場に赴いた兵士たちの靖国の精神は不滅であり、靖国の価値観は不変だとし、それらの不滅性・不変性を遺族やその他の参拝者自身が体現しているとしている。

 だが、靖国神社に関わるこのような精神と価値観は明治維新から昭和の終戦までの国家体制(=国体)を基礎に形成された精神と価値観であって、その精神と価値観を受け継ぐということは戦後の日本人が戦前の国家体制(=国体)を、少なくとも精神的な面で受け継いでいることを意味する。

 ここに安倍晋三が戦前の国家体制を肯定する歴史修正主義者と批判される所以がある。安倍晋三が見せている戦前の天皇制への郷愁、侵略戦争否定等々を裏打ちとして成り立たせている靖国の不滅性・不変性なのである。

 このような意味に於いてこそ、「靖国神社が戦没者の追悼の中心的な施設になっている」のであって、戦後日本の価値観・精神に基づいた、政治家たち・日本人たちの靖国神社絶対視ではないことを理解しなければならない。

 要するに戦後の日本国家体制を戦前の国家体制(=国体)で表現したい欲求を抱えているということである。

 当然ここには時代錯誤の力学が働いていることになるが、戦後日本国家の優秀性を戦後日本国家の存在性で表現したい欲望を抑えることができないでいる。

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