日本が主権国家として真に自立するために →日米同盟破棄→専守防衛 →自衛隊憲法明記 →核不拡散条約締結条件北朝鮮核保有承認 →核政策を対話コントロール→防衛費削減 →教育費無償化財源 |
官房長官の菅義偉が10月6日(2017年)の閣議後記者会見で、〈2019年10月に予定する消費税率引き上げの判断に関して2012年12月に発足した第2次安倍内閣への政権交代前の経済状況なら延期するとの考えを示した。〉と2017年10月6日付「47NEWS」記事が伝えている。
具体的には有効求人倍率0.83や1ドル=75円に近い円高水準に戻った場合だそうだ。
菅義偉「そんな厳しい経済状況で引き上げたら、日本経済が底割れしてしまう」
その上で経済成長を軌道に乗せて増税できる環境を整備することに意欲を示したと解説している。
この意欲はアベノミクスに寄せている信頼に基づく。そして環境整備のプロセスが可能なら、有効求人倍率0.83、1ドル=75円の経済状況は中国の景気失速、あるいはアメリカの景気失速といった外的要因を受けての影響ということになる。
記事は、〈消費税増税の延期を巡っては、安倍首相が9月26日に「リーマン・ショック級の事態が起こらない限り、基本的に引き上げていく」と述べていた。〉と書いている。
安倍晋三のこの発言は希望の党の小池百合子が2019年10月の消費税8%から10%への増税凍結を打ち出したことを受けてのものである。
9月26日(2017年)夜のテレビ「東京」の番組に出演。
〈民放の番組で、再来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて、平成20年の世界的な金融危機、リーマンショックのような事態が起きないかぎり、実行する考えを示しました。〉と2017年9月27日付「NHK NEWS WEB」と伝えている。
安倍晋三「今年4月から6月までの四半期も、名目GDP(国内総生産)が3%成長した。消費も穏やかに回復している。現在の状況からすると、(消費税の)引き上げを行う経済状況を生み出すことができるのではないかと考えている。
当然、引き上げなければ、私たちが進めていく政策を実現する予算は確保できない。リーマンショック級の事態が起こらない限り、基本的には引き上げていきたい」(NHK NEWS WEB)
「リーマンショック級の事態」については自身が消費税増税の障害と決めていて前々から何度も口にしている。ところが、そのような事態が発生したわけでもないのに消費税増税を2度延期している。
10月4日(2017年)のブログにも書いたが、第二安部政権が発足後最初に迎えた国政選挙は2013年7月21日投開票の参議院議員選挙で自民・公明両党が全体で過半数を上回る135議席を占め、野党が過半数を占めていたねじれを解消することができたのは選挙前に「アベノミクスとは世界経済と日本経済のWin-Winです、経済成長と財政再建のWin-Winです」とか相務めていた宣伝が結果を出したわけではなく、勝因は政権発足から7カ月しか経過していないことから、前民主党政権に対する国民の失望の記憶が未だ生々しかったことと、2013年4月から実施の日銀の異次元の金融政策が円安・株高時代を演出してくれたことにある。
次の国政選挙は2014年12月14日投開票の衆議院議員総選挙だが、2014年11月8日に消費税2015年10月税率10%への引き上げを2017年4月に1年半の延期を表明。国民が暮らしを最大の利害としていることに大きく作用したはずだ。
この作用が最大の勝因となって、自民党は単独で絶対安定多数の266を超える291議席を獲得、公明党35議席と合わせて議席数の3分の2以上を維持する勝利を収めた。
第2次安部政権発足後の3度目の国政選挙が2016年7月10日投開票の第24回参議院議員選挙。半年前の2016年6月1日に通常国会の閉幕を受けて首相官邸で記者会見を開き、2017年4月1日に延期・予定されていた8%から10%への増税を「1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました」と言いながら、2019年10月1日に2年半も大幅に再延期している。
要するに「消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げる」とした「お約束」を守ることができなかった。
