4月6日放送NHK「日曜討論」は日本の社会保障が政府によるカネ食い虫となっている理由の間接的証明

2014-04-10 09:16:38 | Weblog




      《生活の党PR》

      《4月4日(金) 鈴木克昌代表代行・幹事長が定例の記者会見要旨》

      『衆議院選挙制度改革、与野党8党第三者機関設置に賛成』

      【質疑要旨】
      ・衆議院選挙制度改革協議について
      ・原子力協定採決について
      ・集団的自衛権、限定容認論について  
      ・地方教育行政法改正案について    

      《鈴木代表代行・幹事長、「国民投票法改正案」を衆議院に提出》

      自民・公明・民主・日本維新の会・みんなの党・結いの党・生活の党与野党7党共同堤出

 年金・医療・介護などの社会保障関係費の2014年度予算は30兆5175億円(前年度比+4.8%)で、歳出総額(95.9兆円)の31.8%(一般歳出の54.0%)を占める最大支出項目だそうで、政府はその抑制に躍起となっている。このことは4月6日放送の「経済」をテーマとしたNHK「日曜討論」の最後の「社会保障」のコーナーでの政府側に立つ出演者の発言によって明らかになる。

 但し政府側に立たない出演者の発言によって、日本の社会保障が国民によるカネ食い虫ではなく、政府によるカネ食い虫となっている理由を間接的にだが、証明することになる。

出演者

■経済再生担当大臣 甘利明
■日本商工会議所会頭 三村明夫
■日本総合研究所理事長・第2次安倍内閣経済財政諮問会議議員 高橋進
■東京大学教授 大沢真理

司会島田敏男解説委員 / 中川緑アナウンサー

 島田敏男NHK解説委員「今後の国民にとって大きな要素となる社会保障制度 ――」


 中川緑アナ「社会保障制度でキーワードとなるのが国民負担率です」

 「『所得に占める税金と社会保険料の割合』→公的な負担の大きさ」を示す「財務省」調査の棒グラフが画面に示される。

 公的負担の大小によって「大きな政府」か「小さな政府」か分かれるとしている。

 日本(2014年度)41.6%
 アメリカ(2011年)30.8%
 イギリス(2011年)47.7%
 ドイツ(2011年)51.2%
 スウェーデン(2011年)58.2%
 フランス(2011年)61.9%

 中川緑アナ「今後負担を小さくしてサービスを増やす大きおな政府を目指すのか、あるいは負担もサービスも小さい小さな政府を目指すのか、その方向性が問われています。

 では、日本の国民負担率、他の国と比べてどうなのかと言うと、アメリカよりは高く、手厚い社会保障で知られるヨーロッパ諸国に比べると、低くなっています。社会保障を充実させることは国民負担率を増やすことになる可能性が高いことになります」

 大沢真理東京大学教授「先ず国民負担率という言葉の定義が違うのではないのか。これは私が言っているだけではなく、既に20年近く前に政府の社会保障制度審議会が、これは公的負担率と言うべきで、国民負担率と言うなら、個人や企業が私的に負担している分も勘案すべきだとういうことを勧告の中で述べている。

 これは大変国際的にも先駆的な提言であったということができる。その後OECDは社会保障に関するネット(正味量)会計という手法が開発されてきて、私的な負担を入れた負担というのが国際的に比較できるようになっている」

 島田敏男解説委員「例えば個人年金なんかもそこに入っているんですね」

 大沢真理教授 「そうですね。それも医療費の自己負担分も、私的な健康保険の負担分なども全て入れます。そうすると、何とアメリカの負担はスウェーデンと同じ。日本の負担はフィンランドと同じです」

 「国民負担率」とは、〈国税と地方税とを合わせた租税負担の国民所得に対する比率である租税負担率と、年金や医療保険などの社会保障負担の国民所得に対する比率である社会保障負担率との合計。〉(知恵蔵2014)を言う。 

 大沢教授が言っていることは、一般的に使われている「国民負担率」という言葉は医療費の自己負担分や健康保険料といった私的負担率を省いた「公的負担率」のことであって、「国民」という言葉を冠するなら、私的負担をも含めた負担率を言うべきで、それが国際標準になっていて、その基準で国際比較すると、「日本の負担はフィンランドと同じ」ということであろう。

