オバマ大統領は安倍晋三も日本国民も、過去を誠実、公正に認識していないと見做している

2014-04-28 08:06:40 | Weblog



 ――安倍晋三の他国の人権侵害に物申さずに「人権侵害が起こらない21世紀にするための貢献」を言うキレイゴトの胡散臭さ――

 4月23日(2014年)夕刻訪日のオバマ大統領が25日午前中離陸、次の訪問国韓国に向かい、同日午後、パク・クネ韓国大統領と首脳会談、会談後共同記者会見を開いている。そこでオバマ大統領は、多分、日本人の誰もが思ってもいなかっただろう発言をした。

 《米大統領 “従軍慰安婦問題”に言及》NHK NEWS WEB/2014年4 月25日 21時44分)

 先ずパク・クネ大統領が、安倍晋三が先月従軍慰安婦の問題について政府の謝罪と反省を示した河野官房長官談話を見直す考えはないと表明したことなどに触れて次のように発言したと伝えている。 

 パク大統領「安倍総理大臣が約束したことに関して誠意ある行動が重要だ。今後、日本が大きな力を傾けてくれればと思う」

 オバマ大統領「(慰安婦の問題は)甚だしい人権侵害で衝撃的なものだ。安倍総理大臣も日本国民も、過去は誠実、公正に認識されなければならないことは分かっていると思う。

 日韓両国はアメリカの重要な同盟国だ。過去のわだかまりを解決すると同時に未来に目を向けてほしいというのが私の願いだ」――

 オバマ大統領は安倍晋三も日本国民も、過去を誠実、公正に認識していないとして、日韓関係修復に関して日本側により重い責任を課した。

 少なくともオバマ大統領はそのように認識している。と同時に米政権共通の認識としている。

 安倍晋三の靖国神社参拝に関しても、過去を誠実、公正に認識していない行動と見做しているはずだ。昨年12月26日の安倍晋三の靖国神社参拝に対してただ単に近隣諸国との緊張を悪化させる行動だからとの理由で在日米大使館に引き続いてサキ国務省報道官が「失望している」との声明を発表したわけではあるまい。

 もし安倍晋三の靖国参拝や河野談話・村山談話、さらには従軍慰安婦問題に関わる安倍晋三自身の歴史解釈が過去を誠実、公正に認識し、成り立たせていると見做していたなら、非は日本にはないことになって、中国・韓国の批判をこそ抑える役目に回っていたはずし、米韓共同記者会見でのオバマ大統領の「安倍総理大臣も日本国民も、過去は誠実、公正に認識されなければならないことは分かっていると思う」という発言も出てこなかったはずだ。

 このオバマ大統領の発言に対して安倍晋三は4月27日午後、視察先の岩手県岩泉町で記者の質問に答えている。《首相「慰安婦思うと胸が痛む」》NHK NEWS WEB/2014年4月27日 16 時41分)

 安倍晋三「筆舌に尽くし難い思いをされた慰安婦の方々のことを思うと、本当に胸が痛む思いだ。20世紀は女性を始め、多くの人権が侵害をされた世紀だった。

 21世紀はそうしたことが起こらない世紀にするために日本としても大きな貢献をしていきたい。今後とも国際社会に対して、日本の考え方、日本の方針について説明していきたい」

 強制連行と暴力的な強制売春を強いた従軍慰安婦に関わる日本軍が犯した個別的な人権問題を、安倍晋三は「20世紀は女性を始め、多くの人権が侵害をされた世紀だった」と、20世紀全体の中の一つとする矮小化を伴わせた相対化の手法によって従軍慰安婦の人権に関わる罪を狡猾・巧妙にも希薄化・曖昧化しているに過ぎない。

 いわば人権侵害の20世紀の中に従軍慰安婦問題を埋没させようとする一種のゴマカシを働かせた。

 例えば殺人事件の裁判で個別の殺人問題を扱っているにも関わらず、被告が俺はたった1人殺しただけで、世の中には2人も3人も殺した奴がいるのではないかと全体の殺人事件の中の大したこともない一つとする矮小化を伴わせた相対化の手法によって自身の殺人の罪を希薄化・曖昧化しようとするのと同じ手法を安倍晋三は用いた。

