安倍晋三が4月12日、新宿御苑で自身主催の「桜を見る会」を主催、各界招待の1万400人が集まったというから、頭数だけは盛大な様相を呈したのだろう。記事――《「給料のあがりし春は八重桜」桜を見る会で首相》(NHK NEWS WEB/2014年4月12日 12時13分)から見てみる。
遅咲きの八重桜が見頃を迎えていたというから、花自体は大層華やかだったに違いない。但し人間が大勢集まれば、イコール華やかだと言うことはできない。よく若い女性が着物姿で大勢集まると、決まって「華やか」という表現になるが、あくまでも着物の色とりどりが華やかであって、その気分に人間も染まるだろうが、人間自体が華やかであるわけではない。
人間自体が華やかなら、色とりどりの着物の力を借りなくても、華やかさを演出できるはずだ。単に華やかな気分を一時的に纏ったに過ぎない。
安倍晋三「去年の桜を見る会は、既に八重桜が散ったあとだったが、きょうは満開だ。段々、段々雰囲気がよくなってきたということだ」
では、一句詠みますとでもでも言ったのだろう。
安倍晋三「『給料のあがりし春は八重桜』
多くの経営者に今年4月から給料を上げて欲しいとお願いし、近年まれに見る賃上げになった。これをもっともっと全国津々浦々に広げていきたい」――
「近年まれに見る賃上げになった」と言っているが、確かに一部企業のベースアップを伴った賃上げは「近年まれに見る」現象と言うことができるが、金額そのものは「近年まれに見る」という表現がふさわしいかどうか意見が分かれるに違いない。
しかも現時点では全国的に広がっている状況ということではないのだから、「近年まれに見る」の表現は大仰に過ぎる。
私は文学的才能がないから、正しい意味の取り方かどうか分からないが、「給料のあがりし春は八重桜」の句の意味は、今年の春闘で賃上げが決まったことは咲き誇る八重桜のように目出度く、華やかな気分になれるということだと思う。
安倍晋三は「給料のあがりし春は八重桜」と一句詠んだあとに賃上げを「もっともっと全国津々浦々に広げていきたい」と言葉をつなげた。
だとすると、一句を大筒花火のように華々しく打ち上げたものの、句の気分に浸ることができるのはほんの一部の人間に限られるということになる。一部の人間に限られていながら、「給料のあがりし春は八重桜」と自慢気に詠むのは矛盾する。
合理的判断能力を欠いているからこそ読むことのできる安倍晋三の才能ということなのだろう。
記事が配信された昨日の夕方、録画しておいた4月11日放送のあさひテレビ 「世界の村で発見!こんなところに日本人」を見た。
何日前かの当ブログで、医療費の自己負担分や私的な健康保険の負担分等の私的負担を含めた国民負担率は消費税22%、食料品消費税17%のフィンランドと同程度でありながら、国のサービスは日本の方が遥かに劣るのは、日本の社会保障が政府によるカネ食い虫になっている、つまりムダが多いからではないかといったことを書いたが、上記録画を見た感想は、日本の国って何なのだろうという疑問であった。
番組は世界の村で生き、活躍する日本人をタレントや俳優が苦労しながら訪ねていく内容で、今回はイタリアは首都ローマから北東へ395kmの距離にあるヴェネト州(州都ヴェネツィア)のチーズ産地アジアゴに在住し、そこにある天文台に30歳代から勤めて、40歳でパドヴァ大学助教授に就任、現在も同天文台で星の研究をしている飯島孝さん家族を訪ねる旅となっていた。
飯島孝さん65歳。現在の給料が日本円換算で35万。一見少ないように思えたが、訪ねたタレントが日本人の夫人と買い物に行き、食料品が日本の約半分だと分かって、納得がいった。
テレビの解説も、アジアゴでは食料品の物価は日本の半額ほどだと言っていた。
イタリアは消費税率が20%。食料品が10%だという。食料品に限ると、日本の現在の8%と殆ど変わらない。食料品が約半分だとすると、その分可処分所得が増えて、35万円にプラスされることになる。
飯島孝さん宅は確か中学生の女の子と小学生の女の子、それに夫人の四人家族で、夫人が1か月の食料費は2~3万だと言っていた。日本の平均的な食糧費はいくらか、調べてみなければならない。
《家計調査報告(家計収支編)―平成25年(2013年)平均速報結果の概況》(総務省/2014年2月18日公表)
2013年世帯主の年齢階級別家計支出(二人以上の世帯)
平均世帯人員3.5人
消費支出 全体平均290454円
食糧費 平均68604円
消費支出全体に占める食糧費は約24%、4分の1に近い金額となる。イタリアのアジアゴでの家族4人世帯の1カ月の食糧費を3万としても、4万円近い可処分所得を得ていることになる。1カ月の給料35万円+4万円=39万円の給料という計算となる。
但しアジアゴがイタリアの平均を示しているとは限らない。特に物価が安い地方かもしれない。《家計消費の国際比較》(社会実情データ図録/2013年8月11・12日更新)から、日本とイタリアの生活経費の違いを見てみる。
2010年の「家計消費支出の国際比較」となっているが、ページそのものは「2013年8月11・12日更新」となっているから、この日以前の状況に応じているか、あるいは少なくとも大差ないとしているはずだ。
全体の家計消費支出額を100として、各支出項目のパーセントを出しているが、主なところだけを拾って見る
日本 イタリア
食料品 14.1% 14.4%
住居・光熱 24.9% 24.7%
保険・医療 4.6% 3.2%
教育 2.1% 1.0%
食料品に関してはイタリアの方が日本よりも支出額が0.3%程度多いが、ほぼ同程度で、日本よりも食料品が安いと計算した場合、その分贅沢していると見ることができる。
特に「保険・医療」と「教育」の項目でイタリアは日本よりも支出割合を少なく済ますことができている。
日本よりもイタリアの食料品が安いと計算する根拠はベネチアを旅行し、ローマにも立ち寄って、ローマでも買い物をした日本人のブログ記事――《『【イタリア】9・10日目 帰国の途へ&お土産大公開』 [ベネチア]のブログ・旅行記 by 花琳さん - フォートラベル》(旅行時期 2013/05/04 - 2013/05/05 (2013/05/18投稿))の記述が証明してくれる。
〈イタリアは食品関係の物価がとーっても安かったです。
食料品の買出しのためだけにまたイタリアに行きたい!〉――
《世界生計費指数ランキング 2009-2014》(2009-2014 Expatistan.com )を見ても、日本はイタリアよりも全体的に物価が高いことになる。
20位 東京 生計費指数205
42位 ローマ 生計費指数173
43位 ジェノバ 生計費指数173
49位 ミラノ 生計費指数170
生計費指数の数値が高い程、生活費が高いということになるから、イタリアが消費税率20%・食料品税率10%でありながら、その代表的な都市は生活費の点で東京をかなりの差で離していることになる。
特に食料品が安いことは高価な物を買う機会の少ない低所得層にとっては満開の「八重桜」に譬え得る華やかな福音となる。だが、その福音に日本国民は恵まれていない。
その上日本よりも「保険・医療費」と「教育費」の支出が少なく済む福音にイタリアは恵まれている。
一体どうなっているのかと首を傾げたくなる国家経営実施の政治家集団がひしめく日本という国って何なのだろうか。何を意味する国なのだろうか。
賃金が上がったからといって、「給料のあがりし春は八重桜」などと自慢気に一句詠んでいられる状況にあると思っているのだろうか。
ところが詠んだということは、やはり合理的な判断力の欠如が読ませた一句としか言い様がない。