 当然考えられることは、「国民負担率」が日本とフィンランドが同等程度なら、国からのサービスも同等程度でなければならないとうことである。

 《3.北欧の社会保障政策の特徴 - 矢崎化工》というHPに次のような記述がある。 
  

 〈北欧の福祉については、「高福祉・高負担」という言葉がよく使われます。例えばフィンランドでは、税金と社会保障費でGDPの44.2%を占める(これはスウェーデン、デンマークにつづいて世界第3位)といわれる程負担は大きいですが、普遍的な社会保障を基本としているので、社会福祉や保健サービスは誰でも公平に受けることができ、 その料金は、無料または、かなり低く設定されています。これ以外に重要なことのひとつに、教育費が小学校から大学まで無料であることがあげられます。一方 日本の場合は、一人の子供が大学を出るまでに、600万円から1000万円の教育費がかかるといわれています。〉――

 フィンランド国民は〈社会福祉や保健サービスは誰でも公平に受けることができ、 その料金は、無料または、かなり低く設定されて〉いて、〈教育費が小学校から大学まで無料〉という高度なサービスを国から受けている。

 さらに次の統計も記載されている。

 2000年標準消費税 22% 食料品消費税 17%
 2000年租税負担率49.4%
 2000年国民負担率66.6%

 食料品消費税の17%を基準にしたとしても、日本の現行8%の2倍もの負担となっている。標準消費税を基準にすると、3倍近い負担。

 次の記事――《国民の62%が信頼するフィンランドの年金制度》Global Press - 朝日新聞社(WEBRONZA)/2012年05月15日)には次の記述。 

 記事題名は2011年フィンランド年金センター実施の世論調査によって、国民の62%が「年金だけでも十分に暮らしていける」と考えているとする統計に基づいている。

 〈日本が高齢化において世界一、平均寿命はすでに世界最高の水準であることは周知のことだが、実は、フィンランドも、欧州では無類の急速な高齢化に直面しており、両国には「高齢化社会」という共通点がある。そればかりか、両国の1人当たり実質所得はほぼ同水準であり、物価もフィンランドの方が少々高いものの、実は同じぐらいである。〉――

 要するに上記社会状況や生活状況に関しても、私的負担分を含めた「国民負担率」にしても、フィンランドと同等程度であるなら、国から受けるサービスも同等程度でなければならなはいずだが、標準消費税換算でも3倍近く、食料品消費税換算でも約2倍も支払わなければならないフィンランド国民よりも日本国民が国から受けるサービスが劣るということは、社会制度運用の効率性の問題に帰すことになるばかりか、全予算執行を含めた政府全体の組織運用の効率性の問題となる。

 それもハンパではない格差ということになる。

 いわば政府がカネを食うばかりで、効率よく国民利益に還元することができない。あるいは還元する能力を欠いているからこそのハンパではない格差ということであろう。

 大沢真理教授はこういったことを指摘したはずだが、他の出演者は社会制度運用の効率性や政府全体の組織運用の効率性は無視して、いわば予算という名のカネの配分や使い方の効率性の問題(=行政執行者の能力の問題)は無視して、政府寄りの立場から、効率的な社会保障費圧縮――いわばサービスを削ってカネを浮かすことばかりに視点を当てた発言となっている。

 島田敏男解説委員「高橋さん、今大沢さんから一つ、頭の中を整理するための大きな軸を示されましたが、 どうですか」

 日本総合研究所理事長・第2次安倍内閣経済財政諮問会議議員。  

 高橋進「私にですね、大きな政府か、小さい政府かっていう問題設定そのものがちょっと違うじゃないのかと思います。日本は今、国民皆保険ということで現行レベルの社会保障は極めていいと思う。ただ、このレベルを維持することは大変難しい。

 それから、物凄い勢いで高齢化が進んでいく。従って、現行レベルを維持するだけでも、既に高い負担が更に上がってしまう可能性があるわけで、そういう意味で社会保障の中身を見直すということをやっていかないと、どんどん負担が消費税の引き上げという形でツケが回ってきてしまう。

 ですから、社会保障の中身の見直しということをやって、現行レベルを維持していくことがやっとのことかなというふうに思う。

 もう一つ、社会保障と言ったときにやはり年金だという話もあるが、やはり先程から話も出ているが、実は子育てするとか、そういったところは意外と日本は手薄ですから、だから、社会保障の見直しも、もっとシフトさせる方向でやらないといけないと思う」