 安倍晋三の20世紀を人権侵害の世紀だとする相対化を用いた日本の戦争に関わる諸悪の罪薄めの手法は常套手段となっていて、今回が初めてではない。

 2007年7月30日に米下院本会議で日本政府に謝罪を求める従軍慰安婦決議が採択された。

 決議の主たる内容。

 日本政府は1930年代から第2次世界大戦にかけて旧日本軍が「慰安婦」として世界に知られる、若い女性に性的な奴隷状態を強制した歴史的な責任を明確な形で公式に認め、謝罪し、受け入れるべきである。この制度の残虐性と規模は前例がなく、20世紀最悪の人身売買事件の一つである。

 日本の教科書の中には慰安婦の悲劇などを軽視しようとするものがある。最近、日本の官民の要職にある者は河野洋平内閣官房長官が93年、慰安婦に対し謝罪し後悔の念を表明した談話の内容を、弱めるか撤回してほしいと要望している。

 首相が公式の謝罪声明を出せば、日本の誠意と従来の声明の位置づけに対する一向に止まない疑いを晴らすのに役立つ。

 日本政府は、旧日本軍のために慰安婦が性的な奴隷状態にされ、売買されたという事実はなかったという主張に明確に反論すべきだ。

 日本政府は、慰安婦に関する国際社会の声を理解し、現在と将来の世代にこの恐ろしい犯罪について教えるべきだ。(以上、朝日新聞/2007年8月1日朝刊>

 当時の日本の首相は安倍晋三だった。当然、米下院本会議決議案に対する発言を余儀なくされている。7月31日、首相官邸で記者団に次のように発言している。

 安倍晋三「20世紀は人権が侵害された世紀だった。21世紀は人権侵害がない、世界の人々にとって明るい時代にしていくことが大切だ。これからもよく説明していくことが大切だ」(MSN産経/2007/07/31 13:35)

 米下院本会議が従軍慰安婦の守られるべき人権を日本軍が抑圧・強制した個別の問題として取り上げているのに対して安倍晋三はそのことには直接何も答えずに20世紀を人権侵害の世紀と位置づけることで、20世紀全体の人権侵害の中に埋没させる相対化の手法を用いて、従軍慰安婦に関わる人権を個別問題の舞台の背景から遠く退かせて矮小化し、日本軍の罪と日本政府の責任を希薄化・曖昧化している。

 安倍晋三はこの手法を7年後の現在も用いているということである。

 大体からして安倍晋三には「21世紀はそうしたこと(人権侵害)が起こらな い世紀にするために日本としても大きな貢献をしていきたい」と言う資格も、米下院本会議従軍慰安婦決議採択を受けて、「21世紀は人権侵害がない、世界の人々にとって明るい時代にしていくことが大切だ」と言う資格もない。

 中国の現在の人権侵害諸々に対して安倍晋三は直接的には何一つ批判していないし、欧米各国首脳がロシアの「同性愛宣伝禁止法」やその他の人権抑圧政策を問題視してソチオリンピック2月7日開会式欠席を決めたのに対して、安倍晋三は先進国の首脳では習近平中国国家主席と共に(と言っても、同席することはなかったが)出席することで、欧米各国の首脳と同じレベルの認識に立つことはなかったし、メドベージェフ政権やプーチン政権が欧米では正当な権利とされている様々な言論を手段とした政権批判を許さずに逮捕・拘束に至る強権的統治を行っていることに対しても何らの危惧を示すことすらなかった。

 何度となく起きている政権批判のジャナーリスト暗殺は言論の自由を許さないロシアの風土がもたらしている陰惨な事件であるはずだ。

 にも関わらず、安倍晋三は、「21世紀は人権侵害がない、世界の人々にとって明るい時代にしていくことが大切だ」と言い、「21世紀はそうしたこと(人権侵害)が起こらない世紀にするために日本としても大きな貢献をしていきたい」と言う。

 具体的行動は取らずに口では言う有言不実行の最たる見本に過ぎない。安倍晋三の胡散臭さが象徴的に現れているキレイゴトと言わざるを得ない。

 当然、人権侵害の20世紀全体の一つとする相対化を用いている以上、「筆舌に尽くし難い思いをされた慰安婦の方々のことを思うと、本当に胸が痛む思いだ」の言葉にしても、本心からのものではない、キレイゴトということになる。

 確かにオバマ政権も日本を必要としている。経済的にも安全保障の面でも、政治的にも大国日本は米国にとって不可欠の存在であろう。だが、人間性という点で、オバマ大統領は安倍晋三を信用していない。この不信用が、「安倍総理大臣も日本国民も、過去は誠実、公正に認識されなければならないことは分かっていると思う」という言葉になって現れた。

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