と言うことなら、菅義偉が言っている「増税できる環境整備」の「お約束」も当てにはならないことになる。実態として安倍晋三が有効求人倍率が全国全ての地域で1以上になった、雇用を200万人創出した、賃金が上がったと好調な経済指標のみを声高に言い立てたとしても、個人消費そのものが低迷状態を長々と引きずっている以上、消費税を増税したら、個人消費を完全に冷え込ませて、アベノミクスの失敗を誰の目にも明らかにすることになったはずだから、増税延期は正解だったことになる。
だが、延期表明は全て選挙前に行い、そのことが国民が暮らしを最大の利害としていることから増税延期によって生活に打撃を受ける懸念が遠のき、選挙に有利に働いて、安部政権はいずれの選挙も勝利を収めることになった。
いわば増税延期はアベノミクスの化けの皮が剥がれない用心と同時に国民が暮らしを最大の利害としていることによって選挙勝利に功を奏したのである。
但し後者の場合、結果的にそうなったのか、あるいは前者と同様に意図した利用だったのかが問題となるが、最初の消費税増税延期を受けた衆議院議員選挙の勝利については国民が暮らしを最大の利害としていることが結果を出したことは否定できない事実であって、そうである以上、消費税増税延期に味を占めたはずだ。
当然2度目の増税延期は選挙の勝利のための意図が多分に混じっていたことになって、その分、利用しようという思惑が優勢であったはずだ。
ところが今回は2019年10月1日に予定通りに増税する表明を行った。いわば増税宣言したとしても、裏返すと、延期表明しなくても、選挙は勝てるとの胸算用があったからだろう。
なかったなら、何だかんだと口実を設けて再々延期を表明したはずだ。アベノミクスを継続させて、その勝利を謳うためにも、あるいは何よりも首相在任期間を1日でも伸ばして歴史に記録を残すためにも選挙勝利は至上命題としていたはずだ。
安倍晋三は2017年5月27日に首相在任期間が第1次と第2次政権合計で1980日となって小泉純一郎と並び、現在それを追い抜いて佐藤栄作の2798日、吉田茂の2616日に次いで戦後単独3位となっている。
上位2者に並ぶことはないだろうが、可能な限り数字の上乗せをして、上位2者に近づきたいはずだ。
選挙は勝てるとの胸算用があったはずなのに、突如希望の党が躍り出て、与党1強・野党多弱の状況を覆して勢力拡大の勢いを見せ、その上消費税凍結を打ち出した。
安倍晋三としたら消費税増税延期を選挙の道具に利用して、この利用が選挙に有利に働いて勝利を獲得、味を占めたことが頭に学習したこととして残っていたはずだから、次の総選挙は勝てるとの胸算用があったにも関わらず、希望の党が消費税凍結を打ち出したことで学習したことが逆に希望の党側の選挙勝利の道具となって選挙に有利に働く懸念へと彩りを変えたとしても不思議ではない。
いわば安倍晋三が味を占めたことが今度は小池百合子が味を占めることにならないかという思いへの味を学習している人間だからこその変化である。
だが、9月25日に首相官邸で開いた記者会見で2019年10月1日に予定通りに増税すると宣言したばかりか、その使途変更まで具体的に数字を上げて説明してしまった。
全ての実現は選挙の勝利が前提となる。負けたなら、新たな連立相手が出てこない限り、発言したことが全て反故となるだけではなく、政権まで失うことになりかねない。当然、小池百合子の消費税増税凍結が安倍晋三の消費税延期と同様に選挙に有利に働く道具として利用されることがないよう、手を打たなければならない。
だが、一度増税を宣言した手前、舌の根が乾かないうちに増税を覆して延期に持ち込むことは言葉の信用という点だけではなく、首相の人間としての信用という点でも不可能なことである。
だが、選挙は10月10日公示・10月22日投開票と迫っている。そこで9月26日にテレビに出て、増税は「リーマンショック級の事態が起こらない限り」との文言で2019年10月は絶対的増税ではなく、経済情勢に対応させることになる相対的増税だからと増税条件に幅を持たせることで国民に安心感を与えて、警戒している小池百合子の消費税増税凍結の選挙有利を少しでも削ぐべく牽制したということなのだろう。
そして菅義偉が10月6日の閣議後記者会見で安倍晋三と同様に「政権交代前の経済状況なら」と条件付増税延期を口にして国民に安心感を与えると同時に小池百合子の増税凍結が選挙に有利に働かないように牽制した。
安倍晋三の発言にしても、菅義偉の発言にしても、所詮、消費税を選挙の道具として頭に置いていることからの発言であって、選挙での勝敗の見通しで増税か延期か、いずれかを決める基準となっている。
小池百合子の消費税凍結も選挙の都合で打ち出した政策でないとの保証はない。