 島田敏男解説委員に大沢教授が「頭の中を整理するための大きな軸」を示したと折角注意を促されながら、頭の中を整理しないままに、「社会保障の中身を見直す」という口実で、圧縮だけを目指そうとしている。

 いくら社会保障の中身を見直したとしても、圧縮して浮いたカネを子育て関連に回したとしても、制度運用の効率性を欠いたままなら、負担は変わらないか、あるいは負担が増えるばかりで、サービスの質の高度化は望めず、旧態依然のサービスが続くことになって、社会保障が政府のカネ食い虫であることに変わりはないことになる。

 島田敏男解説委員「重点の置き方ですね。三村さん、そういった指摘を受けて、どう思いますか」

 三村明夫日本商工会議所会頭 「二つの問題がある。一つは現役世代が現役の給付を全部負担するのは当たり前の原則であって、現在は給付はたくさん貰っているけれども、国債という形で次世代に全部ツケ回していると(いう)、こういう事実が一つある。

 これをどうやって改善したらいいのか。そのためには社会保障の重点化・効率化という、消費税を上げるときの約束事項を何とか果たして貰いたい。 

 それから、高橋さんの今言ったようにやはり、これからの日本の究極的な成長戦略は少子化対策だと思う。現在の老人給付と少子化対策の予算の比率は10対1で、10分の1しか次世代の子どもたちには日本は使っていないわけで、これはスウェーデン、南欧諸国は大体2、3倍で すよ。非常に偏っている。

 そういうことを是正しなくてはいけない。現状の社会保障は重点化し、より少なくする。それを何らかの形で財源として、少子化対策としてこれで償うという、集中という、そういうことがいい姿だと思っている」

 「効率化」という言葉に「重点化」という言葉が加わって、社会保障費を圧縮して、少子化対策に回せと言っている。だが、国債まで使って社会保障制度の辻褄合わせをしなければならないこと自体が、他の予算に関しても同じだが、予算の配分と執行の効率性が深く関与しているはずである。

 この効率性の悪さの長年の時間的積み重ねが先進国最悪のGDP比累積赤字国債額となって現れているということであるはずだ。

 だとしたら、この点の原因療法が最優先課題となるはずだが、対処療法に終始している。

 島田敏男解説委員「安倍内閣、医療、今お話の効率化をかなり強く言ってますが、年金も含めたトータルの全体像、まだあまりはっきりしませんが」

 甘利明「今、医療・介護・年金を半分前後は赤字国債で支えている。これは継続性という点でからすると、 いずれ破綻する。消費税引き上げというのはちゃんと安定財源を持ってですね、将来に亘って心配ないという安心感を醸成させるのと、一部使って、更に充実しているわけですね。

 それから日本が特殊なのは、高齢化の比率、高齢化のスピードが世界新記録で伸びているんです。だから、他処よりもそこにおカネがかかる。そこでもう一方で、我々は何をするかと言うと、従来、医療とか介護、これは福祉の範疇で行いました。 これは大事です。そこから産業化という意味を(?)思い出そうじゃないかと、従来はその分野は成長戦略という枠から外れていたから、そこを成長戦略化していく。
 
 何が悪かったかというと、健康寿命を伸ばしていく。健康寿命を伸ばすようなことに資すれば、社会保障費も適切に抑えられていくということになる。多方面からこれを連立方程式で解いていこうと思っている」――

 「消費税引き上げというのはちゃんと安定財源を持ってですね、将来に亘って心配ないという安心感を醸成させるのと、一部使って、更に充実しているわけですね」と尤もらしげにに言っているが、その「安心感」が崩れたからこその再々度の消費税増税であって、そうである以上、「将来に亘って心配ないという安心感」の醸成は保証なき醸成となり、「一部使って、更に充実」も保証なき充実ということになる。

 この保証のないことも制度運用の効率性の能力欠如から来ているはずだ。フィンランド国民の62%が自国の年金制度を信頼している安心感の状態にあるが、2008年の内閣府「社会保障制度に関する特別世論調査各国比較」による日本国民の「年金の将来に対する信頼感」は次の程度しかない。

