2017年10月22日投開票の政権選択総選挙は安倍自民党の大勝で終わった。公明党と合わせて憲法改正の国会発議に必要な3分の2の310議席を上回ったという。
残り4議席の時点で自民党だけで過半数233議席を50議席上回る283議席を獲得している。この自民党だけで現時点の283議席は2017年10月10日選挙公示前、9月末から10月初めにかけのて各マスコミの世論調査での安倍晋三に対する内閣支持率では不支持が支持を上回る逆転現象が起きていることからすると、奇妙な結果に見える。
NHKの10月7日~9日の世論調査
「安倍内閣を支持する」37%
「安倍内閣を指示しない」43%
毎日新聞の9月26、27日世論調査
「安倍内閣を支持する」36%
「安倍内閣を指示しない」42%
時事通信の2017年10月6~9日世論調査
「安倍内閣支持率」37.1%
「安倍内閣不支持率」41.8%
朝日新聞の10月3、4日の世論調査だけが僅かに支持が上回っている。
「安倍内閣を支持する」40%
「安倍内閣を支持しない」38%
アベノミクスへの期待度の世論調査を見てみる。
東京新聞加盟の日本世論調査会9月23、24日実施の全国面接世論調査
「アベノミクスに期待する」41%
「アベノミクスに期待しない」56%
共同通信が9月25日~10月4日に全国の有権者100人に実施したアンケート
「アベノミクスで暮らしはどう変化したか」
「変わらない」+「苦しいまま」91人
上出と同じNHK世論調査
「投票で最も重視する6つの政策」
「経済政策」18%
「財政再建」11%
「社会保障」29%
「外交・安全保障」15%
「憲法改正」11%
「原子力政策」7%
生活が豊かであればある程、社会保障は自身の資金に頼ることになって、国の社会保障政策に左程関心は持たなくなる。毎年何千万と稼ぐカネ持ちは国からの社会保障に関わる給付は余禄程度にしか見ないだろう。投票で最も重視する政策で「社会保障」が29%占め、「経済政策」18%、合計47%と半数近いということは生活が豊かになることへの願望を半数近い国民が示していて、裏を返すと、半数近い国民が現在の生活に満足できていない――アベノミクス経済政策から安倍晋三が言う程の恩恵は受けていないと言うことの証左でしかないと言うことであろう。
今年初めであるが、2017年1月21、22両日の毎日新聞の全国世論調査
「アベノミクス評価する」43%
「アベノミクス評価しない」46%
世論調査ではないが、多くのマスコミが「実感なき景気回復」、「実感乏しいアベノミクス」といった言葉を踊らせている。アベノミクスを歓迎しているのは円安・株高で大儲けしている高額所得者と大企業ぐらいで、このことは周知の事実となっている。
安倍内閣支持率の低迷、そして安倍晋三の経済政策に対する低い評価、多くの国民が生活の豊かさを実感できないでいる現状。このような安倍不人気は10月13~15日の毎日新聞世論調査にも現れている。
「首相を続けたほうがよいか」
「よいと思う」37%
「よいと思わない」47%
10月17、18日朝日新聞世論調査
「今後も首相を続けてほしいか」
「続けてほしい」34%
「そうは思わない」51%
退陣を望む国民が半数近く、あるいは半数を超えて存在する安倍不人気の一方で政党支持率では自民党が常に野党を遥かに抜いて、常にトップを維持している。
10月17、18両日の朝日新聞世論調査
自民党32
希望の党6%
公明党4%
共産党3%
立憲民主党7%
他は見る影もない。
2017年10月13日~15日NHK世論調査政党支持率
自民党32.8%
希望の党5.4%
公明党4.3%
共産党3.4%
立憲民主党6.6%
日本維新の会1.7%
社民党0.6%
日本のこころ0.1%
「特に支持している政党はない」34%
支持政党なしを除いて自民党以外の野党は惨憺たる有様である。
安倍不人気と不人気に連動することはない自民党1強、自民党1強に対する野党の安倍不人気を遥かに超えるお粗末な不人気。この不人気は国民の野党に対する不信感に宿す。
このような状況下での2017年10月22日投開票衆議院議員選挙での自民党の圧勝。その実態は決して安倍晋三に対する強い信任からの勝利ではなく、国民の野党への不信感が相対的に高めることになった自民党への信頼感が貢献した勝利であって、安倍晋三は単に自民党の総裁、与党の首相という地位にいることから、この勝利に乗っただけで、安倍晋三自身は決して認めようとはしないだろうが、見せ掛けの信任に過ぎないということであろう。
日本人はその行動様式としている権威主義から、変化を嫌い、現状維持を好むと言われている。変化を求めた政権交代に一度懲りて、自民党政治を政治支配の一つの権威に祭り上げてしまったらしく、新たな政権交代に用心深くなり、現状維持志向の殻に安住するようになったようだ。
その現状維持を破るためには安倍内閣の驕りからの自滅、あるいは自民党の驕りからの自滅を待って、国民の野党に対する不信感を払拭する以外に方法はないのだろうか。
民主党への政権交代も多分に自民党の自滅が助けた政変劇であった。だが、自滅型の政権交代は競争原理型の政権交代とは異なって、政策の向上や前進、進歩への動機づけとして十分に働くとは言えない。あるいは自らの行動を律する確固たる戒めへの動機づけとはならない。
だから、政権復帰後の自民党に緩みが出て、国民を小馬鹿にした驕った発言が閣僚や自民党議員の中から次々と出てくる。
森友・加計安倍晋三政治関与疑惑も緩みから出ているはずだ。