安倍晋三の今回総選挙の狙い:森友・加計疑惑等で剥げ落ちた「国民の信任」を一旦リセットする必要があった

2017-10-25 10:22:28 | 政治

 2017年10月22日投開票総選挙の圧勝を受けて、安倍晋三が自民党総裁として翌10月23日自民党本部で記者会見を開いた。自民党サイトからs冒頭発言の全文を挙げてみる。

 記者との質疑が記載されていないのは一種の情報隠蔽に当たる。質疑の模様は「logumi」が載せている。
    
 文飾は当方。

 《第48回衆議院総選挙の結果をうけて 安倍総裁記者会見》(自民党/2017年10月23日)
    
冒頭発言

 まず冒頭、台風21号により被害を受けた皆様に、お見舞いを申し上げます。いまだ北上を続けており、政府としては、引き続き、災害応急対策に万全を期してまいります。
 我が党が政権を奪還してから5年が経ち、国民の皆様から大変厳しい視線が注がれる中、このたび、解散総選挙に臨みました。

 厳しい戦いとなることは、もとより覚悟の上でありましたが、困難な課題に挑戦するためには、国民の皆様からしっかりと信任を得なければならない。その決意のもとに、「自民党・公明党の連立与党で過半数」を目指し、全国各地で私たちの政策を訴えてまいりました。

 結果として、目標を大きく上回る、力強い御支持を、国民の皆様から頂くことができました。

 連立与党の議席は3分の2を超え、自民党単独でも、絶対安定多数を大きく上回り、今回、衆議院定数が10削減された中にあって、前回同様、280を超える議席を頂きました。

 「安定した政治基盤のもとで、これからも政治を前に進めよ!」と、国民の皆様から力強く背中を押して頂いたことに、本当に感謝申し上げます。

そして、悪天候のもと、足元の大変悪い中で、私たちを応援してくださり、投票所に足を運んでくださった皆様に、厚く御礼を申し上げます。

 5年前、3年前に続き、三度(みたび)、私たちは、国民の皆さんから政権を託して頂きました。

 総選挙において、我が党が、3回連続で、過半数の議席を頂いたのは、ほぼ半世紀ぶり。同じ総裁のもとで、3回続けて勝利を得たのは、立党以来60年余りの歴史の中で、初めてのことであります。

 であるからこそ、謙虚に、政策を進めていかなければならない。本当に身の引き締まる思いであります。私自身、その責任の重さを、深く噛みしめております。

 先ほど、公明党の山口代表と、連立合意に署名いたしました。

 今後とも、自民党と公明党の強固な連立の下で、安定した経済政策、外交・安全保障政策を進めていく。この選挙戦でお約束した政策を、一つひとつ実行し、結果を出してまいります。

 我が国の持続的な成長のカギは、少子高齢化への対応です。アベノミクス最大の挑戦であります。

 「生産性革命」によって、全国津々浦々に至るまで、賃上げの勢いを更に力強いものとすることで、デフレ脱却を目指す。

 そして、「人づくり革命」を進めていく。幼児教育の無償化を一気に進め、真に必要とする子どもたちには、高等教育を無償化していきます。

 消費税の使い道を見直し、子育て世代、子どもたちに大胆に投資することで、社会保障制度を、お年寄りも若者も安心できる「全世代型」の制度へと、大きく改革してまいります。

 少子高齢化が急速に進む今、私たちに立ち止まっている余裕などありません。年内に政策パッケージを策定し、可能なものから、速やかに実行に移してまいります。

 緊迫する北朝鮮情勢に対しても、国民の皆様から頂いた信任を背景に、力強い外交を展開します。

 来月5日に、トランプ大統領が来日します。本日もさっそく、お電話をいただきましたが、日本にお越しになった時には、北朝鮮情勢についても、たっぷりと時間をかけて協議を行い、緊密な連携を確認したいと思います。

 その後は、APEC、東アジアサミット。世界のリーダー達が集う、この場を利用して、ロシアのプーチン大統領や、中国の習近平国家主席とも、この問題について議論をしたいと考えています。

 毅然とした強い外交力によって、北朝鮮の核・ミサイルの問題、そして拉致問題を解決する。北朝鮮にその政策を変更させるため、国際社会との連帯を一層強めてまいります。

 そして、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく。その決意を新たにしております。

 少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢。まさに「国難」とも呼ぶべき事態に対し、総理大臣として、この国の舵取りを担う重責を、全うしてまいります。