「大いに信頼している」2%
「どちらかといえば信頼している」18%
「どちらかといえば信頼していない」36%
「全く信頼していない」40%
「分からない」4%

 いくら資本金を増やしても、経営能力自体を欠いていたなら、会社を赤字から黒字に転換するすることはできないし、社員から安心感を得ることはできない。

 医療とか介護の分野を成長戦略化していくと言っているが、当然、経済的効率性が重視されることになる。いくら経済的効率性を追求したとしても、その陰に制度運用の効率性欠如を隠していたなら、企業のみが利益を上げ、政府の税収は増えても、受益主体の国民自体の状況――低いサービスと年数を置いて消費税を増税し続けなければ社会保障制度を維持できないという状況は変わらないはずだ。

  要するに甘利は詭弁を用いて、「連立方程式で解いていこうと思っている」などと尤もらしいことを言ったに過ぎない。その程度の政治家だということでもある。

 島田敏男解説委員「三 村さん、日本の多くの声を背負っているお立場だと思いますが、日本の経済成長、今何が一番必要ですか」

 三村明 夫 「民間企業がもう一度頑張ることだと思う。そのためにはデフレからの脱却はいいんだけど、デフレマインドという、陥っていて、それらに対する、成長に対する意欲も若干薄れていた。当たり前のリスクテクノ(リスクに対するテクニックということか?)をしながらやっていくという、プライベートカンパニーの決意だと思う」

 島田敏男解説委員「大沢さ ん、そういうときに忘れてはならないのは?」

 大沢真理教授「格差の解消ですね。個人にとっても、地域にとっても、企業の規模にとっても、日本は格差が大き過ぎる社会になっていて、そのことがショックに対して脆い社会でもあるということと連動動しているから、格差の解消、是非取り組んで頂きたいと思う」

 高橋進 「政権が安定し、成長戦略を打ち出す。そうすると、企業が段々確信が強くなってくるので、やることをやっていけば、自然と良くなっていくと思う」

 島田敏男解説委員「甘利大臣、改めて短く一言。成長戦略の柱は何ですか」

 甘利明「えー、今までフロンティアでなかったところをフロンティアにしていく。それから、何度にもチャンスがある社会、格差は競争の結果としてあるとして、それを取り戻していけるチャンスをいくらでも作るということです」

 第1次安倍内閣でも安倍晋三が「再チャレンジ可能社会の実現」を提唱したが、実現させたのは格差拡大とその固定化社会、あるいは貧困の固定化社会でしかなかった。

 島田敏男解説委員「新たな機 会の提供ですね」

 甘利明「ハイ」(頷く)

 時間切れとなった。

 格差について、大沢真理教授が番組の冒頭近くで次のように発言している。

 中川緑アナ「消費税増税による個人の消費への影響はどういうふうに考えていますか」

 大沢真理教授 「最初に確認すべきことは家庭も個人も等し並みではない。ですから、家庭・個人一括りでは論じられないということだと思います。

 と申しますのは、日本既に経済格差が既に先進国の中でも最も大きいくらい広がった社会です。従って、これ消費増税というのは、よく言われますけども、低所得世帯にとって重い。で、それから子育てをしていれば、色々と消費を致しますので、重いと。

 典型的には女子世帯のような世帯を直撃すると思っています。こうした世帯を直撃するということは、今度は跳ね返ってきますね、消費に。

 ていうのは、低所得世帯の方が消費性向が高いですから、消費性向が高いところに消費をしにくくさせるという政策は果たして賢いのかどうか。そういうところに疑問を持っています。

 もう一つ付け加えるなら、前回の消費税率引き上げが起こった97年というのは過去20年間の中で平均賃金が最も高い位置でした。それと今日は全く違うということも踏まえたいと思います」――

 やはり社会制度運用の効率性、さらには予算配分と予算執行等の政府全体のムダのない組織運用の効率性という問題は残る。カネをかけただけ、その分効率的有効に国民利益に還元されない現実の継続である。

 有効に還元されない一つの姿が格差という現象でもあるはずだから、この上の国民に手厚く、下の国民に手薄な還元の抜本的是正を出発点としなければ、「先進国の中でも最も大きいくらい広がった」日本の格差は政府によって置き去りにされることになるであろうし、国民負担率はフィンランドと同程度でありながら、国から受けるサービスはフィンランド国民にはハンパではない状態で及ばないという状況も続くことになるはずだ。

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