4月18日、ロシア国防省が露極東やシベリア地域を管轄する露軍東部軍管区の再軍備計画の一環として、北方領土の択捉島と国後島に2016年末までに兵士用の居住施設などの軍施設を増設することを発表したするインタファクス通信の報道を4月18日付「MSN産経」記事が伝えている。
《ロシア国防軍、2016年まで択捉・国後に軍事施設増強》
択捉、国後両島に建設される軍施設に関しては150 以上にのぼり、その殆どが駐留兵の住居や社会福祉施設だということだが、軍施設の造設だけではなく、〈サハリンとクリール諸島(北方領土と千島列島)に駐留している軍部隊には今年も新型の戦闘機や対空ミサイルなどを配備、軍装備を増強する〉と伝えているという。
インタファクス通信の報道は4月18日、露軍東部軍管区令官のスロビキン陸軍大佐がサハリン州のユジノサハリンスクで発表したもので、大佐はさらにこの3年間で、サハリンとクリール諸島に戦車などを含む350の最新兵器を配備したことも明らかにしたという。
要するにロシアは択捉・国後島の軍備増強を着々と計っている。
軍備増強だけではない。周知のように2005年にロシア政府は「クリル諸島発展連邦特別プログラム」を採択、2006年には、「2007-2015年のクリル諸島の社会経済発展」計画を採択。インフラ整備やインフラ整備に基づいた経済発展を策している。
ロシアは軍備増強と島の経済発展を併行して進めている。
安倍晋三は昨2013年の1年間にプーチンと4度首脳会談を開き、信頼関係を深めていて、ファーストネームで呼び合う仲となっているそうだ。「シンゾー」、「ウラジミール」と。
そして今年2月にも安倍晋三は西欧諸国首脳がロシアの人権問題への抗議の意思表示として出席を見合わせる中、ソチ・オリンピック開会式に出席、プーチンと首脳会談を開いている。
顔を合わせた途端、「やあ、やあ、ウラジミール、久しぶり」とか言い、「やあ、やあ、シンゾー、元気かね」とでも言って、熱い握手を交わしたに違いない。
信頼関係を深めていく過程の2013年9月5日3回目のロシア・サンクトペテルブルク日ロ首脳会談で、繰返しこの言葉が取り上げられることになったのだから、多分、一大成果と言うことなのだろう、二人は北方領土返還問題に関しては「友好的で静かで落ち着いた雰囲気で話し合いを進展させる」ことを確認している。
経済発展による島の住民の生活向上はロシア政府の責任であって、当然のことだとしても、軍備増強は、それが日本に対してであろうと、アメリカに対してだろうと、北方領土の守りを固めることを意味する。
軍事的に守りを固めるとは誰に対しても手渡さないことを裏の意味としている。
プーチンは北方領土返還交渉を「友好的で静かで落ち着いた雰囲気で話し合いを進展させる」ことを約束しているが、北方四島に対するロシアの軍備増強は領土問題での「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」に適うロシアの動きと言えるのだろうか。
「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」をつくり出した中でテーブルに就いて和気藹々と領土返還問題を論じようとも、領土自体は誰にも手渡さない意志を隠した「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」であったなら、見せかけの雰囲気、あるいは駆引きのためのニセモノの雰囲気ということになる。
ロシアはロシア系住民を使ってウクライナのクリミア自治共和国をウクライナから分離、ロシアに併合させたが、ウクライナからの分離とロシアへの併合というプロセスではなく、旧ソビエト連邦構成国から分離したウクライナからクリミアを取り戻す、いわば分離を一部回復させるプロセスと解釈した場合、北方四島を手渡さないという軍事的意思表示の執着度がどの程度か、よりよく理解できるのではないだろうか。