 今回の選挙で国民の皆様から頂いた、力強いご支持を背に、私は、国民の皆様とともに、ぶれることなく、まっすぐに、政治を前に進め、しっかりと結果を出す覚悟であります。

 改めて、私たち自民党・公明党の連立与党に、3度目となる、安定した政治基盤を与えて下さった国民の皆様に感謝申し上げます。

 同時に、今後、国民の皆様から、私たちに対して、より一層厳しい眼差しが注がれる。そのことを、すべての与党議員が、強く意識しなければなりません。

 今まで以上に、謙虚な姿勢で、そして真摯な政権運営に、全力を尽くさなければならない。そう考えております。

 2009年、私たちは野党に転落しました。

 あの時は、本当に厳しい時代でありました。ここにいる同僚議員も含めて、あの時代を共にした、すべての自民党議員の胸に深く刻まれていると思います。

 私たちは、有権者の皆さんの声に耳を傾けるところから、スタートしました。「国民が何を望んでいるか」に真摯に向き合い、党内で大いに議論し、政策を磨き上げてきました。

 その政策を、ひたむきに、誠実に訴えることで、国民の皆様からお力を頂き、再び政権を取り戻すことができました。そして、その政策を、この5年間、ひたすらに実行することによって、一つひとつ結果を出してまいりました。

 我が国の未来を拓くことができるのは、人々の耳目をひくようなパフォーマンスではありません。耳触りがいいスローガンでもありません。政策です。政策の実行です。

 あの5年前の政権奪還の時の、初心を決して忘れることなく、自民党が一丸となって、そして、友党・公明党とスクラムを組んで、これからも、すべては国民の負託に応えるため、ひたすらに、政策の実行に邁進していく。その決意であります。

 私からは、以上です。

 お分かりのように「信任」という言葉は直接的には2回しか使っていないが、2回目の「信任」という言葉とその他の文飾を施した箇所は全て“信任を得た”という意味を持たせている。

 要するに「信任を得た」「信任を得た」と7回も繰返していることになる。

 このことは7回も繰返して「国民の信任」を得たことを宣言して、その「国民の信任」を以ってこれからの政治を推し進める力にしようとしていることを意味する。

 但し一度手に入れた安倍晋三に対する「国民の信任」が剥げ落ちることなく継続性を持ち得ていたなら、今回の選挙でも圧勝イコール絶大な「国民の信任」と当然視することができることになって、7回も繰返して「信任を得た」といった趣旨のことを発信しなくても済んだだろう。

 と言うことは、「信任を得た」と7回も発信せざるを得なかった裏を返すと、既に「国民の信任」が剥げ落ちた状況になっていて、その剥げ落ちた「国民の信任」を一旦リセットする必要があり、衆院解散・総選挙に打って出て、「国民の信任」を新装開店に持っていかざるを得なかったということであるはずだ。

 「国民の信任」が剥げ落ちることになった原因は殊更改めて断るまでもなく、森友学園安倍晋三忖度国有地超格安売却疑惑と加計獣医学部新設安倍政治関与疑惑であり、平均的な国民に景気回復の実感を与えることができていないアベノミクス経済政策に対する評価であるはずだ。

 森友・加計疑惑にしてもアベノミクス経済政策に対する不信感にしても選挙にマイナスの影響を与えるはずだが、選挙結果はマイナス影響を物ともせずに自民党単独で絶対安定多数の261議席を超える284議席獲得の圧勝であった。

 もしこれが額面通りの圧勝であったなら、「国民の信任」のリセットが大成功したことになって、下手に7回も「信任を得た」といった趣旨のことを発信する必要はなく、ただ単に「国民の信任」に有難うの一言を言って感謝すれば済むことだが、額面通りの圧勝でなかったから、「信任を得た」と7回も宣言し、自らも確認しなければならなかったはずだ。

 額面通りの圧勝でなかったことは、民進党分裂前は野党で統一候補を立てて巨大与党に対抗する選挙戦術を模索していたが、民進党が分裂、立憲民主党と希望の党と無所属に3勢力化し、この野党分裂と混乱が自民党に有利に働いた結果の自民党圧勝と多くのマスコミ、多くの識者が見ているばかりか、安倍内閣の中でも圧勝であるにも関わらず、野党の分散・混乱によって自然と自民党に目を向かせることになった相対的勝利であって、絶対的勝利ではないと見ている閣僚の存在が証明する。

 安倍自民党総選挙圧勝によって森友・加計疑惑、あるいはアベノミクスの機能不全で剥げ落ちた「国民の信任」を一応はリセットできた。リセットのエサが北朝鮮の脅威と少子高齢化の「国難」であったはずだ。

 しかし自民党の価値を相対的に高めることになった野党の分裂と混乱が圧勝を導き出す要因となった「国民の信任」が実態だから、選挙勝利翌日の自民党総裁としての記者会見で安倍晋三は7度も「信任を得た」「信任を得た」といった趣旨のことを繰返し発信せざるを得なかった。

 但し安倍晋三のことだから、野党の分裂と混乱で獲得できた総選挙圧勝であることなど頭の中からたちまち消去して、首相としての自身に対する国民の厚い信頼に基づいた総選挙圧勝であり、絶大な「国民の信任」だとすり替えて、今まで通りに強引な国家運営に乗り出すに違いない。

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